8/74
粟穂ではだめですか……?
玄関を開けると、ほんのりといい醤油の香りがした。キッチンにいる、薄水色の髪をした青年が振り向く。
「おかえりなさい!」
「ただいま、ピーちゃん」
言いながら、青年の持つフライパンの中を見る。野菜炒めを作ってくれているようだ。
飼っていたインコが突然人間になっていた時にはお互い驚いたものだったが、こうしてみるとそんなに悪くないかもしれない。
「そうだ、ピーちゃんそろそろ誕生日だったろ。何か欲しいものある?」
今までは粟穂をあげていたけど、人間になるとさすがに欲しいものも変わってくるだろう。コンロの火を消した青年が、「えっ、いいの?」と跳ねるように駆け寄ってきた。ぎゅうと抱きつかれる。
「あ、あのね、ピーはですね、そのですね」
「うん」
「か、飼い主さんとのですね、卵……が、欲しいのです」
「うん……?」