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その恋は、優しさのふりをして縛ってくる

作者: 爱丽丝
掲載日:2026/04/03

春の終わり。

すべては、逃げ場を失ったことから始まった。

「先輩、今日も一緒に帰れますよね?」

後輩の佐藤は、いつも通り微笑んでいた。

整った顔立ちに、柔らかい声。

でも、その視線だけが——どこかおかしい。

「……今日は用事があって」

「誰とですか?」

「いつ、何処で、誰と?」

即答。逃げ場はない。スマホには毎日届くメッセージ。

行動はなぜか把握されている。

正直、限界だった。

「じゃあ、私が彼女やる」

助けを求めた同級生、中村はあっさり言った。

「二週間だけ。それで後輩が諦めるならいいでしょ?」

こうして俺たちは、“偽の恋人”になった。

最初は演技だった。

でも、一緒に帰って、笑って、何気ない時間を過ごしていくうちにそれは少しずつ、本物に変わっていった。

そして二週間後。

「……ありがとな」

区切りをつけるつもりで言った一言。

「それで終わりって、本気で思ってる?」

中村の目は、もう“演技”じゃなかった。

「私は、演技じゃなかったよ」

「ねぇ、このまま私と付き合ってよ。」

その言葉で、すべてが変わる。そこに現れた佐藤。

「最初から分かってました」

「陰ながら見てました。そうだったんですね。先輩、私を選んでくれますよね?」

「ねぇ私とあの子どっち選ぶの?」

その目には魂が宿っていた。そして選択を迫られる。

「ごめん佐藤、俺は中村が好きだ。」

俺は、中村を選んだ。佐藤はそれを受け入れた。

「応援します」

そう言って、去っていった。

でも終わっていなかった。

付き合い始めたあと。

中村の距離は、少しずつ近すぎるものになっていく。

「今日誰と話してた?」

「なんで返事遅いの?」

「ちゃんと私だけ見てるよね?」

それは優しさの形をした“束縛”だった。

一方で、佐藤は戻ってきた。静かに。自然に。

「先輩、無理しないでくださいね」

距離は保ったまま。でも確実に近くにいる。

そして、限界が来た。

「……これ、やばいだろ」

逃げた。ただ、逃げた。

朝早く登校しても見つかる。昼休みに隠れても捕まる。

「どこ行くの?」

「逃げるの好きなんですね」

挟まれる。追い詰められる。

逃げれば逃げるほど二人は、壊れていった。

そして。旧校舎の階段。三人が、真正面からぶつかった。

「選んで」

中村

「ちゃんと決めてください」

佐藤。逃げ場はなかった。

でも俺はまた逃げた。

「俺、このままだと壊れる」

そう言ってしまった。

「……最低」

中村は去った。残されたのは、俺と佐藤。

「今なら、私がいますよ」 

「ごめん、でもまだ中村が好きだ。」

「ですよね、私応援しています。」

「早く行ってください。」

「ごめんありがとう。」

「頑張ってくださいね、先輩。」

差し出される言葉を後にして中村の元に向かった。

後輩は先輩が見えなくなるのを見送った。

「あぁ、振られちゃったな。でもまだ諦めないから。」

「中村!」

校門の外。

「お前のとこに来た」  

中村の目には

言葉を逃げずにぶつけた。

「……じゃあ証明してよ」

「……もう一回だけ、チャンスあげる」

中村が顔を近づけてくる。

「キスしてよ。」

「え?」

「もう、言わせないでよ」

「う、うん。」

初めてのキスは激しかった。

「次逃げたら、終わりだから」

その言葉は、優しさでもあり、鎖でもあった。

そして少し離れた場所で。

「キスか、よかったですね、先輩」

「次のキスは貰いますよ。」

「じぁ、次の準備しよ♡次は手に入れますね先輩。」

佐藤は、静かに笑っていた。

その目は、まだ終わっていないと言っていた。

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