プロローグ•死
ーー100年前
【死】は【夜】【人】と共に【花神】の前に立ち塞がった。
『私の邪魔をするな!!』
声が響き、ありとあらゆる方向から蔓が襲いかかってくる。その速度、規模は規格外であり、一本一本に果てしない破壊力が秘められている。
『【死】!ここは一旦協力だ!俺が道を開く!』
【夜】はその天蓋のように暗い夜の翼を広げ、その翼に秘められた星から光線を放つ。その光線は全方位を焼き尽くし、迫り来る蔓を焼き切っていく。
『不愉快ではあるが、背に腹は変えられぬ。』
『行け!!』
焼き切られても尚、向こう側から迫り来る蔓を交わし、穿ち、進んでいく。
『花よ、死を享受せよ!!』
【死】にエネルギーが収束し、音が消え、辺りの光が消え、暗く深い静寂の中で赤く黒いエネルギーが怪しく光出す。
『死死死死死死』
暗く冷たく、切ないその光線が花の冥界を駆けていく。触れた蔓は瞬時に枯れ、余波に当てられた花も蔓も、辺りで犇く花に侵された怪異達も静かに萎むように死に絶えていく。
『開け、"闇"』
【花神】がそう言うと死の光線の進む先に蕾が一つ現れ、開花し、暗い闇が溢れ出す。
『全ては闇に呑まれ、消えゆく定め。』
光線が闇に溶け、消えていく。
『【闇】!?花に侵されていたのか!?』
『忌々しい……死を拒絶するか…!!』
闇が広がり、辺りが深淵へと変わっていく。
『闇を払う力を俺は持たないぞ!死!どうすんだ!』
『我もその術を持たぬ。しかし、』
出遅れていたもう一体の怪異が奥から現れる。
『ーーーーー!!!!』
【人の怪異】はあらゆる言語を同時に用いて話すため、その声は声になっていないのだが、確かに何かを言い、【人の怪異】は【闇の怪異】に対抗するように光を放ち、押し返していく。
『ーーー!!!!!』
そして、その勢いのまま【人の怪異】は突き進んでいく。
『おい、待て!足並みを揃えろ!』
『その必要はない、もとより味方などではないのだから。』
それに続くように負けぬように【死】も進んでいく。【夜】は頭を抱えながらも進んでいく。
『ーーー!!!』
冥界の中にある壁を突き破り、中心部へ踏み入っていく。
そこは果てしない平原であり、その中央には苦しみながら叫び、この世の存在とは思えない程の力を放出する【花神】が居た。
『邪魔をするな、彩花は私のものだ。世界は、私のモノだァァァ!!』
入り込んできた【人】、【死】を不可視の蔓で捕まえ、締め付ける。
『ぐっ……』
『ーー!!』
『大人しく吸われろ。私が世界を壊すための礎になれ。』
『星雲!!星屑落下!!』
平原に宇宙を秘めた雲が現れ、そこから隕石が降り注ぎ始める。
『はぁ!?』
『恒星極光!!』
燃え盛る星から熱線が放たれ、【死】と【人】を締め付ける不可視の蔓が燃え、尽きる。
『畳み掛けろ!!』
『死せよ、花!!』
『ーーー!!!』
音が消え、視界がホワイトアウトする。キーンと、耳鳴りが始まり、視界が回復する。
辺りが焼け野原となり、冥界の壁が明らかにボロボロになって崩れだす。
本気の一撃を放った五大怪異である【死】と【人】によって、【花の冥界】は大打撃を受けた。
しかし、【花神】は健在であり、殺意に満ちたその顔で、コチラを睨む。
『よくも、やってくれたな?』
死角から伸びた蔓に貫かれ、三体は力を吸い取られていく。
『やれ。私は冥界の復旧に勤しむ。』
そう言い残し、【花神】は消え、代わりに花の蕾が四つ現れる。
そこから現れたのは、
マントを纏った者、
羽衣を纏った者、
ペストマスクを装着した者、
黒い霧に包まれた者……
そいつらの体にはこれ見よがしに花が咲いていて、全員の気配が五大怪異と言っても過言ではない程の強者であることを物語っていた。
『まずい……』
【夜】がそう呟いた直後、四体の怪異は攻撃を放ち、【人】、【死】が落とされる。
【夜】は全速力で退避し、リオデジャネイロに冥界を作り出した。
【人】は存在を保てず、消滅。
そして、【死】は砕かれ、一片のかけらを残して消滅。
そのかけらは、カイロに流れ着き、冥界を作り出し、繭に包まり、再生を始めた。
時を同じくして、不完全な量子テレポートにより時間座標がずれたヴァルフォール達が各地の冥界に辿り着き出した。
最初は東京、次にオーストラリアとパリ、最後にリオデジャネイロとカイロ……
カイロに辿り着いた伊刻と真奈狐が見たのは人が人に蹂躙される地獄絵図。
【死】のかけらが放つ瘴気に侵され、精神がゆがんだ者達が、冷徹で残酷な死を享受させるために人を殺す没落した都市。
ーーー死滅没落都市がそこにあった。
ご精読ありがとうございました。
【花神】って五大怪異が揃っても勝てないのぉー!?
そうだよ?上位者だもん。
それでも、死と人と夜はなかなか良い戦いができていましたよ。
さて、これから治安最悪の章が始まります。
登場キャラが増えます。ひとつの章で登場するキャラをできるだけ少なく、少なく…とやってきたのに、設定を考える頭が調子に乗って、15人くらい名前持ちがでます。
あぁぁ…しんどい




