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第九話 凱旋門の戦い その二

 迫り来る分体の群れを斬り伏せ、吹き飛ばし、括り付け、広場に出た。


 目の前には荘厳で美しい結晶に覆われた凱旋門が聳え立っていた。


 そして、そのすぐそばにたった一つの影があった。


 成人男性ほどの背丈で、鱗で生成されたであろう服を纏い、そのフードが顔に縫い付けられていて、不気味な程に血が滲んだ歯が剥き出しになった口だけが見える。


 「" 龍人"」


 そう呟くと、龍人は明らかに俺の方を向いて、不気味な口を開いた。


 《こ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛》


 叫びすぎて声が枯れた人の様に、ガラガラな掠れた声でただそう言った。

 その言葉が謝罪を意味することを俺は知っているはずなのに、ソイツはまるでそれを知らないかの様に挨拶の様に吐き出した。


 ふと、気がついた。


 服だと思っていた鱗は、纏っていないと。


 「縫い合わされて…」


 『ツギハギ…』


 人の誘拐…分体とは違う…怪人なんてたいそうなモノじゃない…


 「『やっぱり、そうなんだ…』」


 今、俺の前に居るのは、人間だ。


 分体と繋ぎ合わされて、


 無理やりそこに立たされている…


 「『…今、殺してやる(たすけてやる)よ』」


 足に力を込めて、迫る。


 《た゛す゛け゛て゛》


 龍人が腰に手を突き刺し、骨を引き抜く様に、なにかを取り出す。


 「『斬り殺してやるよ!』」


 大きく振りかぶり、脳天目掛けて刀を振り下ろす。


 が、何か分からない武器のようなモノで防がれる。


 ポタ、ポタ、とその武器から血が滴り落ちる。


 「『っ!?』」


 間近で見て、言葉を失ってしまった。


 その武器は明らかに人の骨だ。


 《こ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛》


 呆気に取られた瞬間、腹部を蹴られ、背後に吹き飛ぶ。


 「くっ」


 体の黒いドロドロを手の形に変質させ、地面のひび割れにその指をかけて力を込める。すると、鯉のぼりの様になるので、ある程度威力を殺せたのを確認した後、すぐに手を離し、着地する。

 

 《こ゛め゛ん゛な゛さ゛い゛》


 膝をついていると、龍人がそう言いながら、鋭利な骨の切先を向けながら飛びかかってくる。

 足にドロドロを集め、ヘッドスピンの要領で飛びかかって来た龍人を蹴り飛ばす。


 「ーーはぁ…はぁ…」

 

 遠くに吹き飛んだ龍人が曲がっちゃいけない方向に曲がった首と足を力技で戻しているのを見た。


 「人の尊厳が完全に壊されている。」


 『こんなにも悪辣な事しやがって!!ぜぇったいに許さない!』


 すると、龍人からバキバキ、ビキビキといったような音が漏れ出しその背中から、禍々しい発展途上な龍の翼が現れた。


 《た゛す゛け゛て゛》

 

 翼が動き、上昇を始めるが、翼やその根本からドクドクと血液が流れ落ちる。


 《た゛す゛け゛て゛》


 痛みに悶える様に龍人は空に昇る。


 「アイツ、なにを…」


 『もしかして…』


 龍人の手のひらに紅く美しい光が灯る。


 「…龍炎…!?」


 《死にたくない!!!》


 ボールを投げつけるように、球状の炎が放たれ、もの凄い勢いで迫る。

 その火球をよく見て、太刀を構える。


 「これが、野球なんだろ!!」


 火球がぶつかる直前に太刀を払い、火球を真っ二つに切り伏せる。


 爆発する。


 吹き飛んだ


 「ぐっ…」


 地面に寝転がり、空を見る。


 悶え苦しみながら無闇矢鱈に火球を放つ龍人が見えた。


 「あの言葉、ごめんなさい、とか、助けてとか、アレってさ…あの人の最期に出した言葉なのかな?」


 『きっと、それを反復させているんだ。』


 「胸糞悪い。気持ち悪い。悍ましい。」


 指を胸に突き刺す。


 「ガァァァァ!!」


 身体を裂く。


 中からドクドクと黒いドロドロが溢れ出し、それが地面に滴る。


 「すぐに、終わらせよう。」

 

 身体中に黒いドロドロが纏わりつき、漆黒の怪異と成る。


 そして、太刀を握りしめ、力を込める。すると、太刀から花の根が伸び、身体に入り込んでいく。

 

 身体から花が咲き、変質する。


 「これは…なに形態?」


 『花と人の合体形態…いや、アイアム……ヴェ


 「それは、やめておこう。」

 

 さて、まず、アイツには目がない。


 音の反響とかそういうので俺を感知している筈なんだ。


 火球の爆発音で自分の視覚をダメにしている時点でコイツは欠陥品だ。


 そもそも、自分の炎に焼かれて、身体変化で痛み悶えている時点で、さっきの分体といい、あまりにも…


 「よし。」


 新たに火球が放たれ、地面にぶつかり、爆発する。


 その瞬間、爆音が響き渡る。


 それに合わせて飛び上がる。


 爆音に耳が塞がれて、龍人は俺に気づかない。


 「今、引導を渡してやる。」


 龍人の首に太刀が触れる。


 その瞬間、龍人は、優しく微笑んだ。


 「あとは、任せろ」


 ーーーーー


 龍人の最期は呆気なかった。


 龍人と比べて俺の力が強すぎた…


 『違うよ…"彼"は…自分を抑えていたんだよ』


 ……どうしてそう言える?


 と、言いたいが…


 ふと、目の前の結晶に包まれた凱旋門を見上げる。


 「これを壊す。」


 懐から爆弾を取り出し、起爆準備ボタンを押す。


 「壊れろ」


 大きく振りかぶり、凱旋門に向けて爆弾を投げる。


 爆弾は結晶に刺さる。


 「…さぁ、行くぞ。」


 凱旋門を背に、俺はエッフェル塔へ向かう。


 『待って!!』


 走り出した途端、彩花に無理やり引き留められた。


 「なに!?」


 瞬間、爆弾が爆発し、結晶が飛び散った。


 咄嗟に振り返ると、結晶だけが壊れ、散り、凱旋門だけがそこに残っていた。


 『なんか、ヤバいのが来るよ…』


 飛び散った結晶が揺れ、飛び、一つに集まる。


 "殺した"龍人の死体までもが、取り込まれていく。


 「…」


 結晶で構築された龍が現れた。

 

 「これが本命か」

ご精読ありがとうございました

誤字脱字などがありましたら、報告よろしくお願いします。


龍人の概要(昔のノートに書いてあったのをさっき見つけて来ました…)

【龍人】

龍巣から生まれ出でた異形の分体。

人と同じ頭、腕、足を持つが、その構成物質は龍の分体と同様のものである。

人の言葉を発する事は出来るが、そこに意味はない。

素体となっているのは龍巣に持ち帰られた人であり、発する言葉はその人が最も強く発した言葉である。

怪異と人が魂を接続し契約した怪人とは違い、怪異と人を物理的に無理やり混ぜ合わせた存在。故に、血が通い、死に絶える命がある。

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