~過去 雪野編1~ 選択肢2ver
※この物語は前作「~過去 雪野編1~ (分岐前)」で選択肢2の「男子生徒くんの名前を聞く」を選んだ場合の続きとなっております!
とにかくこの変な男子生徒くんの名前を聞かないと。
今からどうするかも気になるところだったが、先にそちらを優先して聞いておくことにした。
「男子生徒くんの名前、まだ聞いてなかったですよね」
「男子生徒くん...?まさか俺のこと...?」
「いやああああごめんなさいなんでもないですうぅぅ」
今日は最悪の日になる。
私はそう確信しながら、さっきの自分の失言に後悔しつつ、彼から逃げるように一目散に走り出した。
「...」
「...」
あの後、私たちは商店街を二人で歩いていた。
この男子生徒くんは走り出した私を追いかけてきて、私の隣で黙ってついてきていた。
「どこか行きたい場所とかある?」
会話がない私に対し、男子生徒くんが先に会話をふってきた。
「別にどこでも...」
「...そう」
そこで会話が途切れてしまった。
再び、二人の中で重苦しい空気が漂う。
私は、この空気が嫌いである。こうなるからあまり人と関わりたくないのである。
いやまぁ、もちろんそれだけが原因という訳ではないが。
「...」
「...」
私は今、異性と隣同士で商店街を歩いている。
会話がないとはいえ、今のこの状況は、自分にとっては考えられないことだった。
(これ、周りから見たら...恋人どうしに見えたりするのかな...)
(って、私は何を考えているんだ...)
黙っていたら変なことを考えてしまう。
この迷惑な男子生徒くんも何も喋ってくれそうにないので、いちかばちか私から話しかけてみることにした。
「あ...あのぉ」
「え、あ、何?」
「あ、えっと...」
しまった。
そういえば話す内容考えてないじゃないか。
人と会話する時はしっかり考えてから、さしあたりのない言葉を頭の中で見つけ出してから口を開けるのは基本中の基本なのに。
私としたことが、ましてや昨日あったばかりの異性の人に対して何も考えずに話しかけてしまったではないか。
これは大変だ。一大事だ。
どうしよう。
どうしよう。
どうしよう。
「いやなんでもない!アハハハ...」
「あぁ...そうか...」
結局何も喋ることができず、そのまま会話は終了してしまった。
あの後、結局どこに寄ることもなく。
商店街を出て、道路に出て。
このまま真っ直ぐ行くと、私や彼が通う学校があるのだが、このまま行くとたどり着いてしまいそうだ。
そして、そこまでの会話は...微妙。
彼の方から話しかけてくることがあるが、私がその会話から上手く話を広げることができる訳もなく。
せっかく誘ってきた彼に、どこか申し訳ない気持ちになってしまう。
訂正。「せっかく誘ってきた」じゃなくて「無理やり誘われた」だ...何を言ってるんだ、私は。
あれ?私からオーケーって言ったんだそういえば...
「悪い...ちょっとトイレ行ってくるから」
「あ...うん」
学校手前の道路の途中で、彼は目の前のコンビニへ入っていく。
「はああぁ...」
彼がコンビニへ入っていくのを見ると、瞬間、私は大きな溜め息をついた。
極度の緊張で強ばっていた体が、少し和らいでいく感じがした。
さて。
今の内に状況整理だ。
この男子生徒くん...ではなく、彼の名前は「木村 直」という名前らしい。
先程の件の後、わざわざ向こうから教えてくれたのだ。
まぁ流れで私の名前も教えてしまった訳だが...
まぁそれはいいとして、肝心なのはなぜ彼は私をこのデートのような何かに誘ったのか、だ。
分かりやすく選択肢にしてみよう。
①私をからかうため・②彼の暇つぶし・③彼もぼっちだから
④私のことが・・・
「おまたせ」
「まさか...私のことが好きだから?!」
振り向くと、用を足し終えた男子生徒くんがそこには立っていた。
「...誰が?」
「...」
「...誰が?」
「...」
「...なんの話?」
「...知らない」
「学校まで来ちゃったな」
「...そうだね」
結局、私たちは二人で学校までたどり着いてしまった。
「寄っていくか?」
「え?」
「別に休日だろうと学校は開いてるだろう」
「行く必要は...」
「行くあて、ないんでしょ?」
「ですけど...」
「じゃあ行こう?」
「あ、あの...」
「うん?」
(なんで私を誘ったんですか?)
私は、その一言が言えなかった。
言おうとすると、何故か途端に顔が熱くなっておかしくなりそう。
やはり、普段から人とのコミュニケーション取ってないと、いざその時になると体もおかしくなってしまうのかな。
うん、そう。きっとそう。
だから関わりたくないんだって。
特に異性となんかありえない。
そうだよ。今日が終わったら、また私はいつもの一人きり生活に戻れるんだよ。
それまでの辛抱。今日だけは、頑張って乗り越えなくちゃ。
「木村...さん」
「...え?」
「あなたが...好きです...」
「雪野...さん?」
言いたかった本当のことを、私は彼に伝えた。
「...は?」
「え?」
「いやいや急に告白とかマジ勘弁」
「勘弁って...」
私は彼が何を言ってるのかが分からなかった。
「何急に顔赤らめて「好きです...」とか言い出してんだよほんと面白いな」
「は...?」
私は彼が何を言ってるのかが分からなかった。
「ていうか俺彼女いるし...お前みたいないつも一人のキモい女なんかと付き合うわけないだろうが」
「彼女いる...?」
私は彼が何を言ってるのかが分からなかった。
「これは面白いネタになるわ~ちょっと異性に話しかけられたからって勘違いとか」
「...」
私は彼が何を言ってるのかが分からなかった。
私は彼が何を言ってるのかが分からなかった。
私は彼が何を言ってるのかが分からなかった。
「じゃあ俺、もう満足したから帰るわ、じゃあね」
「...」
私は彼が何を言ってるのかが分からなかった。
...いや。
答えは、①番の、「私をからかうため」だった。
ただ、それだけの話。
(私も...帰ろ...)
やっと念願のぼっち生活に戻れる。
もっと長くなると思ったが、結構早めに終わって良かったな。
ハハハ...
「...」
私は、その場で座り込むと、約10分程たった一人で、涙を流していた。
翌日。
例の男子生徒くんは、私が彼に告白したことを他の生徒たちにばらした。
私はからかわれ、イジメられた。
そのイジメはとどまる事を知らず、どんどんヒートアップしていった。
私は辛かった。
早く一人になりたかった。
早く私を一人にして。
もう私に居場所なんてない。
こんなところに私がいる意味なんてない。
どこか違うところにいきたい。
前の一人だったあの頃にもどして。
もどして。
もどして。
もどして...
私は、転校を決意した。
親に頼みこんで、なんとかもう一つの近いところにある中学校への転校が認められた。
とりあえず、一安心。
これでもう一回リスタートが出来るんだ。
あの、忘れもしない私の初めての恋。
もうあんな悲劇は起こさない。
私は変わらなければならない。
私は結局、恋することを諦めきれなかったのだ。
「えーと...今日はウチのクラスに転校生が来ている」
これから私が通うことになるであろうクラスの担任の声が、教室の方から聞こえてくる。
私は今から、この担任の合図とともにこのクラスに顔を見せることになる。
ここが大事。最初が肝心。ミスは許されない。
前みたいに嫌われてはいけない。あの頃と同じ過ちを繰り返す訳にはいかない。
噛んだりするのはもっての他だ。変な印象がついてしまうに違いない。
「雪野!入ってきていいぞ!」
(普通に、違和感なく自己紹介...噛まないように...噛まないように...)
私はそうお祈りしながら、担任の先生の声に導かれつつ教室に入っていった。