第三話 終焉を迎えた世界
この世界はとても小さくなってしまった。
世界人口はかつての半分以下、
代わりに怪異の総数はかつての比じゃない程多く、比じゃない程、怪異が強大になってしまった。
怪異がこの世界の中心に据えられたからだ。
今の世界に存在する国は六つ。
【月の怪異】が統治する"月光帝国トウキョウ"
【龍の怪異】が支配する"龍巣都市パリ"
【氷の怪異】が支配する"絶対零度大陸オーストラリア"
【死の怪異】が支配する"死滅没落都市カイロ"
【夜の怪異】が統治する"悠久極夜都市リオ"
【罪の怪人】が掌握する"原罪贖罪都市ニューヨーク"
そして、その他の領域は全て【花の神】が侵食した"花神冥界"であり、その中心は"冥界大樹"と定義され、かつてロシアと呼ばれた国の位置に根を張り100年間世界を静かに侵食していた。
「今の世界は各国の怪異達の冥界によって辛うじて成り立っています。彼らはまだ花に神の座を奪われるわけにはいかない。と抗っているんです」
シップがそう言い、クウが続ける。
「しかし、その冥界はあまりにも不安定で、内部の怪異の消えた途端、広げたゴムを手放した途端縮むように花の冥界に包まれ、その中で暮らす人達は瞬く間に消え去る。」
「だから、私達は世界を守る為にもそこに手を出さないでいました…それにしても100年は頑張りすぎた気もしますがね」
「世界を救うには、【花の怪異】となった【新木彩花】が必要だった。【花の神】を倒すには【死】も【王】も【悪】でも…【戦争】でも無理なんだ。【花】でないと【神】は殺せない。」
「【花神】の冥界は100年前から見てかなり強力になっていまして、その冥界の中心に立つ【花神】と戦うとなったら【花】じゃないとその身体を保っていられないんですよ。」
「だから、【花の怪異】を待っていた。」
言いたいことはよく分かった。
「で、なんでその話を11年間俺にはしなかったのさ」
「普通にですね、サクラが【花の怪人】になるなんて思ってもいなかったんですよね私達。」
「うん。サクラは出自が出自だから、普通に育って欲しかったんだよ。なのに、あの【戦争】さんが護身術知らなくて悪いことはないって…」
あー、あの急な修行そうやって始まってたんだ。
「じゃあ、少なくとも爺ちゃんは俺を【花の怪人】にさせる気はあったってこと?」
「いいや、違うな。」
背後から急に爺ちゃんの声がして、振り返る。
「あ、おかえり。違うってどういうこと?」
「ほい、ただいま…まぁね、俺の想定だと別の誰かが【花の怪人】に成って、ソイツとサクラが共闘して世界を救うっていう感じだったんだけど、なんか、纏まっちゃったね。絶妙に」
『水越さん…』
「やぁ、彩花。久しぶりだ…まぁ、積もる話があるわけで、サクラは一旦眠ってて。ここからは、覚悟と責任のお話だからさ。」
「はぁ?俺も関係あるだろ。その話」
「サクラの話はその後だ。」
「あっ…そ…う…
ーーーーー
「さて、俺達は彩花を責める気はないから、安心した聞いて欲しい。」
「はい…」
「記憶は完璧?」
「はい。100年前、優希に引き摺り出されて、アルトライで皆んなが話してるところも。しっかりと覚えています」
「完璧だ。そこからの記憶はなくて当然だからね。彩花は日本の一角に堕ち、そこで眠りについた。すると、彩花を中心として神社のような形成物と共に森が生まれ、今に至るわけだ。まぁ、それに気がついた【月の怪異】がいち早く冥界で彩花を守った事にいつか感謝するべきだが、今じゃない。」
「はい。」
「二人から聞いただろ?この世界の状況を」
「はい。」
「なら、話が早い。単刀直入に言うが、彩花とサクラには二人…この場合一人と一体になるのか?いや、そこは重要じゃないな。とにかく、お前達だけでこのアルトライに乗り、怪異に支配された各国を解放し、そこが消滅する前に新たな冥界を構築してこい。」
「え?」
「新たな冥界を構築する準備はもうすでに整っている。しかし、それを行動に移すと世界の均衡がほんの少し揺れ動き、【花神】が活動を再開する恐れがあった。その為、【花神】と戦える唯一の存在である彩花が誰かと契約するその日を"みんな"待ち望んでいた。」
「みんな?」
「ああ。ヴァルフォールのみんなは各国に転移していたんだよ。」
「みんな…生きてるんですか?」
「生きてたよ。俺の友達が世界を巡って確認してくれたんだ。」
「友達?」
「そうだ。花の冥界で【花神】に気づかれないように飛べて、今、この世界で最も願われている、とある鳩が俺達の伝達役をやってくれている。」
「すごい…」
「まぁ、とにかく、彩花。お前の契約した怪異が起こした災いなんだ。お前が幕を閉じろ。まぁ、こうなった原因が全て彩花にあるわけないし、俺達の失敗的な部分があまりにも大きすぎるから、これからも一緒に戦わせてくれ。すまないな。こんな事までさせてしまって。俺達は…お前達を助けるためにいるのに、守り切れたためしがないな…」
「大丈夫です。ハナの暴走は私が止めます。」
『私たちって言えよ。』
「起きてたの!?」
『ったりめぇだろ?』
「そうか、サクラも聞いていたか。」
『俺も戦うよ。俺はもっと広い世界を見たい。記録映像だけじゃなくて、実際に、世界を、地球を見てまわりたいんだ。』
「よし!じゃあ、行ってこい!まずは、パリだ!!そこには、最高の二人が待っている!!」
ーーーーー
結晶に包まれた街…
「エッフェル塔も随分と綺麗になったものだな。」
蜘蛛の巣のように張り巡らされた結晶に包まれたエッフェル塔はかつての観光地としての機能は消え、今では醜き龍の巣と成り果てた。
「今年も生き残れるか…」
「そう悲観的になるな。俺達は【悪】を倒すその日まで死ぬわけにはいかないんだから」
悪辣なる龍の巣を【鬼】と【影】が駆け巡る。
【悪】を倒すその日を夢見ながら、終わりなき【龍】の支配を終わらせるために。
ご精読ありがとうございました!
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もともとのプロットでは、花の怪人になったサクラが連行されて、帝国軍の牢屋に水越さん達が助けに来る感じだったんですけど、それじゃあ、帝国軍が可哀想なので、連行されないようにしました!
故に、一章、クソ短い…




