第八話 凱旋門の戦い その一
ルーヴル美術館から出て、シャンゼリゼ通りに辿り着いた。
「さっきの八上さんの言葉、どういう意味だと思った?」
『これから何かが起こるみたいな言い回しだなぁと思ったんだけど…』
「そうだよな…まぁ、頑張るか」
一本道の先に見える巨大な結晶構造体。
あれが凱旋門。
「行くぞ!!」
シャンゼリゼ通りを駆け抜ける。
前方から何体もの分体が迫り来る。
「彩花ァァァ!!行くぞォ!」
『おう!!』
「『来い!万花万蕾の太刀!!』」
空の彼方から桃色の光が迫り、それが手に収まる。
万の花の力が宿ったその刀を振る。
シャンゼリゼ通りはその一振りで美しい花畑と化した。
「花よ…龍を貫け!」
ただひたすらに走り、花畑の花を操作することで龍の分体を穿つ。
しかし、分体の中には異様に硬い奴が居て、花だけでは倒せなかった。
「なんだコイツ!ありえん硬いぞ!?」
眼前に現れた他の個体よりも硬い分体は俺の目の前に鎮座した。
「なんだ?」
始めてまじまじと見た分体の姿。
眼はついているが、左右不規則で、歪。
口はなく、ゴツゴツとした角が生え、
まぁ、本当に歪なんだ。
「なんのようだ?」
意味はないだろうが、語りかけてみる。
案の定、返事はなく、どこから溢れているのかわからない呻き声が響き、異様に鋭利な爪が眼前に迫った。
「あっぶねぇな!!」
反射的にその爪を花の蔓と太刀の刀身で防ぐ。
「重い…」
すると更にその逆側の腕が側面から襲いかかってきた。
「ぐっ!?」
腹部に爪が食い込み、建物に打ち付けられる。
「ってぇ…」
『大丈夫!?』
そっと、爪が食い込んだ腹部を見る。
グズグズと黒いドロドロが蠢き、体を修復していく。
「どう倒せばいい?あのクソ硬いやつ。」
『無視して進んでもいいかな?と思ったけど、龍人との戦いで邪魔をされたらどうしようもない…』
「ここで倒すしかないか。」
『でも、どうすれば勝てる?』
「【花】の力だけじゃなく、【人】の力を全力で解放する。」
俺は、刀身で体を切り、黒いドロドロをいつもよりも溢れ出させる。
ドロドロが体を包む。
「最初の影神さんの攻撃を見て、思い浮かんだ。」
『おー!なんて名付ける?』
「"人身侵食"」
太刀を握り、ドロドロで覆われ強化された体は崩れかけた建物から飛び出し、外で旋回する分体を見据える。
「"民衆の手"」
黒いドロドロからいくつもの人の手が溢れ出し、空に向かって伸びていく。
分体はそれに気づき、爪と翼で手が掻き消される。
しかし、そんなのはお構いなしに手は再構築され、龍の分体を掴む。
「落ちろ!!」
グッと力を込めて分体を地面に叩きつける。
その反動で空に打ち上がる。
『シーソー!!!?!?』
「行くぞォォォ!!」
漆黒の泥に包まれた身体は上空で体勢を整え、太刀を握り直す。
桃色の刀身が煌めく。
『"桜花剣嵐"!!』
刀に桜の花弁が纏わりつく。
「桜…いいチョイスだ!」
地面に近付くにつれて、速度が上がる。
そして、俺の周りに風が起こり、花弁が舞い上がる。
旋風が吹き荒れて、眼前に腹を天に向け倒れる分体が見えた。
『「オラァァァ!!」』
切先を分体に向け、その腹に太刀を突き刺す。
竜巻のように舞う花弁が刃のように分体の体を抉り、切り取っていく。
そして、そのまま分体の体を切り裂くように切り上げる。
ブチブチブチと、音を立てながら分体の体が切り裂かれる。
ーー!!!!
分体から声にならない声が響き渡る。
「よし!」
しかし、分体は消えることなく、ただひたすらに悶え苦しみ、のたうち回る。その勢いはとてつもなく、俺は吹き飛ばされてしまった。
「なんだ…?」
分体はその大きな翼を広げ、空で暴れ回る。
『なんか、おかしくない?』
暴れ回る龍は、痛みで悶えているというか…
「息苦しそう…?」
口のない顔が悶えるようにブンブンと震え、口があるはずの部位に淡い光が灯ったように見えた。
「あれ?」『おかしいね』
ビキビキと音を立てて、分体の顔が裂ける。
そして、光が一瞬消え、裂けた部位から熱光線が放たれる。
『避けろォォォ!!』
急いで横の建物に避難する。
道が光り、融解し、燃え盛る。
「うっそだろ…」
『進化したってこと…?』
そして、分体は暴走した様に熱線を放ち、あたりを壊していく。
「どうしよう…か…」
今いる位置もいつ熱線に焼き消されるか分からない。
早急になんとかしなければ…
『あーいうビームの攻略法、知ってるよ。私に任せて!』
「わかった。」
体の主導権を彩花に受け渡す。
「うんうん、ちょうどいいね。」
あたりを見渡すと熱線で切断された大きな結晶体が見えた。
「花よ…咲け」
結晶体に花の蔓を絡める。
よし、動くね…
『任せたぞ』
「うん!」
道に飛び出す。
空には旋回しながら熱線を放つ分体
「龍の分体!!」
声をかけると、分体はコチラを見て光を顔の裂け目に集まる。
「今だ!!」
結晶を飛ばし、分体の顔の裂け目にめり込ませる。
龍の分体は熱線を放てず、その顔が吹き飛ぶ。
分体が落ちる。
「確実に殺す!」
私は足に力を流し、飛ぶ。
「じゃあね!!」
太刀の刀身が己の熱で焼き爛れた分体の体を切り裂く。
そして、分体は灰になり、消えた。
「………すごいね。彩花」
『えっへん!』
俺は凱旋門を見据える。
「行くぞ。」
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龍の分体は月の分体と違い、成長します。
生まれたてが一番弱く、時間を重ねる毎に強くなっていきます。




