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第1話 「出発」

「求めなさい。そうすれば、与えられる。


探しなさい。そうすれば、見つかる。


門を叩きなさい。そうすれば、開かれる。



だれでも求める者は受け、


探す者は見つけ、門を叩く者には開かれる。」



マタイによる福音書 第7章 第7節

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2014年5月のある休日、僕は妻と猛烈な喧嘩をした。



きっかけは洗濯後の洗濯カゴをどこに置いたかというような激しく詰まらない事であったが、その前日からふたりとも機嫌が悪く、些細なきっかけが拗れに拗れてのっぴきならぬ事態となった。



僕の妻は曲がった事が許せない完璧主義タイプの専業主婦で僕のちょっとした怠惰や不注意を見過ごせない。


一方僕は基本的に「暮らし」に興味がないので、万事ずぼらだ。



そんなふたりが結婚すれば、喧嘩が重なるのも無理からぬ事だと、他人事のように思ったりする。



で、僕は喧嘩の結果、家出した。


中学生のように。


自転車で。


1円も持たず。




喧嘩の間、僕の財布とパスモは妻の向こう側にあり、僕は玄関を背にしていた。


僕は車を持っていないので玄関の鍵入れの自転車の鍵を取り、財布を諦め、つっかけを突っ掛けて家を飛び出た。



僕の住むマンションは新青梅街道沿いにあり、平行する青梅街道を行けば新宿までいつかは辿り着ける。


新宿まで出られれば僕の実家まで自転車で30分で行けるので、実家に置いてあるクラシックギターを背負って流しとして全国を自転車で行脚してやる、もう家には帰るものか、職場の皆には申し訳ないけれど住む場所が無いならば仕事も辞めるしかあるまい。


そんなつもりで家を出た。



自転車に跨がり、ズボンのポケットに入っていた携帯電話を取り出して妻の番号を着信拒否にした。


それくらい僕は怒っていた。

もう大激怒である。



僕はその日と翌日で連休だったので仕事に関してはその2日間に考える事にした。



文字に起こすと酔っ払いの行動のようだが全く素面であった。

その瞬間は完全に本気だったのだ。




とにもかくにも、僕はそのようにして無一文1泊2日の家出の旅に漕ぎ出したのであった。



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