第二十三話 龍騎士の演舞曲 その一
龍人とは違う。
龍騎士になったアベルと戦って感じた感想だ。
まず、剣を使う。盾も使う。ここから違う。
これまで、人間大の敵と戦う場面は何度もあったが、こんな騎士然とした戦い方をするやつは居なかった。
しかも、相手はアベルだ。
龍人化したルーシーとは話が違う。血が通い、意識がある。
【怪人】だ。
身体に傷をつけたくない、痛い思いをさせたくない……龍人と違い、助けられる余地があるせいで、攻撃の手を緩ませてしまう。なのに相手はこっちを全力で殺しにくる。
「戦い辛いったらありゃしねぇ!!」
しかも、ここに来て五大怪異との完全な1対1――
『どうすればいいのかわからない…』
「なら、聞くしかないだろ!!」
「『アベルの意識はあるのか?』」
「あるとでも?」
「『お前をブチ殴り、アベルを呼び起こして、お前をアベルの体から引きずり出してやる!!』」
「お前はタスクが多くて大変だな? 俺はお前を殺すだけなのになぁ?」
龍騎士はそう言い、剣を振るった。
剣筋は単純だが、空を斬る音だけで直撃は避けたほうがいいと直感できた。剣を避け、その隙に刀で斬る。しかし、その刀は盾で防がれる。
「騎士と侍、相性はどっちが良いと思っている? 正解は盾を持つ騎士だ。」
「お前は俺を侍だと思っているのか? 俺は、花と人の怪人だ。」
足元から花の蔓が伸び、それが龍騎士にまとわりつく。
「空高く舞い上がれ!」
蔓が龍騎士を持ち上げ、空へ打ち上げる。
「空は俺の独壇場だ!!」
「調子に乗るなよ!! お前は空で俺たちに負けているんだよ!」
身体から黒いドロドロを出し、それをいくつもの細い糸のようにして、龍騎士を貫く。
「ぐっ…」
身体の全てをドロドロに変換し、龍騎士を貫き、貫いた先でドロドロを一つにして自分を作る。身体中に口を作り、一つの詠唱をする。
「目覚めよ…万の蕾よ!!」
「『万永春天!!』」
地上で咲かせた花は全て枯れ、刀に集まる。桃色の刀身は日光を浴び、煌めく。
「この刀でお前を斬るッ!!」
「アベルが可哀想だと思わないのかァァァい??」
甲冑に包まれた顔がニタニタと笑っているのがわかる。
「んなこと分かってんだよ!! クソがァァァ!!」
しかし、龍騎士は盾を取り出し、その刀を防ぐ。
「言ったろぉ? 空は俺の独壇場だ」
龍騎士の背中から龍の翼が現れ、龍騎士は飛ぶ。怪異の時はその巨体のせいで速度は出ていなかったが、今は人の体での飛行。あり得ないほどの速度で飛び回る龍騎士は目で追えない。
「お前に翼はない! 落ちゆく中で、俺の炎に焼かれ、死ねェェ!!」
「滅尽龍火!!」
粒のように細かく、溶岩のように熱い火が高速で飛び回る龍騎士の手から弾幕のように放たれる。
「『なんだそれ!!』」
ありとあらゆる方向から飛んでくる火を避け、切って、ドロドロの膜で防いで、しかし、全てを避ける事はできず、被弾し落ちていく。
地面に追突し、痛みが身体中を巡る。
「『うっ…ぐっ…』」
空を見ると、螺旋を描くように、空を覆うほどの量の火が降り注いできていた。
「パリごと焼く気か!?」
「一旦、全部殺して、死体を龍人に加工する!!世界は俺のものだァァァ!!」
「『そんなこと、絶対に許さない!!』」
エネルギーが尽きたせいで結晶はもう使えない。黒いドロドロはこの広範囲を覆えない――
『サクラの概念武装は!?』
俺の…概念…
『そう! 人の怪異として、どうしたいか!』
どうしたいか?
『私の刀はハナから受け継いだものだけど、概念武装の根底には“何をしたいか”ってのがあるらしい…だから、サクラは何をしたい!?どうしたい!!』
「俺は…人を助けたい…人の想いをこの体に宿して!! 全部を包み込む!!」
『じゃあ、実現してみせて!!』
俺は【人の怪異】。
なら、俺の概念は俺が広げろ!!
「大衆の腕!!」
ご精読ありがとうございました!
悪辣龍巣都市パリの正真正銘、最後の戦いが始まりました!!
一つ前の悪辣龍巣血戦が、決戦じゃなかったのは龍騎士戦があったからなんですねぇ〜
なーにー!?
やっちまったな!!
今後の章を考えても、悪辣龍巣都市は一二を争う長さですので!最後まで楽しんでいってください!
アベルに救いはあるのか!?




