第四十七話 三つ目の時
「――よし、全部把握した」
深く息を吐き、頭の中で起きた出来事を整理する。
今夜、【四葬】レイビ――アビによって、ザマーレクは内側から崩壊する。
人が死に、その死を糧に、【死の怪異】が復活する。
つまり――。
「伊刻さん。アビを、殺しましょう」
静かな声だったが、迷いはなかった。
―――――
彩花との記憶共有を終え、レン、伊刻さん、夢結さんを交えて作戦を立てる。
手順は単純だ。
自己紹介前にアビを呼び出し、夢結さんの夢の権能で即座に拘束・尋問を行う。
「は〜い!夢結さん、どうしました〜……って、あれ?……え?」
言葉が途切れた瞬間、アビは夢の魔香に包まれ、崩れるように眠りに落ちた。
「ごめんね、アビちゃん。君の夢を、私に見せて」
夢結さんがアビの頭に手を置き、目を閉じる。
沈黙。
張り詰めた空気の中、誰も口を挟まない。
「……信じていいんだな?」
「はい」
『信じてください』
「僕は信じるよ」
夢結さんが目を開き、小さく息を吐いた。
「ビンゴ。この子、【四葬】だよ」
そして、アビ――レイビの夢で見た計画を語り始める。
【花】の力を持つ者の出現を引き金に、ザマーレクを内部から破壊。
襲撃で生じた死を生贄に【死】を復活させ、【花】を吸収。
その力で【王】を討ち、世界侵食を開始する――。
「……アビは、まだ俺たちが来たことを知りませんよね?」
「知らないね」
なら、好機だ。
「埋葬者の拠点を叩きます。
埋葬者を根絶し、死の怪異と全面戦争です」
伊刻さんを見据える。
一瞬、頭を抱えた伊刻は――すぐに顔を上げ、頷いた。
「分かった。その作戦を受理しよう」
―――――
そこからは速かった。
夢結さんがレイビの夢から拠点がニューカイロにあると特定。
結界破壊はシュウとラシプに任命。
死の瘴気はシュウの風で払える可能性がある。
伊刻さんが死の怪異と戦った際、槍の余波が闇を裂き、光をもたらしたのを見ていた。
防衛は――。
「夢結さん、アルスさん。ザマーレクの防衛をお願いします」
「任せて!!」
快諾する夢結さんに対し、狐耳の怪異――アルスは首を傾げる。
「儂は良いのじゃが……儂らだけで足りるかのぉ?」
伊刻が鋭い視線を向ける。
「問題ない。あなたは【狐の怪異】だ」
「……ふふ。なら、出来る限り力を貸そうぞ」
アルスの細い目が、僅かに開いた。
―――――
「じゃあ、行ってきます」
俺たちは二人に手を振り、アルトライでニューカイロ上空へ向かった。
―――――
『ほほう……そう動くか』
遠く、何かが嗤った。
『ならば吾輩は……【槍】を狩りに行こうかの』
―――――
アルトライ艦内。
「納得いかねぇ!!なんで急に現れたコイツを信じる!!」
フィクスが吠える。
「そんなに疑うなら――」
花を咲かせ、そこに自分の記憶を複製する。
それを、フィクスに突き刺した。
「なっ……!!?」
流れ込む、実在する記憶。
「……信じます」
フィクスは静かになった。
―――――
ニューカイロ侵入直前、伊刻が口を開く。
「最後に、【四葬】の整理だ」
ソウカ――【火葬】
ソウド――【埋葬】
「で、スイセンは?」
「水を操る、以上は不明です」
伊刻は一人、納得したように笑った。
「火葬、埋葬……葬儀の流れだろ?
水なら“末期の水”だ。死に水」
そして続ける。
「なら、レイビは――“死に化粧”だ」
――動く死体。
あの言葉が脳裏をよぎる。
――私の綺麗な死体ちゃん⭐︎
悪趣味にも程がある。
「マッチアップは変わらず、でいいな?」
「はい」
「よし。ラシプ、シュウ!結界を壊すぞ!」
―――――
アルトライ、甲板。
「……アビ…」
シュウが呟く。
シュウとアビは仲が良かった。だからこそ、シュウはアビの正体に気づけなかったことを悔やんでいるのだろう。
「まぁ、仕方ない。フィクスが静まったってので、十分、サクラを信じるに値する。だから、」
ラシプがシュウの肩を叩く。
「分かっています……はい。」
その様子に少し思うところがありつつも、ラシプは弓を取り出し、弓を引く。
周囲に七色の矢が現れ、力が込められていく。
眼前に広がる死の瘴気。落ち込みながらもしっかりとシュウは風の力で瘴気を払ってくれている。
ニューカイロは沈黙しているように見えるが、本当にここが本拠地なのか?
これまで、伊刻さんとの遠征で何度か訪れていたが……
まぁ、いい。今はただ、
「七宝の強弓…!!!」
矢が放たれ、一つになり、ぶつかる。
無に。
「壊れろ。」
無がひび割れ、それが顕になる。
荒廃したニューカイロ。
「本当にあったんですねよかった。」
「行くよ!シュウ!!」
ラシプとシュウは作戦通り、風を巻き起こしながらニューカイロに降り立った。
同時刻、アルトライの緊急脱出口から怪人達が投下された。
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「三度目、ここで終わらせてやるよ。」
ニューカイロ決戦が始まる。
ご精読ありがとうございました
人と記憶を共有できる時間ループとは…難易度ピースフル過ぎますね!!!
やるべきことはたくさんありますが、埋葬者、アンダーテイカー達との決戦を見届けてください




