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第六話 アベルとルーシー

 「あ、あの…」


 そこにはオドオドした10歳くらいの男の子と女の子が立っていた。


 「なんでこんなところに居るの?だめだよ!危ないよ!」


 八上が二人に近づいてそう言う。


 「ご、ごめんなさい…冒険のつもりで…」


 「私も…ごめんなさい…」


 二人がポロポロ涙を流しながら頭を下げる。


 「えっと、君たちのお名前は?」


 影神が問いかける。


 「僕は…アベル」


 「私は、ルーシー」


 「俺は、八上裕也だ。」


 「影神慎也」


 「水越サクラと…『新木彩花!』」


 アベルとルーシーは彩花の声を聞いてポカンと口を開いて、目を白黒させた。


 イケメンの顔から可愛い声が出たらびっくりするもんね


 『可愛い声だなんて!そんなことあるけどさぁ!』


 「あー、そうだ!これから俺と慎也は冥界再構築の為の偵察に行くんだよ。だから、アベル君とルーシーちゃんを居住区まで送ってあげてくれ!」


 「え?」


 「ほら、これ、地図だから。読めるよね?」


 そういって影神に手渡された地図を見て、頭の中の彩花が唸った。


 「え、今の私たちの場所は?って言うんですけど。彩花さんが」


 八上と影神は頭を抱えて現在地を指差した。


 「サクラ…がんばってくれ。」


 「はい…」


 こうして、俺達はルーヴル美術館からショッピングモールまで歩き出した。


 距離はかなり近いため、ちゃっちゃと終わらせたい感はある。


 「アベルとルーシーは兄妹?」


 「違います!僕とルーシーは幼馴染です!」


 「そうなんだ!」


 雑談しながら結晶が交差する道をゆっくりと進んでいく。

 

 「お兄さん達?って、怪人なんですか?」


 「そうだよー怪人、知ってるんだね」


 「はい!僕達がこうして生きていられるのも、怪人さん達のおかげなので!」


 「八上さんと影神さんのことかな?」


 「そうだったみたいですね…」


 にしても、ルーシーは喋ってくれないな…


 『私も話したーい』


 彩花と入れ替わる。


 「こんにちはー!彩花だよ!元気?」


 「えっと…」「あ、はい!」


 「ルーシーちゃん?とアベルくん?は、何歳なの?」


 「僕は、11歳です!」

 「わ、私は、10歳…です」


 やっぱり、そのくらいの年なんだ…でもやっぱりそれにしては礼儀正しいと言うか、しっかりしているというか…


 『そうならざるを得なかった…そういうことじゃないの?この環境下では、さ』


 空を見上げると数体の龍の分体が飛んでいた。


 「君たちがしっかりと子供として生きていける世界に戻すから…俺たちに任せてよ」


 「はい!」「ありがとうございます!」


 こうして俺達は人々が住むショッピングモールに着いた。


 ーーーーー


 「アベル!ルーシーちゃん!」


 ショッピングモールに入ったらすぐに、アベルのお母さんが迎えに来てくれた。


 「どこに行ってたの!?お願いだから、どこにも行かないでよ…もう、やめてよ…」


 お母さんの瞳から涙が溢れ、それに釣られるようにアベルとルーシーも泣き出した。


 確かに二人は大人びているけど、まだまだ10歳。

 そんな子達がこの世界で居なくなるなんて、気が気じゃないなんて言葉で表せない程、心配だっただろう。


 本当に、二人が【龍】に襲われなかくてよかったよ…


 「送ってくださったんですね!ありがとうございます!ありがとうございます!」


 「いえいえ、僕は僕の役目を全うしただけなので」


 すると、お母さんは俺の目を見て震える。


 「…怪人…さんなのですね…」


 「え、ええ。そうですけど」


 「でも、見たことない怪人さんですね」


 「あー、さっき来たばかりで…」


 「え!?外は、もう大丈夫なのですか!?」


 そう聞くお母さんの顔は必死で、その瞳の奥に希望が宿っている。


 でも、


 「いいえ…まだ、世界は壊れています。」


 「そう…なんですか…」


 明らかに落胆したな…でも、そりゃそうだよな。

 ちゃんと100年が流れていた月光帝国では、花神による冥界侵食の前の世界は旧世界と割り切られて、今の世を生きる人たちで溢れていた。

 まぁ、旧世界を知る人がいなくなったから。というのが大きいんだろう。

 だからこそ、20年程度しか経過していないこの都市では旧世界を知る者だらけで、今もまだ、その世界に戻る事を願っている。


 なら、俺がかけるべき言葉は、


 「でも、俺が来たからには【龍】を倒し、この都市を解放します。だから、希望をなくさないで下さい。この、二人のためにも。」


 俺は、アベルとルーシーを見てそう言った。


 お母さんも、二人を見て、拳を小さく握った。


 「分かりました…信じてます。」


 「任せてください!」


 「それはそうと、お腹空いてませんか?ご飯、食べたいってください!」


 「『わーい!』」


 ショッピングモールの中は人でごった返していて、それぞれの区分けされた店の中がいくつかの世帯の家となっていた。


 「ここが、私たちの家なんです」


 ショッピングモールの隅の店の中、贅沢にもその全てがアベル達の家らしい。


 「ご飯の準備するので、子供達を見ててもらえますか?」


 「『了解です!』」


 俺はアベルとルーシーと手を繋ぎ、ショッピングモール内を見て回った。


 かつてのモールとしての機能はほぼ残っていないが、明らかにアパレルショップ跡の店の中に食べ物屋さんがあったりしてて、なかなか楽しいショッピングが出来そうだった。


 「ここの通貨は、どんなの?」


 「昔のままなんですよ。」


 ……形だけが残った感じか。

 見た感じ、商品に値札も付いていないし、金を受け渡す際にも値段を言っていない。


 形式だけってことか…それに意味はあるのか?


 『まだ、昔を忘れられないんだよ。みんなが。』


 「そんなもんか…」


 ちょうど良い所にベンチがあったので、3人で座った。


 「アベルはさ…この世界をどう思うの?」


 「僕はこの世界で産まれて、育ってきた。だから、この世界に好きも嫌いもありません…でも、この世界でお母さんは笑えない…だから、お母さんが笑える元の世界に戻って欲しいとは…思います」


 「ルーシーは?」


 「私は…産まれた時にはお父さんがいなくなってて、お母さんとアベルのお母さんとお父さんに育ててもらってた。だけど、お母さんとアベルのお父さんは私たちが5歳の時に、龍に食べられて…」


 ふと、アベルの顔を見ると、アベルは複雑そうな表情を浮かべていた。


 アベルは自分の口ではお父さんの話をしなかったわけだが、それは単に忘れたい出来事だからなのか…とも思ったが、よく考えてみると、ルーシーのお母さんとアベルのお父さんが食われた日が一緒なら、アベルのお父さんの話をすれば、ルーシーがお母さんの事を思い出して涙を流してしまう。そう思ってアベルは、自分のお父さんの話をしなかったのでは?


 とか、そんな深読みするのはやめておいた方が良いのか?


 『ううん、もっとこの世界を咀嚼していこう。そして、世界を救う志を高めていこう。絶対に、救うんだって、心に誓っていこう』


 そうだよな。


 ルーシーが話を続ける。


 「だから、私はこの世界が大っ嫌い。だから…たすけて…ください…」


 涙を流すルーシーにアベルが寄り添う。


 この子には、アベルが必要なんだな。


 「アベル。俺は、この都市を解放する為に戦う。だけど、その為の戦いの最中で、一人一人を守る事を約束できない。だから、ルーシーとお母さんはお前が守れ。もう、失うな。」


 アベルは静かに頷いた。


 11歳の子に背負わせるには大きすぎるモノか?


 『そうかもね』


 「さて、ご飯の準備が出来たんじゃないか?行こう」


 「はい」「うん…」


 「ごめんね、変なこと聞いた。」


 「大丈夫です!覚悟、決まりましたから!」


 本当に、この子は…


 そうして、アベルのお母さんの作った美味しいご飯を食べて俺達はルーヴル美術館へ帰った。


 ーーーーー


 「ただいま帰りましたー」


 どうやら、まだ二人は帰っていないらしい。


 「休むかー」『そうしよー』


 俺達はアルトライの寝室に入り、眠りについた。

ご精読ありがとうございました!

誤字脱字があったら、報告お願いします


アベルとルーシーはとてもいい子です

この子達の為にも早急にパリを解放しましょう!

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