冬の序章
今年の夏の最高気温を記録した今日、そのまま書きっぱなしにしていた雪の話。少しだけ涼しさを感じたくて。
雪の序章
両手で掬って
唇を寄せて
舌の先で味をみる
何にも味がしない
何にも味のしない味
冷たいふわりとした感触
手の温もりで見る間に形は崩され
もとの水滴に姿を変える
雪の形
美しい結晶は
誰のためにあるのだろう
見えるものにだけ見える美しさ
雪は家を埋めていく
家は沈黙を守り
重みと寒さに耐え
時々我慢しきれずにギシギシと嘆く
漆黒の空に眩いばかりに光っていた星が
語っていた物語は柔らかな雪に包まれて
猫のように丸くなって眠ってしまった
外に立てばしーんとした静けさが
厚い布団のように体を包む