Ep.2 原初
眼下に広がる花畑の真ん中で立ち、笑う彩花の姿をした神は両手を広げて手招く。
「歓迎しているんだよ?さぁ、人の子らよ…死に絶えよ」
瞬間、船体が揺れ、警報が鳴り響いた。
『船体に何かが巻きつきました!』
窓から外を見ると、花の蔓が船体に巻き付いているのが見えた。
「逆噴射して、引き剥がせ!」
伊刻が叫ぶ。
『もうしてます!!』
ギシギシと軋む音とジェット噴射の音だけが響く。
「今のうちに、準備するぞ。30秒後、戦闘機を四つ出す。それに乗って、降下する。乗り込むんじゃない。乗るんだ。操作は俺が遠隔で行うからお前らは覚悟だけしておけ!」
水越がそう言い、ハッチを開く。
「いくぞ!」
そう言い、水越が飛び出す。
追いかけるように、伊刻、八上、優奇が飛び降りる。
「乗れ!」
目の前に旧型の戦闘機が現れ、優奇達はそれに乗る。
エンジンが勝手にかかり、旋回しながら降下していく。
「君達に神を殺せるかなぁ!!」
蔓が伸び、戦闘機に巻き付く。
「ほーら!」
蔓によって振り回され、地面に向かって投げつけられる。
「降りろ!」
四人は戦闘機が地面に叩きつけられる直前に飛び降り、花神を取り囲むように降り立った。
背後では戦闘機が爆発する音が聞こえ、爆風がその場を煽った。
水越が銃を構え、伊刻が槍を握り、八上が大剣を持ち上げ、優奇が刀を抜いた。
「やる気満々だね。ならば来れ、愚かなる人の子よ汝らに神殺しは成し得ない。無様に足掻け。」
花の玉座が現れ、神が座る。
「行け。眷属よ。」
三つの花の蕾が地面から現れ、開花する。
白い身体に白い服。そこから歪に生えた赤黒い花。彼の者は【日の花眷属】。
炎天の化身であった絢爛たる姿は失われ、花に侵食された醜き化け物と化した。
淡い緑の髪、綺麗な顔立ち、威風堂々とした出で立ち。しかし、その身体からは醜く悍ましい紫の花が咲く。彼の者の名は【風の花眷属】。
希望を届ける風は凪、そこにあるのは絶望のみ。
悠然たる立ち姿。朗らかな表情。優しく全てを包み込むようなその気配。しかし、そこから滲み出す穢らわしき漆黒の花が咲く。彼の者はこう呼ばれる【大地の花眷属】と。
大いなる大地は穢れ堕ち、今はただ死を孕み、尽きるだけ。
原初は堕ちた。
汝らに希望は無い。
絶望を抱き、絶望に殺されよ。
「エン…あれは…」
『あの時の力を残していたのか!?』
ーーーーー
『追いついた頃にはアマテラスはハナに吸収されていた。
瓦礫の上でハナは高笑いをしていた。
その時、ハナから炎が溢れ出し、空に高く舞い上がった。その炎に呼ばれる様に空からツクヨミが現れた。
どうやら未来が見えるツクヨミとアマテラスは事前に話していたらしく、アマテラスが吸収されて中から合図を送り、ツクヨミがアマテラスに抑えつけられたハナを斬る算段をとっていたようだ。
しかし、ツクヨミの攻撃は防がれた。
アマテラスを吸収したハナは未来を見る権能を引き継いでいたんだ。
しかし、それで引き下がるツクヨミでは無く、ツクヨミは俺達に加勢を命じて俺達はそれに応じ、さらに、異変を察したシナツヒコ、イザナミが加勢した。
四体の怪異と一人の怪人VS神に近づいた怪異の戦いの火蓋が切って落とされた。
結果は散々。
シナツヒコ、イザナミはその力の半分を吸収され、ワダツミは大傷を負った。』
ーーーーー
『封印期間ですり減ったとばかり思っていたが、根本の大事なところは残しておいたのか…しかし、それを放出したと言うことは、ここで終わらせる気だということ、これを倒し切れば奥の手は無いはずだ!』
「原初を超える奥の手なんてないだろうからな!!」
俺は刀を振り、目の前に座る花神を睨む。
「ほぅ。」
花神は感心したように声を漏らす。
「『あの日のお返しだ!ハナ!』」
「眷属は俺たちに任せろ!」
水越が数多の銃を引き連れながら【日】を襲う。
「優奇は彩花を助けろ!」
槍と共に伊刻が飛び、【風】と戦闘を始める。
「俺達はその為にいるんだよ!」
八上が大剣を振り被り、【大地】に叩きつける。
三人がそれぞれ、眷属と戦闘を始める。
俺はゆっくりと深呼吸を一回。
眼前で咲う花神を倒し、中に居る彩花を救い出す。
「いくぞ。」
「おいで。」
刀身に灼熱の炎を纏わせ、迫る。
「来たれ!!【万花万蕾の太刀】!!」
空から桃色の刀が現れ、花神の手に収まる。
「なんだその刀は!!」
「私にもわからない。けれど、これは、確かに私の刀だ!!」
灼熱の刀身と桃色の刀身がぶつかる。
花神は楽しむようにのらりくらりと俺の刀を避ける。
俺は刀を受けるのに精一杯で的確な攻撃ができない。
「あれれぇ?どうしたのかなぁ?」
「くそっ!」
「そんな調子じゃあ、楽しくないしぃ…」
花神の足元からもの凄いエネルギーを感じる。
「なん…」
ふと、下を見る。
瞬間、鋭利な花の根が飛び出してきた。
「がっ」
右足に根が突き刺さる。
ーードクン
「なん…だ…力が」
『根に吸われているんだ!早く引きちぎれ!』
根に炎を纏わせ、無理やり引きちぎる。
「はぁ、はぁ、」
『うーん、美味しい!さすがに原初か』
花神は妙に艶かしい舌舐めずりをした。
「彩花の顔で彩花がしない表情しやがって…」
「彩花、美人さんだよねー」
そう言い、花神は刀をクルクルと回す。
辺りを見渡す。
この広い花畑の中心に俺達が居て、俺から見て右側の奥で【日】と【戦争】が戦っていて、左側の奥で【風】と【槍】が戦っていて、音的に後ろで【大地】と【鬼】が戦っている。
視界の端で見える戦いは異次元なもので、俺もそんな動きをしないと目の前であくびをする花神を倒すことも叶わない。
『ペース上げるぞ。』
「ああ…熱強化。」
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眼前で揺らめく【日】
今はまだ揺らめくだけで、攻撃はしてこない。
「大いなる神様は慈悲深いんだな。」
今すぐに優奇のもとに急ぎたいところだが、隙がない。
足止めか…
今のうちに思考をまとめるか。
まず、今回の"創世"は中途半端だ。というところだ。
以前の"創世"では、天から光が差し、"推定神"がこちらの世界に声をかけていた。
しかし、今のところ、そんな様子は見えない。
つまり、まだ段階が踏めていない。
しかし、今、目の前に立っているのは明らかに【日の怪異】。
これほどまでの怪異を少なくとも三体は吸収しているような奴なのに段階が踏めていない。
神、創世、システムがよくわからない以上…
このままでは、【月】が言っていた通りのバッドエンド…
「それだけは避けよう。ハッピーが無理なら、グッドだ。とにかく、バッドエンドは避けなくては…」
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「やはり創世が始まるか。ここが、耐えどころであるぞ。【戦争】」
月明かりの下、【月の怪異】が呟いた。
「妾は妾の出来ることをやるのみ。」
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焼け焦げた神社の中。
あの日の影が蠢く。
それは、自分のものである。と
影の執着心は…"人"の執着心は止まることを知らない故に。
ご精読ありがとうございました。
誤字脱字などがありましたら、報告お願いします。
基本的に、原初の怪異と呼ばれる者達。
これから、彼らはどう動くのでしょうか




