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「明日フランクの・・バースデーパーティがあるんだ」達也の背や肩についばむようなキスを繰り返しながら航平が言う。「・・青山の・・カフェバーで」
翌日の土曜日、いつものように航平のマンションを訪れていた。ふたりはたった今激しく愛し合ったばかりだ。
「・・そうか」
達也はうつ伏せになって枕の上で組んだ腕に頬を置き、目を閉じている。航平の唇が首筋に移り、舌でそっと愛撫してくる。身震いしながら首をすくめると、航平は軽く笑った。それから達也の耳へと舌を這わしながら囁く。
「一緒に行かないか?」
「俺はいいよ」目を閉じたまま言った。「みんな英語だろ? おまえ、楽しんで来いよ」
「俺がジュリアとふたりきりになってもいいのか?」
耳元でからかうように言ってから航平は耳たぶを軽く噛んできた。達也は思わずふっと笑い声を漏らす。肩を掴んで仰向けにさせ、そして達也の手に指を絡めながら航平はそっと唇を重ねてきた。
翌日の日曜日、自分の部屋の片付けと一週間分の洗濯をした。二時くらいになってコンビニに行き、弁当を買ってきて食べた。そのあとやることがなくなった。そういえばここに越して以来、ひとりで過ごす日曜日は初めてだった。テレビをつけてみたがくだらない番組ばかりですぐに消した。
何となく手持ち無沙汰になった達也は座椅子から立ち上がり、キッチンに行って冷蔵庫から缶ビールを取りだした。プルタブを開けながら洋間に戻り、ビールを口に運びかけたときふとクロゼットに目が行った。その中には去年の誕生日に航平がくれた油絵の用具一式がそのままになっている。航平はそのことに関して何も問わない。達也が描きたくなったら描けばいいと考えているようだ。
缶ビールをキッチンカウンターの上に置き、そして達也は大きく深呼吸をしてからクロゼットのドアを開けた。




