第十五話 悪辣龍巣血戦 その一
「ルーシー!!」
彩花は連れ去られたルーシーを追い、ついにエッフェル塔へと辿り着いた。
そこに聳えるのは、鋼鉄の塔ではなく、結晶に蝕まれた“龍の巣”だった。
結晶に包まれた塔の上には、天を覆い尽くさんほど大きな翼を持ったドラゴンがこちらを見下ろしている。それは、絵本や神話に語られる“龍”そのものだった。
しかし、鱗は金属のように光を放ち、翼の一振りで空が軋む。
それの威圧感は分体の非ではない。それは“悪辣なる龍”その本体なのだ。
そして、その塔の下の方には絶え間なく空から飛来する龍の分体を切っては飛ばし、貫いては飛ばす影神さんと八上さんが居た。
「もう、二人が来ている………じゃあ、アイツは!!」
ルーシーを持つ龍がそのドラゴン………【龍の怪異】に向かっていくのが見えた。
「やめろ!!その子は、連れて行くな!!」
身体中からいくつもの花の蔓を出し、辺りにある飛び出した結晶に巻き付ける。
「今行くよ!!」
その蔓を全力で巻き取り、自分を矢のように発射した。
彩花は腕を引き、空を裂くように叫ぶ。
「――来い!万花万蕾の太刀!」
空間が揺らぎ、無数の花弁が集まり、一振りの桃色の刃が形を成す。
「切れろ!!」
ルーシーを持った分体を目掛けて、その刀を振るう。
『花…か』
瞬間、背筋が凍りつく。
眼前に【龍の怪異】の爪が迫っていた。
「え」
龍はただ、埃を払うように手を振った。
次の瞬間、彩花の体は裂かれ、視界が天地ごと裏返った。
体の輪郭が薄れていくなかで、【龍の怪異】の元へルーシーが献上されるのが見えた。
「ルーシー………」
体は四散し、デパートの方向から飛んできた【人の怪異】のドロドロと融合し、意識を手放した。
ーーーーー
ガタガタと揺れ、頭がブンブン振られている。
吐き気と頭痛が身体を襲う。
「ーーーぅぅん…」
「サクラ?目を覚ましたか」
ゆっくりと目を開けると、俺は八上さんに抱えられていた。
「戦えるか?」
「はい!」
降ろしてもらい、辺りを見渡す。
「ルーシーは?」
「慎也がなんとかやってるよ。」
そう言って八上さんは指を刺す。
その先には、たった1人で数多の龍を穿ち、小脇に1人の女の子を担いだ影神さんがいた。
「ルーシー!!」
『よかった…』
「今はまだ、【龍の怪異】の特性がわからない。だから、一旦殴れ!そしたら、見えてくるものがある!」
そう言い、八上さんは大剣を担いで影神さんのもとへ向かった。
ルーシーはあの2人がどうにかしてくれる。
今の俺、私がすることは
「『……年貢の納め時だ。ぶち殺してやるよ、トカゲ野郎!!!!』」
塔の上で八上さん、影神さんを見ていた龍の視線が向く。
その圧は絶対的な強者であることをものがっているが、俺たちはここで負けてられない。
「『死んで詫びろ!この、パリに!!』」
足に力を込め、空高く飛び出す。
進路を防ごうと分体達が身を挺して突進してくる。
「『来い!万花万蕾の太刀!!』」
手を天に翳すと、桃色の刀身を煌めかせながら、分体達を貫きながら、この手に収まる。
「『文字通り、この都市を、花の都に変えてやるよ!!』」
空中で縮まり、力を貯める。
手の中に全ての力を集め、七色の球にし、天高く投げる。
「『花天!!』」
七色の球は空で花火のように炸裂し、火花の代わりに花弁を降らす。
花弁は地面や空を飛ぶ龍の分体、塔の上に鎮座する【龍】に降り注ぎ、触れた場所を花畑に変えていった。
「『花よ!龍を貫き、我が養分とせよ!』」
地面に咲いた花達はその蔓を伸ばし、龍達に突き刺す。
龍に咲いた花達は根を深く伸ばして、核に根を張る。
ドクドクと身体中にエネルギーが入り込んでいく。それと同時に、龍達は萎み、灰となって消えていった。
しかし、【龍】はそれに意も介さず、花をその翼の羽ばたきで吹き飛ばした。
「これで、充分だ!!」
目の前で一輪の紅い花が咲き、枯れ、一つの果実が身を結ぶ。
その果実を一飲みし、全てを得る。
身体を巡る龍達の力。その全ては分解され、我が身に適応される。
これはそう、
幻想の炎
この世ならざる炎
久遠に凍結する大地をも溶かす炎!!
掌の上に一粒の火の粉が落ちる。
それを握りしめ、息を吹きかける。
拳の中で炎が暴れ、溢れ出す…
拳を開き、その炎を解放する!!
「『龍炎!!』」
放たれた炎は弧を描きながら【龍】へと迫る。
【龍】は微動だにせず、その炎を受け止めた。
爆発が起き、爆風が辺りを吹き飛ばす。龍炎を放ったサクラ達も例に漏れず、吹き飛ばされる。
「………ちっ」
爆煙が晴れた後、塔の上には無傷の【龍の怪異】が鎮座していた。
【龍】は言葉を発さず、ただ、あくびをするように翼を広げ、空気を吸った。
「なん…」
【龍】の胴体が赫く光りだす。
「『まずい!!』」
ーーー龍炎ーーー
とてつもない熱量と爆風、辺り一体は光に包まれ、俺たちは再び意識を途切れさせた。
ご精読ありがとうございました
ルーシーは!?八上さんは!?影神さんは!?




