第二話「放課後、厳島神社で待ち合わせ」
午後4時、授業を終えた楓たちは、学校からそのまま鳥居の見える海沿いの道を歩いていた。
目的地はもちろん、世界遺産――厳島神社。
「今日の干潮、ちょうどいい時間なんだって!」
ひよりがスマホで潮位をチェックしながら言う。
「鳥居まで歩けるやつね。ちょっとテンション上がる〜」
さくらは制服のスカートを気にしながら、小石を蹴る。
みのりだけが相変わらずクールだ。
「神社行って何するの。おみくじ?また末吉引いて騒ぐ気?」
「失礼な!今年は大吉引く予定だから!あと、ちゃんと願い事するし!」
「願い事って、どうせ『テストで赤点取らないように』とかでしょ」
「それ重要だもん!」
大鳥居まで歩いてみた
引き潮で、海はずいぶん遠くまで砂地が出ている。
普段は海に浮かんでいる大鳥居まで、みんなで裸足になって歩いていく。
「冷た〜い!きゃはは!」
さくらが声を上げると、観光客のカップルも同じように靴を脱いでついてくる。
外国人観光客は自撮り棒を構えて鳥居を背景にポーズ。
「これこそ宮島って感じだよね〜。この景色は何度来てもいい!」
楓はずぶ濡れの足を気にせずスマホを構える。
「ほらみのりんも!鳥居とツーショット撮ろ!」
「濡れるの嫌だし…」
「いいから!はい、チーズ!」
結局押し切られ、みのりは控えめにピース。楓は思いっきり満面の笑みでピース。
後ろに映り込んだ鹿がまたいい味を出している。
神社のおみくじ
ひとしきり鳥居で遊んだあと、神社の回廊を抜けて本殿へ。
「神様〜!今年も平和にテスト乗り切れますように!あと、もみじ饅頭食べ放題券当たりますように!」
楓は相変わらず真剣だが、願い事の内容が真面目なんだかふざけてるんだか。
みのりは無言で手を合わせるだけ。
さくらはしれっと「推しの新曲が世界一売れますように」とつぶやいていた。
ひよりは「明日の夕飯、牡蠣フライが食べられますように」。
そんなお願いを済ませたら、みんなでおみくじ。
「せーの、じゃん!」
楓「中吉!」
みのり「末吉」
さくら「大吉〜♡」
ひより「小吉…まぁまぁ」
「やった〜!今年の勝者はさくらでした〜!」
さくらが勝ち誇った顔でおみくじをヒラヒラさせると、
「末吉なんかい…」とみのりが小さくため息をついた。
帰り道
帰り道、商店街に立ち寄っていつものように揚げもみじを買い食い。
海の匂いと揚げたての甘い香り。これが宮島JKの日常だ。
「やっぱりさー、厳島神社は何回来てもいいよねぇ」
「そうだね…まぁ地元の特権だし」
みのりも口ではぶつぶつ言いながら、いつの間にか笑っている。
「来週も来よ!次は潮干狩りしよー!」
「誰がバケツ持ってくんの…」
宮島の潮の満ち引きと同じように、彼女たちの放課後もゆったり流れていくのだった。
つづく