第二十話 悪辣龍巣血戦 その六
「一気に終わらせる……!!」
ルーシーを倒したサクラは、全速力で龍の方へ向かった。
影によって身体中が穴だらけになり、鬼の力によって切り離された翼——明らかに満身創痍。
しかし龍は、平気な顔をしながら空を飛び、影と鬼を相手に戦っている。
だが、その体に開けられた無数の穴は、花の根を捩じ込むにはおあつらえ向きすぎた。
「『正面からは戦わない!! 全てを吸い込む!』」
地面から無数の蔓と根を伸ばす。
『【花】……そうか、殺したのか。残酷だな?』
龍はそう呟いた。
「「お前が! それを! 言うな!!」」
鬼と影が、サクラを侮辱し嗤う龍を押さえつける。
「『今、お前のすべてを奪い去ってやる!!』」
穴の中へ数多の根を捩じ込む。
ぐびぐびと、龍のエネルギーを吸い上げていく。
焦燥を感じたのか、龍は暴れて根を捩じ切ろうとするが、鬼と影に押さえつけられ、その隙にエネルギーをさらに奪われていく。
『舐めプしやがったな!? 結局お前は、相手が人間だと高を括ってたんだ! 残念だったな! お前が相手にしているのは“神の分け身”、かつて【月】と【闇】を平伏させた怪人集団だ!!』
彩花のテンションがおかしくなっている気がするが、言っていることは本当だ。
「お前はさ、結晶にエネルギーを貯蔵して、いつでも摂取できるようにしてるんだろ? その権能を俺に奪われたら、どうなるのかなぁ!!?」
『花ァァァ!!!』
龍はついに身体を再生させ、全力で影・鬼・花の拘束から抜け出すと、上空へと逃れた。
「再生は……ギリギリ間に合ったようだな」
『でも、分かるだろ?』
「『もう、お前は“不死身の龍”じゃない!!』」
飛ぶ龍は低く唸り、こちらを睨む。
「『言いたいことがあるなら、言ってみろよ!!』」
「待て! 煽りすぎるな!」
影神が制する。
『ーーー龍炎ッッ!!!』
上空から放たれた龍炎は、空を覆い尽くすほど巨大で、逃げ場などないと告げていた。
「サクラ!」「お前だけでも!」
影神と八上が咄嗟にサクラを庇おうとするが、サクラはそれを避け、地面を踏み締めた。
「『龍結晶形成!!』」
地面から数多の龍結晶が生え、それらが編み合わさって天蓋となり、パリを包み込む。
「ダメ押しだ!」
『花よ、咲け!』
結晶の下に花の蔓の層を作り、さらに強度を高める。
結晶はビキビキと音を立てて崩壊していく。
壊れたら次、壊れたら次と、結晶の層を次々と生み出す。
龍が数十年かけて作った龍巣の結晶とは比べものにならないほど脆く、弱い。
それでも、幾重にも重ねることでようやく、龍の炎を防ぐ壁となっていた。
「ぐっ……」
鼻から黒い血が滴り落ちる。
結晶生成に限界が来たようで、次の層が生み出せなくなる。
「サクラ、休め!」
八上がサクラを抱え込む。
「あとは……龍の炎が尽きるのを祈るしかない……」
影神は自らを影に変え、二人を覆った。
ピキピキ……
結晶が壊れ、あたりに破片が一気に散らばる音が響く。
影が人の形に戻り、三人は空を見上げた。
空を飛ぶ龍はフラフラとしていて、明らかに疲労している。
『……ふせ、ぐ……か……』
「『最後に見せてやるよ! 俺たちの“龍炎”を!!』」
「深影捕縛!!」
数多の影が龍を掴む。
「鬼神化……いくぞ! サクラ! 彩花!」
八上が飛び、龍の無防備な腹を狙って大鉈を振るう。
「確殺の金棒!!!!」
龍の腹が大きく裂け、龍は悶えるが、影の拘束は解けない。
大鉈を振るい落ちていく八上とすれ違うように、サクラが龍へと向かう。
目指すは、中身がつけた傷。
サクラはその傷に手を当て、叫んだ。
「『龍炎!!!!』」
手から放たれた龍炎は十秒間、龍を焼き続け——
やがて龍は、声も上げられぬまま灰となって消えた。
この日、パリは解放された。
ご精読ありがとうございました!!
悪辣龍巣血戦 これにて完!!
悪辣龍巣都市編はまだ続くけど、いい一区切り!




