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第三十話 オーストラリアとヒロイン

パリを出立し、数日が経過した。


サクラは管制室に保管されていた100年前の戦いの記録を閲覧していた。


「じいちゃんがあまりにも強すぎる件について…」


『戦争の怪異は最強だから…とはいえ、あまりにも強すぎる…』


推定、【罪の怪異】との戦闘後、花の冥界戦に行き、1人で花の怪異を抑え、みんなが転移するまでの時間を稼ぎ切った…


古い紙媒体の資料には戦争を終わらせたみたいなことまで書かれている…


「化け物…」

『そうだけど…そう言わないであげて…』


そんなこんなしている内に俺達はオーストラリアに到着した。


「あれは…雲?」


オーストラリア、【氷の怪異】の冥界は白く重い雲の様なものに包まれていた。


アルトライのレーダーはそこに"冥界の壁"は無いと告げている。


「突っ込むしかない…?」

『やったるぞ!!』


アルトライの出力はマックスに。

全速力で冥界内へ突進を行う。


雲を抜けた先は…


「『雪国……というか…』」


「北極!?」『南極!?』


温暖な気候の下、数多の生き物が生息していた自然豊かな世界最小の大陸は、絶対零度に包まれた氷点下の世界になっていた。


怪異譚……act.3


絶対零度大陸 オーストラリア


ーーーーー


「すごい…機外の温度が…−273℃……」

『え、絶対零度!?そんなの物理的に無理だよ!?』


物理的に不可能な絶対零度を実現している。

これが【氷の怪異】の力…


その時、アルトライが揺れた。


「『え?!?』」


レーダーにはさっきまで無かった怪異反応が映し出された。


その怪異反応は


「『【氷の怪異】…!!』」


アルトライはミシミシと音を立てながら警告音を響き渡せる。


「全砲門展開だ!」


アルトライの砲門が起動し、辺りを手当たり次第に撃つ。

しかし、警告音は治らない。


「なんで!?」

『まって!これ…この氷…全部…』


一気に冷却されたアルトライに付着していた水が凍り、それが全て【氷の怪異】として判定されていることに気がついた。


『やばい!氷の怪異、強すぎる!!』


「ダメだ!アルトライ機能停止する!流石に寒すぎる!!」


「『落ちる!!!』」


ーーーーー


上空に現れた謎の舟…

氷に覆われて大変なことになっている


「僕が助けに行くしかないよね!!まっててね、来訪者さん!!」


1人の少女が氷の上を美しく滑りながら走り出した。


ーーーーー


アルトライが墜落した。

しかし、


「なんか、どこにも損傷がないんだけど…」

『極限の寒さによる機能停止だったんだ…』


俺達は【人の怪異】で【花の怪異】なので、まぁ耐えられるだろうと踏んで、アルトライの外へ出た。


「『…まぁ、だよね』」


体は一瞬、全身に鳥肌を展開したが、すぐに収まりこの温度に適応した。


アルトライに花の蔓を覆い被せておき、保険をかけて歩き出す。


「どうしようか…」


澄み切った世界。どこまでも続く地平線の先まで氷が張った湖のようになっていて、そこに音はない。まるで時間が止まっているようだ。


「すげぇ…」


『冬の朝って感じで私は好きだな…』


最後に見た位置情報によると、ここから一番近い都市はメルボルンだ。

まぁ、現存しているかわからないけど…


俺達は花の蔓と人の手を使い、氷の上をもの凄い速度で進んでいく。

【龍】との戦いで使った人の概念武装は使えない。あれは、あの特殊な場だからこそ成し得たもの…かもしれないから。あと、反動が怖い。だから、今はまだ使えない。


しばらく進むと、凍りついた街が見えて来た。

看板にはメルボルンの字が。


「まぁ…人はいないか…」


そう諦めた時、街の中を人が歩いているのが見えた。


「『いるいるいる!!!』」


俺達は全速力でメルボルンに入り、今の人影を探した。

すると、確かにそこに人はいた。


「『すみませーん!!』」


手を振りながら近づく。

しかし、ふと我に帰る。

今の環境は絶対零度。


どうしてこの人は形を保って生きて歩いている?


「な…」


その人はゆっくりとこちらを振り返る。

その顔は苦悶に満ちた表情が凍りつき、張り付いたままの人ではない何かだった。


『ゾンビ…?』


《ガァァァァ!!》


氷のゾンビは叫ぶ。すると、建物の陰から何体もの氷のゾンビが現れた。


「…龍人みたいなものか?」

『可能性はある』


そう考えると、心の奥底から沸々と怒りが沸いてくる。


手を天に翳し、呼ぶ。


「『来い!万花万雷の太刀!』」


桃色の刀が飛び、手に収まった。


「『今、楽にしてあげる…』」


刀を振り上げて、氷のゾンビに斬りかかる。


「待ってェ!!!!やめてえええ!」


どこからともなく女の子の声が聞こえる。


「『え?』」


刀がいつのまにか地面から生えた氷に包まれて動かせなくなっていた。


「一旦こっちにきて!!」


俺達はよくわからないまま抱き抱えられ、ビルの屋上に置かれた。


そこには、白髪に青いインナーカラーが特徴的な同い年ぐらいの女の子が立っていた。


「えっと…」


俺は困惑しながら声を出そうとする。


「あ!ごめんね?えっとね…あれ、みえる?」


俺の声を遮りながら女の子はビルの下で徘徊する氷のゾンビを指差す。


「あれ…ゾンビなのか?」『でも、氷とゾンビってなんか関係あったっけ?』


「うん…分類するなら確かにあれはゾンビだよ。でも、ちゃんと名前がある。あれは、"氷屍人"。【氷の怪異】の力で体の芯から凍らされた人の成れの果て…だよ。」


「氷屍人…」


「あの人たちはもう既に凍死しているの。」


「『じゃあ尚更!!』」


「尚更…なんで止めたの?って話でしょ?それはね、あの人達は【氷の怪異】の氷を自由自在に操る能力で動かされている人達だからだよ。」


「氷を自由自在に…操る…」


「思い当たる節があんじゃない?」


「『ある』」


「うん…でね?氷屍人は氷だっていうことなんだけど、それに触れられた生物はその部分から侵食されるように氷に変わってしまうの。だから、近距離で戦うのはやめた方がいい。どれだけ強かろうと、あんな数の氷屍人を1人で触られないように相手するなんて無理なんだから。」


「なるほど…」


「まぁ、まずは!オーストラリア最後の砦まで行こうか!僕が連れて行ってあげるよ!"炎の都シドニー"まで!」


「『炎?』」


「そう!そこには、【炎の怪人】が居て……え?なに、そのキラキラした目は…?」


『優希だ!!優希だ!!』


「やったな!彩花!」


『ヤッタァァァァ!!』


「えっと…知り合いだったのかな?まぁ、いいや、さぁ!行こう!!」


女の子は遠くを指差して、声高々に言う。

しかし、それとは裏腹に俺達は冷静に、


「まぁ、」『それはそれなんだけどね?』


「『君の名前は?』」


あっ、という顔をして女の子は顔を赤くする。


「えっと…えへへ、名乗るの忘れてたね…いっけなーい…えっとね、えっと…僕の名前は…そう!"郡山レン"!レンって呼んでね!」


「『よろしく!レン!』」


「俺の名前は、水越サクラ!」『私の名前は、新木彩花!』


「うん!よろしくね!サクラ!彩花!」


ご精読ありがとうございました!!


ついにヒロインがァァァ!

僕っ子、白髪、青インナーカラーは至高…

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