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第五話 パリ

 花の冥界は静かで、ただ花弁がハラハラと舞っているのが見えるだけだった。


 「一面の花畑…本当にこの世界には海があったのか?」


 『あったよ。そして、これからそれを取り戻すんだ。』


 「それは楽しみだ」


 月光帝国を出発してから16時間か17時間。


 冥界の境界線が見えてきた。


 「よし、冥界の壁に穴を開ける!」


 『いくよ!』


 アルトライの砲門が開き、冥界の壁に光線が放たれ、その壁に穴が開く。


 「いっけぇ!!」


 俺達はパリへと侵入した。


 ーーーーー


 「お?壁に穴が開いたな…」


 「アルトライだ!迎えにいくぞ!」

 

 ーーーーー


 記録で見たパリの街並みは見る影もなく、結晶に包まれた醜くも美しいパリがそこにあった。


 怪異譚……act.2


 悪辣龍巣都市 パリ


 「なんだ?あれ」


 遠くに聳え立つ結晶の塔が見えた。


 『座標的に…エッフェル塔…だね』


 「あれが!?ていうか…」


 レーダーにはアルトライの周囲に数多の敵性反応が近づいているのが見えた。


 「なに!?これ!?」


 『敵だ!!』


 甲板に出ると、夥しい量の歪な龍がアルトライを囲むように旋回していた。


 「これが、【龍の怪異】!?」


 『違う!分体だよ!』


 しかし、【龍の分体】は旋回するだけでコチラに攻撃を仕掛けてこなかった。


 「なんだ?なんでだ?」


 『分からない…けど…』


 その時だった。分体の群れの一角が一瞬にして落ち、分体達は何かに向かって攻撃を開始し始めたのだ。


 「迎えにきたぜ!」「いくぞ!!」


 迫り来る龍の背を飛び移り、アルトライに向かってくる人影が二つ。


 『あ!あ!あ!あー!!!』


 「まさか、あの人達が!」


 二人は甲板に降り立ち、俺に近づいてきた。


 「…あれ?君は誰?」


 「えっと…」


 「あー!俺の名前は"八上裕也"!【鬼の怪人】…よろしくな!」


 八上は手を差し伸べてきた。


 「はい!よろしくお願いします!八上さん!俺の名前は水越サクラ!【花の怪人】です!」


 「やたらと感嘆符が多い挨拶……ん?待って…水越?【花の怪人】?え?わからない…頭が…頭がァァァ!!」


 「落ち着け…あー、俺の名前は"影神慎也"だ。よろしくな」


 影神とも握手を交わし、話を続けた。


 「まず、【花の怪人】ってところから解決させてくれ。」


 『私が契約を交わしました!彩花です!』


 「は?彩花!?え!?無理無理無理!!わかんない!分かんなくなってきた!!」


 影神と八上が二人して頭を抱えながらのたうち回る。


 「この人達は…?」

 

 『こんな人達だっけ?』


 そうこうしているうちにアルトライは完全に【龍の分体】に囲まれてしまった。


 「話は後だ!慎也!」


 「分かっている!やるぞ!」


 八上は二本の大剣を構築し、軽々しく振り回し、分体達に向かって飛び出した。


 影神は自分の体に影を纏わせ、飛び散るように消えた。


 「鬼に金棒!慎也に裕也!俺達にかかればお前ら如き、一網打尽よ!」


 八上が高速で回転し、手当たり次第に分体を切り裂いて、壊して、打ち上げていった。


 打ち上げられた分体の死体や体の一部はその下に濃い影を生み出した。


 「『貫け』」

 

 ありとあらゆる影から漆黒の棘が飛び出し、全ての分体を貫き、殺した。


 「す…ご…」『これが…』


 「すごいだろ?」


 唐突に背後から影神の声が聞こえ、驚きながら振り返ると俺の影からニョキっと生えてきた。


 「これが、俺達。これが、お前達の味方だ。」


 「さて、安全なところまで連れていってやるよ!」


 八上は大剣を分解し、アルトライの中に入っていった。


 「俺たちの拠点に連れて行く。詳しい話はそこでしよう」


 俺たちは二人の拠点近くまで連れていってもらうことになったのでした。


 ーーーーー


 「なるほど…」


 影神が顎に手を当てて考え込む。


 「しかし、本当に水越さんの孫とはねぇ。」


 八上は俺の顔を覗き込むように見てきて、目を細める。


 「血は繋がっていないですけどね」

 

 「繋がっていたら大問題だな…とくに夢結さんが」


 『私もそれ思いました』


 「だろ?」


 にしても、ここはどこなんだ?変に綺麗って言うか、なんていうか…


 『ところで、ここ、100年経っているにしては綺麗すぎません?ルーヴル美術館ですよね?ここ』


 「よく気がついたな」


 『まぁ…小さい頃来たことあるので』


 「そこら辺の話は慎也がしてくれる。俺がしてもいいけど、【龍】については慎也の方が一枚上手でな」


 すると、影神は俺たちの周りを歩きながら話を始めた。


 「まず、この国では100年程の年月は経っていない。精々、20年だ。その理由として、【龍】が用いる結晶…"龍結晶"がある。アレは、【龍】が巣のために用いる物質のようなんだが、あの結晶にはどうやら時間の進みを遅くする効果があるようなんだよ。どんな原理かは分からないけどね…まぁ、とにかく、あの結晶に包まれたこの都市では、冥界の外と比べて時間の進み方が極端に遅い。だから、こうして結晶の下敷きになっている美術館はあの頃のまま、綺麗に保存されているわけだ。」


 なるほど…さっぱりわかんねぇや。

 

 「わからねぇって顔してるな?まぁ、いいけど」


 「とにかく、この都市は20年しか経っていない。これだけわかればヨシとしよう!」


 『では、お二人はこの20年間何をなさっていたのですか?』


 「これは、俺が説明しよう」


 八上が手を挙げ、俺たちの横に座った。


 「まず、あの量子テレポートの後、俺達はここに落ちた。そして、人々が逃げ惑う波に押されながら俺達はただ遠くに見えるエッフェル塔を目指して歩いた。その時には既に結晶に街が覆い尽くされていて、エッフェル塔も目に見える速度で結晶に侵食されていた。それでも、俺たちがエッフェル塔に向かったのには理由があって、そのエッフェル塔に絡まるように唸るナニカが見えたからだ。最初は居なかったはずなのに、次第にそれは輪郭を帯びていき、気がつけばそこに居た。それが【龍】だった。そして、エッフェル塔に着いた俺達は無我夢中で【龍】に攻撃を仕掛けた。連日連夜【龍】との激戦を繰り広げて行くうちに俺達は【龍】を少しずつ追い込んでいった。しかし、【龍】は一枚上手で、逆に俺達は追い込まれてしまった。そこに駆けつけてくれたのが水越さんの友達を名乗る怪異だった。純白の羽を持った龍のようなその怪異は【龍】の怪異を一時的に退け、【龍】はエッフェル塔を巣として結晶の中に粒子となって入っていったんだ。それで、その助けてくれた怪異に外の現状を教わり、【龍】を倒す事を止め、新たに冥界を作り出すためのシステムを考案しようと20年間奮闘してきたわけさ。」


 「ちなみに、他にも人は?」


 「いるよ?場所はもうちょっと奥の方のショッピングモール跡付近が人の居住区。」


 「【龍】はその人たちを遅いに行ったり…」


 「するよ」


 影神がボソッと呟いた。


 「ああ、普段のアイツらは巣で眠る本体の指示がなければ上空を旋回するだけのデカい鳥に過ぎない。しかし、ある時からアイツらは何の目的も無くただ人を殺したり、誘拐するようになったんだ。その行動にそれまでの命令された統率感がなく、不定期にそれが起こる。」


 「そんな…」


 「しかも…最近…


 その時、ガチャっと音が聞こえ、全員がその音がした方を見る。


 「あ、あの…」


 そこにはオドオドした10歳くらいの男の子と女の子が立っていた。

ご精読ありがとうございました!

誤字脱字などがあったら報告お願いします!!


悪辣龍巣都市 パリ!始まりました!


名前のセンス…?


えへへ!ちょっと影響されてるかも!

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