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12/12

1章12話

ある日のこと。


訓練場で、いつも通りカウンターの練習をしていた。

26番と組手をしながら、カウンターの精度を高めていた時


その時、監視者が俺に声をかけてきた。



「25番、オーナーがオフィスに来いって」


「オーナーが?」



珍しいな、と思った。

アッシジアから直接呼ばれることは、あまりない。



(何かあったのか?)



試合の予定でもないし、規則を破ったわけでもない。

首を傾げながら、俺は訓練を切り上げた。

廊下を歩きながら考える。



(まあ、行けば分かるだろう)



執務室の扉の前に着いた。



コンコン



ノックする。



「入れ」



中から、アッシジアの声。

扉を開けると、アッシジアが机に座っていた。

紺色の髪を、今日は下ろしている。

いつもより、リラックスしているように見えた。



「呼んだか?」


「ああ、座りなさい」



俺は、椅子に座った。

アッシジアは、しばらく俺を見ていた。

何か、考えているようだった。


やがて、口を開いた。



「25番...番号で呼ぶのも、もう少なくなるな」


「...何の話だ?」


「お前、自分の年齢を知っているか?」


「年齢...?」



俺は、少し驚いた。

確かに、俺は遭難者だ。

自分が何歳なのか、分からない。



「いや、分からない。13か14くらいだと思ってたけど」


「そうだな。私もそう思っていた」



アッシジアは、書類に目を落とした。



「だが、正確な年齢を確認する必要が出てきた」


「なんで?」


「...色々とな」



アッシジアは、それ以上は答えなかった。

何か、言えない理由があるのだろう。



「教会に行く。年齢を調べてもらう」


「教会?」


「ああ。加護を授ける場所だ。そこで、年齢も判明する」



アッシジアは立ち上がった。



「今から行くぞ」


「今から?やけに急いでるな」


「ああ。時間を無駄にしたくない」



俺は、戸惑いながらも頷いた。



(なんで、急に年齢を調べるんだ?)



疑問に思ったが。

まあ、知っておいて損はないだろう。

俺たちは、闘技場を出た。



――――



教会は、闘技場から少し離れた場所にあった。

石造りの大きな建物。

厳かな雰囲気が漂っている。


扉を開けると、中は静かだった。

祭壇があり、そこには神官のような服を着た老人が立っていた。



「いらっしゃい」



老人は、穏やかな声で迎えた。



「アッシジア殿。どうされましたか」


「この子の年齢を調べてほしい」


「年齢、ですか」



老人は、俺を見た。

優しい目だった。



「遭難者ですね」


「ああ」


「分かりました。こちらへ」



老人に導かれて、俺は祭壇の前に立った。



「手を出しなさい」



言われた通り、手を出す。

老人が、俺の手に自分の手を重ねた。


温かい。


そして、老人が何かを唱え始めた。

聞き取れない言葉。

古い言語なのだろうか。


しばらくすると、俺の手が、ほんのり光った。

淡い光。

それは、すぐに消えた。

老人が、目を開けた。



「...これは」



老人の顔に、驚きの色が浮かんだ。



「どうした?」



アッシジアが尋ねる。



「この子は...12歳です」


「...何?」



アッシジアの声が、わずかに上ずった。



「12歳...?」


「はい。間違いありません」



老人は、もう一度確認するように俺の手を取った。


そして、頷いた。



「12歳です」



沈黙。

アッシジアが、俺を見た。

その目には、驚きと...何か複雑な感情があった。

俺も、驚いていた。



(12歳...?)


(俺、12歳だったのか...?)



13か14だと思っていた。

でも、実際は12歳。



(そんなに若かったのか...)



「ありがとうございました」



アッシジアが、老人に礼を言った。



「いえいえ。また、何かあればいつでも」



俺たちは、教会を後にした。



――――



帰り道。

アッシジアは、何も言わなかった。


ただ、黙って歩いている。

俺も、何を言えばいいのか分からなかった。



(12歳...)



ボトムクラスで1位。

ミドルクラスにも挑戦した。


それが、12歳。



(若すぎるのか...?)



でも、俺には実感がない。

記憶がないから、年齢なんて関係ない気がする。



「...12歳か」



アッシジアが、ぽつりと呟いた。



「まだ、子供じゃないか」


「...」


「15歳になるまで、まだ3年もある」



アッシジアは、立ち止まった。

俺を見る。

その目には、何か...迷いのようなものがあった。



「お前、よく頑張ったな」


「...何だよ、急に」


「12歳で、ボトムクラス1位。並大抵のことじゃない」



アッシジアは、小さく笑った。

でも、その笑みは、どこか寂しそうだった。



「これから、どうなるか分からないが...」


「...?」


「いや、何でもない」



アッシジアは、再び歩き始めた。

俺は、その背中を追った。



(何か、変だな...)



アッシジアの様子が、いつもと違う。

何か、言いたいことがあるようだった。


でも、言わない。



(まあ、いいか)



深く考えても仕方ない。

闘技場に戻ると、訓練場に向かった。

26番が、いつも通り訓練していた。



「よう、どこ行ってたんだ?」


「教会」


「教会?何で?」


「年齢調べてもらった」


「へえ。で、何歳だったんだ?」


「12歳」



26番の手が、止まった。



「...は?」


「12歳だった」


「マジで?」



26番は、信じられないという顔をした。



「お前、12歳なのか...」


「らしいな」


「...すげえな」



26番は、呆れたように笑った。



「12歳でボトム1位とか...化け物かよ」


「そこまでじゃねえよ」


「いや、化け物だ」



26番は、俺の肩を叩いた。



「お前、本当にすごいよ」


「...」


「俺、14歳だからな。お前より2歳も上だ」


「そうなのか」


「ああ。でも、お前の方が強い」



26番は、拳を握りしめた。



「くそ、負けてらんねえな」


「...ああ」


「お前が12歳なら、俺ももっと頑張らねえと」



26番は、再び訓練を始めた。

俺も、藁人形の前に立った。



(12歳か...)



まだ、実感がない。

でも、周りは驚いていた。

それだけ、若いということなんだろう。



(じゃあ、まだまだ成長できるってことだな)



そう思うと、少し嬉しくなった。

12歳。

15歳まで、あと3年。

その間に、どれだけ強くなれるだろうか。



(絶対に、もっと強くなる)



拳を握りしめる。

そして、訓練を再開した。

カウンターの動作。

何度も、何度も。

繰り返す。


その日、訓練場には不思議な空気が流れていた。

他の闘士たちも、俺が12歳だという噂を聞いたようだった。

ひそひそと話す声。

驚いた顔。


でも、俺は気にしなかった。

ただ、訓練を続けた。

年齢なんて、関係ない。

強くなる。

それだけだ。


夜。

ベッドに横になると、今日のことを思い返した。

12歳。

アッシジアの複雑な表情。



「これから、どうなるか分からないが...」



あの言葉の意味は、何だったんだろう。



(まあ、いいか)



考えても分からない。

明日も、訓練だ。

強くなるために。

ミドルクラスに上がるために。


そして、いつか。

この闘技場を出るために。

そう思いながら、俺は目を閉じた。

明日も、戦いが続く。


でも、もう怖くない。

俺は、まだ12歳。

これから、もっと強くなれる。

そう信じて、眠りについた。

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