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第十二話 そして、塔へ

 「『クソガァァァァ!!』」


 「ルーシーィィィィ!!!」


 瞬く間にルーシーを掴んだ龍は彼方へと消え去った。

 地面に叩きつけられた俺はすぐに立ち上がり、エッフェル塔の方へ走り出す。


 しかし、後ろのショッピングモールでは煙が悶々と立ち込め、悲鳴が響き渡っている。


 「おねにいさん!!ルーシーを!」


 『サクラ!!どうすんの!?』


 後ろの大勢…前の友達…


 どっちを取る?


 なにか、いい方法は?


 『まって…ある…もしかして…』


 「え?」


 『変わって!!』


 「わかった…」


 意識が移り変わり、彩花が前に出る。

 

 心臓の位置に手を差し込む。

 俺には心臓がなく、血肉の代わりに黒いドロドロが俺の体を構築している。


 つまり、俺の身体は…


 「私たちは、こうすれば!!!!」


 メキメキと体が音を立てて、裂けていく。


 俺と


 私に


 「マジか…」


 「やってみるものだね!」


 手を見ると、少し、ブレが生じていた。


 「時間制限があるみたいだ」


 「了解!!じゃあ、私がルーシーを!」


 「俺が、みんなを!」


 【人の怪異】と【花の怪異】は背中合わせになり、それぞれ別の方向へ走り出した。


 「アベル!お兄ちゃんに任せておけ!」


 「お姉ちゃんにもね!」


 その時のアベルの顔は、10歳相応の可愛い綺麗な笑顔だったよ。


 ーーーーー


 ショッピングモールの前、広場の真ん中にはさっきの龍人が立っていた。


 《いいのか?》


 「喋れるのか!?」

 

 さっきの龍人と明らかに違う。コイツは…なんか、年季が入っているような…


 《この身体にようやく馴染みだした…というのに…あの男を想起させる…男を…いや…あれを殺せばそれで決別の儀になる…そうすれば…!!》


 想起させる?誰を?


 まて、男?まさか…


 「アベルか…」


 《あぁ…そんな名前だったな…》


 「お前は何者だ!!」


 《アルベルの弟…アベルの叔父…名前は…そう…アルフォンス…》


 嘘…だろ?


 《しかしなぁ…お前のお仲間が…龍人を…悉く殺してくれたおかげで…俺が最後の…龍人だ…》

 

 「最後の龍人…じゃあ、お前を倒せば、あとは…本体だけか!!」


 「変身ッ!」


 足元から黒いドロドロが這い上がり、体を包み込む。

 漆黒の身体に、赤い瞳。


 「かっけぇだろ?」


 《禍々しいの間違いだろ。》


 その瞬間、眼前から龍人が消える。


 「深淵の手」


 身体中から黒いドロドロが性質変化した手が溢れ出し、一瞬にして四方を薙ぎ払う。

 木を薙ぎ倒し、コンクリートの足場を崩し、壊し、吹き飛ばす。

 それでも龍人は捕まえられない。


 「はぁ!?」

 

 《掻い潜りやすい。隙だらけだ。》


 顎下に龍人が迫っていた。


 《砕けろ》


 アッパーが放たれ、顔が粉砕する。

 大きく後ろに吹き飛ばされ、地面に倒れる。


 《柔らかい…》


 しかし、俺は死なない。


 死ねない。


 《なんだ…その身体…》


 飛び散った黒いドロドロが集まり、頭を再構築する。


 「理論上、俺が死なないのは分かっていたんだけど…怖くて試してなかったから…めちゃくちゃビビったァァァ!」


 《どうすれば死ぬ?》


 「試してみろよ。」


 《早く終わらせよう…》


 龍人が地面を踏み締め、飛ぶ。

 足を上にあげ、蹴りの体制を空中で作り、迫る。


 「来いよ」


 《死ね…》


 蹴りを腕で受け止めようと構えるが、腕は蹴りに負け、吹き飛ぶ。


 「捕まえた」


 腕が吹き飛んだ瞬間、ドロドロが瞬時に再構築され、龍人に絡みつく。


 《ふむ》


 「空の旅を楽しもうぜ」


 龍人を抱えたまま、空に飛び上がる。


 《空は俺らの狩場だぞ》


 龍の分体が何体か現れ、襲いかかってきた。


 「武器はお前だ」


 龍人を振り回し、分体たちにぶつけ、打ち砕いていく。


 「おちろ!!!!」

 

 遠心力によってスピードが上がったまま、龍人を地面に叩きつける。


 龍人が地面にめり込む。


 「性質変化!!剣!!」


 腕が剣のように鋭利になる。


 「ラァァァァァァ!!!!」


 水面に飛び込むように、腕を地面に向けて、急降下する。


 《グッ…》


 龍人は上を向き、眼前に迫るサクラを目視する。

 

 《禍々しいな》


 「ァァァ!!」


 龍人は咄嗟に腕を交差させて防御体制を取る。


 しかし、その防御も虚しく腕が龍人の体を貫く。


 「裂けろ」


 突き刺さった腕を振り上げて、龍人の体を切り裂く。


 《ァァァァァァ…ァァァ》

 

 断末魔はゆっくりと掠れていき、やがて、龍人は死に至った。


 あとは、人の救出…


 しかし、身体を構築するドロドロは限界を迎えかけているのか、足元がふらつく。


 「くっ…時間をかけすぎた…」


 膝をつきながらも、空を旋回しながらコチラを伺う分体達を睨む。

 

 「少なくとも、お前達だけは!!」


 体を四散させ、数多の腕に変質させる。


 ーー死ね!


 先端を鋭利に尖らせ、龍達を貫く。


 全ての龍を貫くと、全ての黒いドロドロは、吸い込まれるようにエッフェル塔…彩花の方向へ飛んでいった。


 ーーーーー


 嘆き、叫べ


 汝らに希望など無いのだと


 汝らに絶望など許されぬのだと


 走り、逃げろ


 汝らに逃げ場などない


 汝らに明日は来ない


 我は氷を穿つ


 我は死を弄ぶ


 我は夜を墜す


 我は罪を嘲る


 我は月を穢す


 我は花を殺す


 我は龍


 今、翼は広げられた。


ご精読ありがとうございました

誤字脱字などありましたら報告お願いします


アベルは父を殺した龍人と皆を襲う分体達を蹂躙し、エッフェル塔へ向かったサクラと幼馴染であるルーシーを助けに向かった彩花に対してどのような感情を抱くのでしょうか

少なくとも、彼の中での英雄像は固まりだしたようです


怪異の力を振るう英雄達をアベルはどこかで憧れているのかもしれませんね。


守ると誓ったくせに龍に守護対象を連れてかれてるようじゃまだまだですし

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