第二十八話 龍騎士のレヴェランス
龍騎士は花に対して殺意を叫んだ直後、突然倒れた。
しかしすぐに立ち上がり、穏やかに微笑む。
「ご迷惑をおかけしました……アベルです」
アベルは頭を押さえながら、ゆっくりと頭を下げた。
「大丈夫? 頭、痛い?」
「大丈夫です……なんか、声が聞こえてきて……気持ち悪くて……」
アベルが膝をつく。
「『アベル!?』」
「だ……め……だ……『返せ』違う!! これは、僕の……『我のモノだ』……そんなわけ、ないでしょ!! この身体は僕の、僕自身のものだ!! 『契約した我のモノだ』……なにを……!」
アベルの声と、もう一つの声が重なり合う。
それは――【龍】の声だ。
「アベル! 負けるな! アベル!!」
「む……り……『手放せ』手放したくない! 『なぜだ?』皆に……危害を加えるからでしょ! 『しかし、それは全て契約したお前のせいだろ?』そうだけど、そうじゃない!! 僕は!! 僕はただ……おねにいちゃん達みたいに強くなりたかったんだ!!」
アベルは立ち上がり、俺に縋りつく。
「お願い! おねにいちゃん!! 『やめろ』僕を――『やめろ!!』僕がコイツを抑えている間に、『やめるんだ!!』僕を吸収して!! 『やるな! この子供も死ぬぞ!!』僕は、それでいい!! みんなのためになれるなら!!」
「『いやだよ……だって……』」
「お願い!! お願いだから!! 『それでいいのか!?』いいんだ……もう、ルーシーのいない世界に……生きる理由はない。だけど、僕のせいでみんなが死んだら……死んでも死にきれない!! だから! お願い! おねにいちゃん!! 『ふざけるな!!』」
アベルの願いが、想いが、強く伝わってくる。
いやだ。
いやだけど――
「『………わかった』」
サクラはアベルに触れる。
「『守れなくて……ごめん……ルーシーを死なせてしまって……ごめん……だから……最期は……』」
「ありがとう……『やめろ!!』」
アベルの体に、花の根が入り込む。
「『ばいばい……アベル』」
「さようなら……『いやだ!! これで終わりなんて、そんな! そんなこと、あっては……あってはならない!!』……おねにいちゃん! はやく!」
「『うん……』」
花の根がアベルを吸収する。
アベルの身体が光に包まれ、薄くなっていく。
「ありがとう……『いやだぁぁぁぁぁぁぁ!!』」
アベルはただ微笑み、光となって根の中に溶け込んだ。
――もう、アベルはいない。
ルーシーもいない。
辺りを見渡すと、そこら中にあった結晶が美しい粒子となって消えていく。
エッフェル塔の方から光の壁が空を包むように広がっていった。
龍の冥界が壊れ、八上さんが冥界を再構築したのだ。
龍の巣は崩れ去り、飛び回っていた龍の分体たちは灰となって消える。
そして――
パリは、完全に解放された。
ご精読ありがとうございました。
龍巣都市これにて完!!(次回でだけど)
アベルは花の中で眠りにつきました。
いつか、アベルは目を開く日が…くるかもしれませんね…




