第十七話 悪辣龍巣血戦 その三
おねにいさんが2人に分かれてみんなを助けてくれた。だけど、なんだか風が冷たい。街のざわざわが、遠くで消えていく感覚がする……
僕はただ、ルーシーの名を呼びながら、説明のつかない焦燥感と共にエッフェル塔へと走った。
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血が滴り落ちる。
声にならないような呻き声が響き渡る。
「……たすけて」
その声を最後に、頭が潰れた。
乾いた破裂音とともに、血が雨のように降り注ぐ。
潰れた頭部の破片が、龍の分体と縫い合わされていく。
やがて形を成した“それ”は、歪で、中身が丸見えだった。
透明な膜の奥で、何かが脈動している――まるで、心臓のように。そこが弱点であるのか分からないが、龍の鱗で作られたフードのようなものを唯一残された人間の口元だけ残して覆い被せ、顔に縫い付けていた。
ルーシーはビクンビクンと何度も体が拒絶反応を起こしているように震え、血や体液が滝のように溢れ出しながら身体中に龍の分体が移植され、それはルーシーから【龍人】になった。
《たすけて》
それは確かに、ルーシーの声だった。
けれど――それを発したのは、ルーシーではない“何か”だった。
「『ルーシー…』」
ルーシーならざる【龍人】と、サクラはぶつかった。
ーーーーー
「ふざ…ける…な」
倒れていた影神はその光景を見て血の涙を流しながら立ち上がる。疲労やダメージで震えるその足を無理やり動かして。
「……っ」
身体中の火傷が再生した八上もゆっくりと立ち上がる。
二人は顔を見合わせる。
エッフェル塔の下でルーシーと戦うサクラを上から見下ろしニヤつく龍の顔を二人で睨みつける。
「これは、俺の責任だ。影の中で、匿ってやれなかった…守れなかった…俺の責任なんだ」
「俺が気を失っていたのが悪い。俺が、お前らの盾になるべきだったのに…」
二人は、互いの言葉を否定しなかった。
それぞれが、自分の罪を抱いている。
だからこそ――立ち上がる。
「概念武装……深影装衣ッ!!」
「概念武装…不倶戴天の大鉈…」
怪人の奥の手、概念武装。
契約怪異の概念を拡大解釈し、権能に落とし込み、身に纏う。
この世は影に満ちている。
月明かりに照らされ、日の明かりに照らされ、
影はより一層、暗く、深く――深影へと堕ちてゆく。
彼はその“深き影”を身に纏う。
故に、彼は“何処にでもいる”のだ。
不倶戴天、倶に天を戴けぬ者を指す。
鬼にとって、その目の前に立ち塞がる存在は全てが不倶戴天。
鬼は金棒で不倶戴天の存在を砕き壊すだけでは物足りず、鬼はそれを研いでいった。
研がれた金棒はいつしか、大鉈へと変わり果てた。
不倶戴天を壊して裂いて、殺し尽くす。
鬼の所業はここにあり。
「「行くぞ――【龍】!!」」
【鬼】と【影】、そして【龍】。
ここに、血戦が始まる。
ご精読ありがとうございました
ルーシー!!
アベル来るな!




