第2話 シャドウ
異能犯を追い、廃ビルの屋上にたどり着いたカノ。
その屋上には、黒いなにかが静かに佇んでいた...。
私は驚いた。それと同時に確信した。やはりあの影は異能犯だったのだと。
「動くな!!」
私はいつでも撃てるように拳銃で狙いを定める。
ヒュゴッ
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「うわぁ!?店長、空から女の子が!」
「ひでぇ怪我だ!救急車を呼べ!」
廃ビルの屋上からふっとばされたカノを見て騒ぐ人々をそれは静かに眺めていた。
「チッ」
それは、不機嫌そうに舌打ちをすると闇の中に溶けていくように姿を消した。
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私はどうやら異能犯に殺されかけたらしく、気がついたときには病室にいた。
すぐ隣には目を腫らして泣いているマリとカリンがいた。2人には心配かけて
本当に申し訳ないと思った。
1週間後、私達はいつもの警察署ではなく、警視庁の捜査本部にいた。
上司に重要な情報が入ったから捜査会議に顔を出せと言われて2日早く退院した。
いや、正確には退院“させられた”の方が正しい。目が覚めたら既に上司によって
退院手続きは終わっていた。これは立派なパワハラだと思う。
「それにしても、人が多いですね。なんだかSEATの隊員や隊長達も来てますし」
そう上司に聞くと、
「当たり前だ。なにしろ犯人に関わる“重要な情報”が伝達されるらしいからな」
というぶっきらぼうな返事が帰ってきた。
上司にもっと話を聞こうと思ったとき、会議が始まった。何やら偉そうな人物が
横から出てきて喋り始める。つまらない自己紹介が終わり、やっと本題に入る。
「さて、今回の会議についてだが、先程連続要人暗殺事件の犯人が判明した」
部屋中が大きくどよめいた。これは犯人逮捕への大きな一歩になる。そんな声が
周りの刑事や隊員、隊長達から聞こえてきた。
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同日同時刻、とある港の廃倉庫に2つの人影があった。
1つはスーツを身に纏いサングラスをかけた男、もう1つはパーカーのフードを
深く被った青年の影だった。
「――と、こんな感じの仕事内容だが、引き受けてくれるか?」
スーツの男が問うと、パーカーの青年は頷いた。
「ありがてぇ。金は前金、報酬共に口座に振り込んどくぜ」
そう言うと男は踵を返し歩き始め、背中を向けて青年に話しかけた。
「じゃあ、後は頼んだぜ―――」
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「その犯人は、本名、年齢共に不詳の男。“影”の異能を持ち、殺し屋を営んでいる」
私は驚いた。まさか殺し屋が関わっている事件だったなんて。横を見ると上司も
驚いている様子だった。当たり前だ。殺し屋の異能犯なんて前代未聞だ。
「その男の通り名は―――」
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「「シャドウ」」
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