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非労働系魔法少女ニト 一羽

話じゃなくて羽になってるのは別に誤植じゃなくて仕様です。仕様です。

 魔法少女系ニート、不動仁兎の朝は早い……まだ日も出ている4時に起床し

「ねえニト……起きるのが遅すぎるんじゃないかな? 今何時か分かる?」

 起きたら布団の上に飼い猫が乗っかっていた。これだけなら猫好きにとって微笑ましいワンシーンであるが、一々小うるさいので、いくら猫好きのわたしでも少し鬱陶しく感じる。まあ、無視するわけにはいかないし適当にあしらうか……

「……午後の……5時くらい?」

 眠気と戦いつつ、カーテンの隙間から漏れ出している光から判断するに、だいたいそんな時間だと思う。

「4時だよ」

「ん……寝る」

「何で二度寝するの!? こんな夜型の生活してたら、究極不労働生命体になっちゃうよ!」

 ネコのヤヌスにさえも心配されてしまった……感動的だね、でもこの生活は続けるけどね

「大丈夫だって……このアパートは基本『そっち系』の奴しか住んでないし」

「……もういいや、ボクが助言しても無駄みたいだね……」

 どうやら諦めてもらえたようだ。

 これで安心して惰眠を……もとい、休息をとれ

『フェーッフェフェフェ!』

 ベッドの下の方から……都市伝説の殺人鬼のようにベッドの下にいないとするなら下の階の方から、鳥のような『何か』の鳴き声が聞こえてきた。

 一応このアパートは『建前としては』ペット禁止なので、建前上は鳥というかペット全般はいないはずなのだが、ヤヌスなどの比較的静かなペットは黙認されていたりする。

 まあ、あんな近所迷惑になるような鳥をベッド……管理人さんが黙認するはずもない。つまり犯人はこの(アパート)の中にいる!

 ……寝起きのテンションでとんでもない事を考えていたのだが、よくよくかんがえると犯人は1人しかありえないので、ちょっと止めてくるために出かける準備をする。

 準備といっても、ほとんど何もせずに寝間着のジャージのままで出かけ……ようとしたのだが、ヤヌスがわたしの普段着を器用に運んで、「ここでここで装備していくかい?」と言わんばかりの視線を向けていたので、普段着のジャージに着替える。

 着替えが終わると、恥ずかしそうにこちらから視線を逸らしていたヤヌスがいたので、少しいじらざるをえない状態だったので、欲望に忠実にいじらせてもらう。

「ヤヌスってさ……オスだったよね?」

「えっ……うんそうだよ! ボクはオスだよ!」

 よし、普通の人とほぼ同じ考え方のこいつならやれる……!

「……ヤヌスってさ、どっちの方が好き? 大きいのと小さいの」

「えっ!?……何が?」

「フフ……巨乳と貧乳どっちが好きかって事だよ!」

「ふぁっ! そ……それは……その……」

「普通の男なら、大きい方がいいらしいんだけどさ……ヤヌスはどっち派?」

「あぅ……ボクは……その……」

 ヤヌスに対する仕返し大成功! ……セクハラ? ……こっちからはノーカンだから

「ボクは、仁兎みたいな大きくもなく小さくもないような大きさが好き……かな……?」

 む……なかなかお世辞がうまいな……まあ、お世辞に免じてこの辺で許してやるか

「さてヤヌス、とりあえず太陽神だか太陽王だかを召喚したアイツに説教かましてこよう?」

「ボクが連れ去られちゃうからヤダよ!」

 そういえばそうだった。

 犯人(仮にAとする)はヤヌスと一方的に仲が良いのである。ついつい連れて行ってしまう、とは本人の弁だが、明らかに故意的なものを感じる……流石に1人で行くしかないのかな?


 アパート『アルカディアス』の1階、わたしの部屋の真下……廊下からは部屋番号があり得ない数値になっていることを除けば見た目は特に特筆すべき点はない部屋……まあ、中身は特筆すべき点だらけな上に、部屋の主が見た目も中身も正体もおかしいのだが。

 いつまでも立ったままというわけにはいかないので、ドアの横のチャイムを鳴らす

「ん……だぁれ?」

 チャイムをならすと、部屋の主の声、無邪気そうな幼女の声が聞こえてくる。

「わたしだよ、仁兎だよ」

 扉が開き、長い黒髪の少女……というか、幼女が飛び出してくる。

 神々しいまでの可愛さだね、感動的だな、だが同族ニートだ。

「仁兎!? ヤヌスは! ヤヌスは来てるの!」

「いや……ヤヌスなら部屋にいるけど……」

「…………そうなの……」

 幼女……いや、アマテラスはヤヌスがいないと聞くや否や、テンションが急降下……もはや墜落の領域なくらいに下がった。

 このままではらちがあかないので、ちょっとヤヌスには犠牲になってもらおうか。

「今度はヤヌスと一緒に来るから」

「ホントに! ホントにヤヌスを連れてくるの?」

「うん、引っ張ってでも連れてくるよ」

「やったぁ!」

 こうしてるとごく普通の幼女のように感じるけど、実際の所は神様である。しかも、かなりの有名どころらしい。まあ、わたしでも名前を聞いたことがある程度だから、知名度はそれなりにあるはずだ。

 この幼女、アマテラスは日本の八百万の神の頂点、天照大神らしい。

 ちなみに、暇だった時に天照大神について詳しく調べてみたところ、天照大神はちゃんと女神だった。最近の風潮である男の神の行動に萌えを見いだし、女として擬人化するという文化に関係なく、普通に女性の神様だった。

「そういえば、今日は何を召喚」

「『らー』だよ!」

 ラー……エジプトの太陽神を召喚しようとしていたらしい。ちなみに、似たような名前をもつヲーという不死鳥がいるのだが、ラーとの関連性は不明である。一説では究極神コンマインの怒りに触れ、力を奪われたラーの成れの果てがヲーだトカなんトカ

 にしても、なんで太陽神を召喚しようとしたのだろうか……? まあ、ひとつ心当たりがあるけど

「アマテラスちゃん、ひょっとして……エジプトの太陽神ラーに自分の太陽神としての天照大神の仕事を任せるつもりだったの?」

「ぎくっ……に、仁兎お姉ちゃんがなにを言ってるのか分からないよ……アハハ」

「ねえアマテラスちゃん……少し……頭冷やそうか」


 ふぅ……アルカディアスニーツ(聖域の不労働者達)の協定を忘れるとは……天ちゃん、本当のニートじゃないね。

 本当のニートっていうのはね、こう……他人に迷惑をかけずに一人でひっそりと……

 それ以上はいけない。心の中に住んでいるもう一匹のヤヌスにストップをかけられてしまった。いいところだったのに……

「アマテラスちゃん、ちゃんと反省した?」

「うん……もうまちがったのを召喚したりしないよ」

 そっちじゃない……そっちじゃないんだ……

「さて、アルカディアスニーツ(聖域の不労働者達)協定を1から全部覚えなおす必要があるかな?」

「ごめんなさいぃ……もう自分の為にラーを召喚したりしないから……」

「よし気に入った、ウチに来てヤヌスをファ……ヤヌスに色々してもいいよ」

「わぁい! 仁兎お姉ちゃん大好き!」

 そういうと、わたしの部屋に向かって……多分だけど、走り去っていった。

 ヤヌス、わたしが部屋に戻るまで待ってろよ……すぐに間違って召喚された太陽王(仮)を倒して戻るからな……


 結論から言うと、太陽王はいなかった。平均的な幼女の部屋と平均的なニートの部屋で合体事故を起こしたような状態のアマテラスの部屋探してみたものの、生き物の一匹すら見あたらなかった。

 TUEEEなローチすらいなかった……なんかイラッとするな、こっちはまれに、よく見かけるのに……

 おそらく、アマテラスちゃんが召喚した直後に奴は開いていた窓から逃げ出したのだろう。……面倒なので、探索はここで打ちきりにさせてもらう。そもそも、生態系を崩さないから急ぐようなこともなさそうだし。

 と、太陽王の行方を推理していたところで重大なことに気付く。


 わたし、通報されたら一発でアウト……


 いやいやいや! ちゃんとヤヌス……じゃない、家主の許可は(視線で)ちゃんととってあるし! ちゃんと変わりにヤヌスを差し出したし!

「アッーーーーーー!」

 この声は……ヤヌス? なんだヤヌスか……

「ファッ!?」

 なんだですませた奴は誰だ! わたしだね。急げばまだ……間に合わないね! 手遅れだねうん…………でも、相棒のピンチにかけつける時は遅くてもいいじゃないか……


 やっぱり、ヤヌスは天ちゃんには勝てなかったよ

「にゃー!にゃーにゃーにゃ?」

 わたしの部屋に戻ると、ヤヌスは完全に野生の猫と化していた。

 それはもう完璧に……拾ってくださいってダンボールに書いて入れとけば十中八九拾われるくらいの猫具合だった。

 まあ、恐怖で野生化しているからといってさり気なく抱き付いてきたのは後々脅迫の種にでもするとして、問題は……

「あーん、ヤヌスが行っちゃったよぉ!」

 アマテラスちゃんの事である。

 ヤヌスに逃げられて涙目になるあたり、無駄に子供っぽい。まあ、こうなった幼女を放っておけるほどわたしは非道ではない。

 ……それに、以前ゲームで涙目になってるアマテラスちゃんを無視して容赦なくそのまま続行したところ、原因不明の日食が起こって世界中がパニックになったことがあるので、あの時の二の舞になるのはさけたい。

 確かあの時はニート仲間のジェニーと管理人さんとで協力しながらアマテラスちゃんを勝たせてあげて機嫌をよくしてあげたら日食が収まったので、いざとなれば機嫌を直してあげればいいのである。

 今回はあの時の二の舞にならないように、今の内に(ヤヌスを生贄にして)機嫌をなおしておきたい……のは山々だが、肝心のヤヌスが『無茶しやがって』状態で流石にこのヤヌスをオーバーキルするほどわたしは鬼じゃない。

 じゃあどうすればいいのやら……

 悩んでいると、救いの手は思わぬ所から差し出された。

「憎き太陽の匂いがプンプンしますの……ワタクシにとって迷惑なので、天照大神なら大人しく岩戸隠れをしていればいいんですの」

 わたしにとっての救いの手は、隣人によるノック無しの侵入によってさしのべられた。

 若干色が薄い金髪に黒白のゴスロリの少女……ジェニーが現れた。

 ジェニーという呼び名は本名ではないのだが、管理人さんがこの子をとあるカードゲームのジェニーに似ているからという理由でジェニーと呼び出して、それが定着してしまったのだ。

 まあ、長々と説明したところで、ニートの一言で西洋人形のような美貌やら何やらが色々と台無しなのだが。

「太陽は全てを照らし出すから、太陽に照らされてこれば真っ当なニートになれるよ? だから全身で日光を浴びればいいんじゃないかなぁ?」

「吸血鬼に対して全身で日光浴をしろとは流石は太陽の神様、お国柄が知れますの」

 そういえば説明していなかったのだが、ジェニーも案の定ただのニートではなく、吸血鬼のニートである。

 しかも、本人曰わく伝説の吸血鬼の末裔らしいのだが、如何せん日本人にとって吸血鬼はメジャーでも吸血鬼の個体の伝説はドマイナーなので、ジェニーが誰の末裔だったかはうろ覚えどころか全く覚えていない。

 あと、アマテラスちゃんとジェニーのやりとりであるが、アマテラスちゃんに悪気はなく、多分本人としては『いつまでも良いシャイニートでいてくださいね』と言いたいのだが、ジェニーにとって全身で日光浴しろというのはつまり死ねと言っているようなものなのでこうなっている。

 ジェニーとアマテラスちゃんの喧嘩(というか一方的ないちゃもん)をどうやって止めようかと考えていると、やっとヤヌスが目覚めた。

「ニャ~……ん? アマテラス様と究極不労働生命体? ……ねえニト、何があったのか説明してくれるかな?」

「いつも通りにアマテラスちゃんの言葉の意図を曲解したジェニーがキレただけだよ」

「誰が究極不労働生命体ですの! せめて非労働にしなさいですの!」

 ジェニーもとい、究極不労働生命体がヤヌス相手に大人気ないくらいにキレた。

 究極(不労働)生命体って字面はかなり地味だけど実際凄そうに聞こえるのに、何が気に入らないのやら……やっぱり『不労働』の辺りだよね?

 会社が潰れた直後はともかく、今のわたしはニートと呼ばれることを嫌悪するようなことはそんなにないのだが、流石に究極不労働生命体と呼ばれるのは嫌悪感がある。

「そもそも究極の吸血鬼の末裔、クイーン・ヴァンパイアたるこのワタクシに働けという方が間違いですの!」

「本当は『究極不労働生命体』にあった仕事が無いんじゃないのかな? 夜しか働けないし、そもそも夜のお仕事は……」

「ヤヌス、その先はアマテラスちゃんが部屋に帰ってから話してね。どうしても話したいなら壁に向かって話しかけれていれば?」

「夜の……お仕事?」

「アマテラスちゃんは知らなくてもいい職種だよ」

「ふ~ん……」

 一応この場はごまかせた……後々アマテラスちゃんに夜のお仕事についてツッコまれた時に備えて健全な仕事の答えを考えておくべきかな?

「ぺったんこでロリロリしい見た目ならいくらでも働く場所は見つかるんじゃないの? それなのに働こうとしないなんてただのニートじゃないかな?」

「朝日を浴びることになるからお断りですのよ!」

 途中でアマテラスちゃんの耳を手で塞いだからいいものの、わたしがやらなかったらどうするつもりだったのかな、ヤヌスは……

 あとでクールスピードワゴン便でアマテラスちゃんの部屋に送るか

「ヤヌス、一応教育上良くなさそうな会話が続きそうだからアマテラスちゃんを部屋に」

「そんなに我が儘だから、ニトよりもちっぱいなんだよ!」

「何を言いますのこの駄猫は! ワタクシはニトさんよりも大きいですの! ニトさんより大きいですの! 大事なことだから2回言いましたの!」

 ……なんだぁ、2人とも死にたいみたいだねぇ……じゃあわたしが楽にしてあげるよぉ……フフフ

「仁兎お姉ちゃん……怖いよぉ……」

 さぁヤヌス、ジェニー……罪の数を数えようかぁ……

「らてず、らゆじば、どーゆりれぷ」

 本来ならアルティメットとかシャイニングとかそういう感じのバージョンに更に変身するための呪文を、変身前から直接アクセスするために唱えた。

 2人にはトラウマのひとつやふたつは覚悟してもらおうかな。

「ニト! こんな狭いところでそんな大技使っちゃったら大変なことに……」

「そうですの! いくらワタクシがキングオブヴァンパイアの力を使ってもとめきれるかどうか……」

「ヤヌス、ジェニー……君達の運命は……君達自身が決めたんだよ」

 その瞬間、わたしは修羅になっていたのかもしれない。青色の炎を秘めた修羅に……まあ、「若干やりすぎたかな」と反省はしているけど……でもわたしは謝らない。

「ふぅ……反省した?」

「……反省しました、修羅ベートーベンさん」

「反省しましたの……ブルーアイズ・VAN・ベートーベン様」

「誰が修羅の頂だって?」

 2人とも反省してないみたいだし、もう一発いこうかなぁ?

 ……チッ、運がよかったみたいだね、魔力使い果たしてたみたい。

「ねえ仁兎お姉ちゃん……壁が……」

 アマテラスちゃんに言われ、冷静になって壁を確認すると、壁が一部なくなっていた。

「これ全部、ジェニーとヤヌスの責任でいいよね?」

「絶対仁兎の責任だよね!」

「そうですの! ワタクシ達が覇……ヘッドに説教されるのは理論的におかしいですの!」

「なんで怒られることが前提になってるの? ヘッドが気付く前に壁を直せばいいんじゃないかな?」

「その手がありましたの! 外は曇り空……問題はありませんの、ちょっと急いで買ってきますの!」

 そう言うと、ジェニーは素早く蝙蝠に変身し、逃げ……もとい、修復するための資材を買いにいった……財布大丈夫なのかな? 生まれてこの方一度も働いてないらしいけど。

 となると、目先の問題は……

「なんでボクの方をチラッと見たの!? まさか、ボクにやらせるつもりなの!? ネコのボクに!」

 こういう淫獣マスコットにありがちな感じな別の姿……たまに人型……があるもんだと思うんだけどさ……

 特にネコの場合……

「そもそもあるかも分からないボクの本当の姿に期待する方が間違いだよニト!」

「確かにそうだけどさ……で、あるの? ないの?」

「……黙秘権を使わせてもらうよ」

「逃げるんか? ……じゃなかった、逃げるんだ? アマテラスちゃん」

「分かったぁ!」

 わたしが合図すると同時に、アマテラスちゃんはヤヌスの後ろに一瞬で回り込み、ヤヌスに背後に回り込まれた事に気付かれるよりも早く捕まえていた。

「待って! なんでボク捕まえられたの!?」

「質問は拷問によるロストマインドに変わってるからね」

「ロストマインド!? 一体何をするつもりなの!?」

「更にそこから罵倒に繋げようかな……?」

「もはや拷問とかそんな領域超えてちゃってるから!」

 デュエリストなら結構やりがちなパターンなのにここまでツッコミを連発されるとは……

 あ、拷問からの罵倒はデュエリストのみに通じる一種の隠語(意味深)だからね?

「買ってきましたのよ。あと、一応領収書を貰っておきましたの」

 丁度タイミングの悪い……いや、丁度いいタイミングでジェニーが帰ってきた。空気読まないな、まったく……

「チッ……ああご苦労さん」

「何で今ワタクシに対して舌打ちしましたの!?」

「究極不労働生命体! いつもは使えないゴミみたいだったけど、今は丁度良いところに来てくれたよ!」

 ヤヌスが究極不労働生命体ことジェニーに対してサラッとかなり酷いことを言ってのけている。そこには痺れないし憧れない。

 流石のジェニーも、これには苦笑いするしかないようだ。色々と中途半端だし。

「とりあえず早く修復しますのよ、ヘッドにバレる前に」

「ジェニー、ヘッドのこと管理人さんって呼ぶのやめた方がいいんじゃないかな?」

「ニトも人のこと言えないよね?」

「……このネタの仕様上仕方のないことだよ」

 デミさんとかドラム缶とかこういうネタは時と場合を選ばないといけないから気をつけるべきだね。


「あー、疲れた!」

 もう何もやりたくないよ……壁の修復もあと2割位だし、あとはジェニーに任せるかな……?

「ニトほとんど何もやってないよね……? なんでもう疲れたの?」

「さっきのお仕置きでMP使い果たしたからね……」

「なんで今日の分をもう使い果たしたの!? しかもどうでもいいお仕置きに!」

「アハハ……カッとなってつい……ね」

「ついじゃないよ!こんな時にアンノウンが現れたら…………!?」

 ひょっとしたら狙ったのかというほどに都合の悪いタイミングでアンノウンの気配を察知したヤヌス……

 まさか、こんな時に現れるワケ無いよ……そう思っていた時期が、わたしにはありませんでした……やっぱりくるよね、モロにフラグだったし。

 すぐさまヤヌスと小声でやりとりをする……

(小型のアンノウンが2体現れたみたいだよ)

(基準は? 昨日の狼は中形? 大型?)

(昨日の狼は大型、多分この気配は蛇型のアンノウンだよ)

(アンノウンのスネークが2体? ……いけるね)

(そんな双子の弟みたいなこと言わなくてもいいんじゃないかな?)

(まあいいじゃん……ヤヌスは準備できてる?)

(ニト、まずはそのジャージを着替えるか変身するかどっちか選んでね……そんな格好で外に出かける魔法少女はありえないから)

 着替えろとヤヌスがうるさいから、とりあえず変身して40秒で片付けてこようか……

 アンノウンのスネーク、3分間待ってやるから教会でお祈りを早く済ませておきなさいな?

「えくす、らゆじば、どゆりれぷ」

 呪文を唱え、数秒で変身が完了する……やっぱりこれ便利だね、いちいちボサボサになってる髪をブラッシングしなくてもその辺はきちんとやってくれるし

 普通に櫛でここまでしたらいったい何分かかることやら……

「髪をさわってるところ悪いんだけどさぁ……先にやることがあるんじゃないかな?」

「ハイハイ……じゃ、行ってくるから!」

「仁兎お姉ちゃん行ってらっしゃい!」

「……逃げるんですの?」

 ジェニーがもし呪いの人形だったら、間違いなく寝ている最中に都市伝説的に解体されかねない程の恨めしそうな視線は気にせず、アンノウンのに向かって走り出す。

 ヤヌス曰わく魔法少女らしからぬ移動らしいが、あまり目立ちたくないし慣れるまではこの移動をすることにした。


 結果から言えば、アンノウンのスネーク2匹は両方驚くほど弱かった。

 何をどうしたらこうなるのか、他の一般人に対しては何の反応も示さない癖してわたしが近づいた瞬間驚くほどの速さで噛みついてきた。

 面倒だったのと武器を出すほどでもないと判断したのでとりあえずカウンター気味にチョップしたら一発で倒れた。肩に乗ってその様子をみていたヤヌスが「もうニト1人でいいんじゃないかな?」と遠い目で呟いていたので、2匹目と相手するときにとりあえず餌に使わせてもらった。

 警戒心もなくヤヌスに近付いてきたところで後ろからチョップするだけで、やっぱり沈んだ。


「いや~今思えばわたしの最初の相手だったドラゴンが一番の強敵だったねぇ~」

「ニトがチートなだけだからね!? これは聞いた話だけと、他の魔法少女は小型アンノウンでも5分かかるのが普通なんだよ!」

 ゲームにおけるチュートリアルの的もとい敵との戦いをふと思い出したので正直な気持ちを呟くと速攻でヤヌスにツッコまれた。

「まあいいじゃん」

「よくないよ! 一応いっておくけど、ドラゴンは熟練の魔法少女がちゃんと準備をした上で複数人でやっと討伐できるような相手だからね!」

「……ヤヌス、今ならドラゴンと拳で語り合えそうな気がするんだよね、わたし……」

「……ニトなら残虐覇王になってもおかしくないと思うな……」

「ヤヌス、ちょっとお空の散歩に行ってみたくない?」

「ちょっと待って! なんでボクが投げられるの!?」

「大丈夫だから、わたしもすぐ飛び乗……追いつくから」

「何をするの!? というかなんで飛び乗るって言いかけたの!?」

「大丈夫、わたし結構軽いから」

「ネコのボクにとっては十分に重いよ!」

「重いって言ったなぁ? 乗ったろうか?」

「嫌だよ! せめて変身……いや、なんでもない」

「まあいいや」


 そんな感じに軽口を叩きながら誰にも見つからないような道を通って、アパート『アルカディアス』に着いた……のだが

「ねえヤヌス……チュートリアル的なドラゴンと戦ったときよりも遥かに強そうな気配を感じるんだけど……」

「奇遇だねニト……ボクも物凄い気配を感じるよ……」

 ひょっとしなくてもヘッドが帰ってきたのかな? 管理人さんと書いてヘッドが

「ニト……ちゃんと説明すればきっと分かってくれるから、頑張って!」

「分かったよヤヌス……わたしが無事に生きて戻れたら、ヤヌスの好きな鮭を買ってあげるからね……」

「ニト……」

 生きて帰ってこれるかな? ヘッド、最近色々あってイライラしてるみたいだし……

「覇」ぁ……ミラミスは死ぬわ、VANさんのせいでヘブゲは虫の息だわ……絶望しそう


念のため言っておきますけど仁兎さんは死んじゃいません。ただ虫の息の状態になっているだけです。

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