第四十二話 死の時
実質、第四十一話の後編よ
楽しみましょうね
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「【王の怪異】との戦い方?そうだなぁ…」
優希はそう聞かれ、頭を捻る。
「あー、そうだな。一旦、煽れ。バカにしろ。そうすれば、アイツを無敵たらしめるマントが剥がれて……攻撃は通るが、バカ強くなるから気をつけて。でも、そうしないと戦いという舞台にすら上がれない……
てか、そもそも戦おうとするな。俺達は何百回も夢の中で【王の怪異】と戦ってきたから余裕な面して戦えているが、そこに至るまで何百回も死んでいる。
もともとね、五大怪異なんて真正面からやり合うもんじゃないんだよ。」
優希は優しく微笑んだ。
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「あのマントが概念武装……」
『煽って【王】の心情を揺るがすことで、絶対であり、揺るがない無敵の【王】としての概念を解いて概念武装を解除する……』
「やるか。」
万花万蕾の太刀を抜き、戦闘体制をとる。
「戦う気ですか!?無謀です!!」
シュウが焦りながら立ち上がる。
しかし、ラシプは頷きながら立ち上がり、弓を構える。
「…戦い方……知っているんでしょ?」
「ラシプ!!」
「まずは任せてくれ!!」
「……わかった」
ラシプは頷く。
「すぅー……この雑魚怪異ーー!!」
「む?」
【王の怪異】の眉が動く
「ざぁこざぁこ!!無能王!!お前如き、俺なら余裕でぶち殺せる!!」
「ふむ。なるほど、このマントを剥がしたいのだな?【炎】の入れ知恵か…」
え?煽り耐性低いんじゃなかったの?
「自分より弱い者からの嘲笑に【王】たる吾輩が揺らぐことなどない。吾輩を愚弄するな」
衝撃波とも思える程の圧を受け、膝をつく。
話が違う!!
聞き及んでいた【王の怪異】はもっと小物だった……こんな、こんな威圧感に満ちた化け物だなんて思っていなかった……
『前提を忘れていたね……優希は炎の神の名を冠した怪異と契約している。』
でも、彩花は…
『忘れたの?私は花神の欠片。相手の背中に居るのは正真正銘の【花神】だよ?花の力を除いても中にあるのは【人】と【龍】。
【王の怪異】と【人の怪異】は明らかに相性が悪いでしょ?【氷の怪異】や【死の怪異】と戦う程の戦力を持っている存在が【龍の怪異】に怖気付くとは思えない。』
納得がいく。
納得がいくからこそムカつく。
まだ、ここまで来てもまだそのステージにすら上がれないのか?
「吾輩は慈悲深い。故にお前のその命を持って……」
【王の怪異】が腰に携えた剣を抜き。それを俺達の首に向ける。
「手打ちとしよう。」
「……やめて!!」
ラシプの弓が放たれ、王に直撃する。
しかし王に傷はなく、当たった部分を埃を祓うように叩く。
「…ほぅ……当たればそれなりのダメージになったかの……で?なんじゃ?この者の代わりに首を差し出すと?自分にそれなりの価値があると思うたか……傲慢じゃな」
「ーーあ
剣が振るわれラシプの首が吹き飛ぶ。
「足りぬわぁ…たわけ」
「テメェ!!ラシプをぉぉぉ!!」
シュウが風と共に王に迫る。
「なんじゃ?愛しておったか?残念じゃな」
シュウの身体が粉々になり、くずれ落ちる。
「な……」
「その顔はなんだ……絶望か?それとも罪悪感か?もし、後者ならお前も傲慢じゃな。」
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【王】も俺達も、声にならないその雄叫びを聞いてしまい、2者は同時に同じ方向へ顔を向けた。
「なんだ……」
「人が死にすぎたか……吾輩としたことが……"世界の造物"よ、吾輩は一度引く。【死】が目覚めおった。もし、次会うことがあったら、それなりに格を上げておくことだな。」
【王】は姿を消した。
「く……そがぁ…」
避難所ーー生存者1名
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ザマーレクの街を歩く。
死体が至る所に転がっていて、血と臓物の臭いが鼻の奥に突き刺さる。
「くそ……くそ……」
脳裏にあの光景が何度もフラッシュバックする。自分が思い上がっていたせいで二人を死なせてしまった。
俺は何度同じような過ちを繰り返す?
アベル……俺は…全然成長できていない…
「おい!お前!!」
目の前からフィクスが走ってくる。
「おい!!ちっ……無視かよ…とにかく、シュウとラシプはどうした?避難所か?……おい!!」
「ごめん……なさい…」
「は?なんだよ、は?どういう……ことだよ…」
「二人は……死んだ……【王の怪異】だ…でも、俺のせいだ…」
「……そうか……っクソガァァァァ!!!!」
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フィクスと俺達は生存者を探しながらカイロタワーに辿り着いた。
「生きていたか……」
カイロタワーには伊刻とレンそして、数百人の市民が待っていた。
「生存者は無し…か。じゃあ確定だな。ザマーレク生存者の総数は500か……」
伊刻はそう言い、頭を抱える。
「サクラ!!生きていてくれた……僕ね、みんなを守りきったんだよ!!」
「マジ……か…レンはすげぇな」
「あ……そっか…えっと…」
「いや、いい。大丈夫だ」
大丈夫だ。そう言った瞬間、フィクスが詰め寄ってくる。
「テメェ!!なにが大丈夫なんだよ!!おい!!」
「……【王】は殺す。仇は取る。もう、誰も死なせない。」
「お……おめぇ…」
フィクスは気圧された様に後退りする。
「戦況報告をしよう。」
伊刻がそう言って話を始めた。
「今回の襲撃は【四葬】と……【王】によって起こされたということでいいな?」
「はい」
「よし、まず、戦果だが、俺が相対した、ソウカ、ソウドと呼ばれていた【四葬】は葬った。しかし、レンが相対していたスイセンと俺が相対していたレイビという【四葬】は取り逃してしまった。」
「俺が相対した【王の怪異】は傷を与えることすらできずに取り逃してしまいました。」
「わかった。次に死亡者だが、アルス、アビ、ラシプ、シュウが死亡。全員、死体が見つかっている。夢結真奈狐は重傷だが、命に別状はない。」
伊刻が淡々と告げ、それを聞いたフィクスは何度も壁を叩き、声を荒げる。
「クソッ!!」
「そして、最悪の状況についてなのだが、【死】が目覚めた。そのため、レン、サクラは俺と共に【死】の下へ向かうことにする。フィクスはここで市民を守っていてくれ。」
「はぁ!?俺だって行ってやる!!」
「全滅は避けたい。お前だけでも残っていればまだ未来がある。真奈狐を一人にしたくない」
「っく…」
フィクスは不服そうにカイロタワーに入り、避難民を招き入れた。
「これは俺の不得の致すところが原因だ。だから、二人は別に着いてこなくてもいい。今すぐにアルトライに乗り、真奈狐とフィクスと共に別の国に一旦逃げることが最善択だと思う。」
「いいえ、ここまで来て逃げるなんてあり得ません。僕はまだ、あの水使いと決着をつけていない。」
「俺も、レンを守るためにも、二人の仇を討つ為にも、逃げるわけには行かないんです。」
伊刻は静かに頷き、俺達は【死の怪異】が待つ"クフ王のピラミッド"へ向かった。
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クフ王のピラミッド付近は黒い瘴気に包まれていて視界が悪く、足元の砂が体力を奪っていった。
「ここから先、取り逃した【四葬】の二人が現れると思う。二人にはその対応を頼みたい。【死】とは俺が決着をつける。"あの日"の続きだ。」
「わかりました。」「『はい。』」
ピラミッドの上に寄生性の腫瘍の様なものが引っ付いていて、鼓動する様に蠢いている。
「気持ち悪りぃな……」
伊刻がそう呟く。
すると、
「俺達のォ……御身をォォォ!!貶さないでくれる?あー、嫌だ嫌だ」
「あ、た、し達は御身のために生きてきたのよぉ?それを貶されちゃ〜、殺すしかないよねぇぇぇぇ!!!!!」
二人の女は敵意をむき出しにして近寄ってくる。
片方はカイロタワーで見た"レイビ"もう片方は、話から考えるに"スイセン"か。
なら、
俺達は静かにレイビの前に立つ。
レンも同様にスイセンの前に立つ。
「あれれ〜、あたしの相手は君か〜。おいでぇ……花屑ちゃぁん…」
「夢結さんを傷つけた罰を与えようか…」
『絶対に許さない』
「あー!!怪人さん……じゃなかった人だ。嫌だ嫌だ………俺を楽しませるなヨォォォォ!!気持ちよくさせてぇぇぇ!!」
「うるさい。だまって、大人しく僕に殺されて?」
俺とレイビ、レンとスイセンがぶつかり、その隙を縫って伊刻さんは【死の怪異】に向かって走り出す。
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辺りを覆う黒い瘴気は視界を奪うと共に、【死】の信奉者である【四葬】の力を強化した。
「あっるぇ〜さっきまであーんなに、ちょ〜しに乗っていたのに、そんなへなちょこな力であ、た、しに、どうやって罰を与えるの??」
「黙れ!!!!」
攻撃手段がナイフだけなのに、翻弄される。
花の蔓はすぐに切り落とされる。
龍の力は使えない。
人の力は……
「やっぱり、黒いドロドロの調子が悪い…」
理由は多分……二つだ。
一つ目、冥界内はそういう生態系として完結しているため、その中に居る怪異の力はその冥界内の人の想いに呼応して強化される。だから、パリでは人が生きる希望を忘れなかったからその想いが俺に集まって【人の怪異】として概念武装を最大限強化できた。つまり、みんなが生きる希望を持たない絶望の中で、俺の力が最大限発揮されないことはわかりきった話だろう。
二つ目、この瘴気だ。この瘴気が俺の不死性を鈍らせている。さっきから切られた傷が治らないんだ……
絶望的に【死】と【人】の相性が悪いってことだ。
「う〜ん…もっと遊びたいけど、向こうも終わりそうだしぃ……更に遊んじゃおっかぁ⭐︎」
レイビはそう言い、地面に手をつける。
「なぁんで、あ、た、しが【粧】の名前を冠しているのかぁ〜わぁかんないかなぁ?なんでだろうなぁ?教えてあげようねぇ〜教えてあげる。見せてあげる。終わらせてあげる。」
地面から人が這い上がってくる。
しかし、その人達に生気はなく、その顔や体は不気味な程に綺麗で、安らかだった。
「なん……」
「【四葬】は、弔い〜。死には敬意をもって、死を与えるの〜!!死は死を呼ぶ。さぁて、死体に殺されて、死んで?」
死体達が立ち上がり、迫ってくる。
「こんな……こんな…やつら…」
『薙ぎ払えるわけ…ない』
ん、まって
「向こうも終わりそうって……」
レンを見る。
レンを……
「あ…がッ……ゴッ…」
レンの口に、鼻に、水が押し込まれ、操られた水によって持ち上げられ、悶えている。
「レン!!!」
「あぁ…幸せだ!!俺の身体を巡るこれは、これは!!気持ちいい気持ちいいいいいヨォォォ!!!!!!」
「やめろォォォ!!!」
手を伸ばす。しかし、ゾンビ達に掴まれて、転ぶ。
目の前でレンが溺れる姿を見ながら、いや、まだ、振り解けば!!
「はい、だめ〜サクッと…ね?」
「あっ……」
腹部から"血"が溢れ出す。
赤くて綺麗な血だ。
「なん……で…あぁぁぁぁ!!?!?」
「はい〜サクッ、サクッ!!痛いねぇ痛いねぇ?知らなかった?これがぁ〜"死"の味!!痛くて、辛くて、苦しくて!!甘くないね!しんどいね!!怖いでしょ、怖いでしょ!!知っちゃったね!この苦痛を!!初めましてだ!!嬉しいね!!ほら!ほら!ほら!あぁ!!見て?ズタボロ……ズタボロだよぉ?」
何度も、何度も、何度も、背中に横腹に、ナイフを突き立てられ、殴られ、血が流れる。
「痛い!痛い!痛いねぇ!痛いでしょ?ほら、これでおしまい。その先にあるのは、冷たくて、ざぁんこくな、死だけ」
レイビがナイフを振り上げて、
「ばいば〜い。花屑ちゃぁぁぁん!!」
あ……
…
…
…
…
…
…
……あれ?
『間に合いましたね…』
聞いたことのない声、落ち着いた声だ。
『あれ……間に合ってますよね?』
「ーーーはい…?」
何も間に合ってませんが
『よかった……君が生きている。完全に間に合ってますね』
いや、だから…
『声を出すのも辛い時でしょう。ただ聞くだけで良いですよ。それで無視されているなんて思いません。ワタクシ、大人なので』
はぁ…
『今、世界の"時"を止めています。なんてったって、【時の怪異】なのですから。』
時…?
『え…なんか……すご…い…人……きてる?』
彩花…久しぶりに喋ったね…
『さて、サクラくん……ワタクシのこと覚えてますか?』
え、なに?お礼参り?
『やっぱり覚えていませんね……11年前、【嵐の怪異】による災害の際に助けていただいた者なのですが……まぁ、いつか思い出してくれたらそれでいいですね。』
11年前…?じいちゃんに拾ってもらった年…
『ワタクシはきみに恩を返します。この身を捧げて……ね?』
「ど…」
『あ、声は出さなくても大丈夫です。サクラくんの目は感情がよく映る…』
なんだか、笑っている?
『君に、"時の権能"を譲渡します。全部で4つ。』
『時間跳躍 (スキップ)時間遅延 (スロウ)時間逆行 (リターン)時間停止 (ストップ)』
『ただ、本当に申し訳ない……ワタクシの力不足故に、与えられる力は有限でして……以上の4つの権能は合計10回しか使用できません。』
『使い方は何となくわかると思いますよ。さて、残された時間もそう長くありません。権能を付与します……しました。』
急すぎて、なにがなんだか
『困惑していますね……さて、恩返しの時間です。最初の一回はサービスですよ?あと10回の権能行使権を大切に扱ってくださいね?』
あたりの景色が流れるように変わっていく。
傷が消え、瘴気が晴れ、人が生き返り…
時間が戻っていく。
『ワタクシの存在力はもう、ありません。未来をワタクシが声に出すとそれが現実になってしまう。だけど、一つだけ、サクラくんは、世界を救います。だから、どうか……そう自分を責めないで』
「あなたの……名前は…?」
『ですから、【時の……いや、違いますね。なるほど、"クロック"。クロノスや、フォルトゥナなど名前はありましたが、結局、この名前が1番お気に入りです!!』
「ありがとう…クロック」
<ー <ー <ー <ー <ー <ー <ー
「彩花は健在だし、サクラは元気……だろ?水越争太の孫だもんな」
「ーーーー」
「おい!サクラ!?」
「あっ!え!?す、すみま……」
辺りを見渡す。
これは、カイロに入ったばかりの時だ。
「本当に……戻ってきたんだ」
ご精読ありがとうございました!!
クロックはとある人につけてもらった名前です
【炎】がエンと名付けられたみたいな。
さぁ、10回の時の権能。どう使う?




