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前日譚•中編

 端的に言おう。


 我が国は奇襲攻撃に成功してしまった。


 ー【怪異譚•prequel】ー


 とある町の土手にて俺たち3人はこれからを憂いながら雑談をしていた。

 

 「米国との戦いが始まってしまったな」

 

 「これから戦争が激化していくことが予想されるというのに…」


 「どうして、2人は毎日暇そうなの?」


 真奈狐の一件を荒浜中佐に報告したら、警察だった湊が何故か"帝国陸軍怪異戦術部隊"通称"怪異隊"に配属されることになった。


 しかし、我々"怪異隊"は戦争地帯での活動を数多の指揮官様に拒否られている為、こうして戦争が激化していくなかでも暇を持て余していた。


 「どうして暇…か…」


 「どうしてだろうな争太」


 「そういう部隊に配属された…からかな。」


 「そうなんだ…」


 冬の空は霞んでいた。


 俺たち3人はそれぞれ帰路についた。


 どうして国は一歩後ろで達観していた魔王に喧嘩を売ったのだろうか…魔王は戦う口実を…いや、俺が考えたところでもう遅い。


 今は、槍が言っていたこの世界を包んでいる"ある怪異の冥界"の怪異を探すとしよう。


 槍はからその怪異の名を聞くことはできなかった。


 まるで、口封じされているかのように、名前だけが出てこなかったのだ。


 幸い、俺の体は寒さと暑さに耐性がある。


 この国中を駆け巡り、突き止めてやる。


 「今日はこっちだな。」


 そう言って一歩を踏み出そうとした。


 『…たす…け』


 助けを求める声が聞こえ、下を向く。


 そこには、瀕死の"鳩"が横たわっていた。


 「助けを求めたのはお前…なのか…?」


 鳩を拾い上げる。


 『たの…む…』


 「水か?」


 『そん…な…け…』

 

 俺は刀の力を用いて拳大の水の塊を生み出し、鳩に差し出した。


 「のめ」


 『っ…』

 

 鳩は顰めっ面で不服そうに水をぺろっと一口飲んだ。


 『こ、れは!』


 鳩はぐびぐびと水を飲み干した。


 『この世でこれほど澄み渡った水が飲めるなんて!生き返った!礼をさせてくれ!【水の怪人】!!』


 「いや、俺は【水の怪人】じゃなくて、水の刀を貰っただけの人…なのだが…」

 

 『なるほど…しかし、その力は怪人と言っても差し支えない。さすが、水だな』


 ……威厳に溢れた声で話しているが、コイツ…鳩なんだよなぁ


 『失礼だぞ。こう見えて我は…』


 爆発音が響き渡った。


 それは、この国で初めての空襲だった。


 『っぐ…戦争が…激化していく…』


 鳩の具合が悪くなっていく。


 「おっおい!どうした!?」


 鳩を持ち上げる。


 『水…頼む。ヤツを、はやく、倒して…くれ。』

 

 「ヤツ?」


 『……戦争だ』

 

 「……なるほど。そりゃ、強いな。」


 『…できるか?』


 「ああ。まかせろ。」


 俺が倒す敵の名前は【戦争】。


 そして、この鳩はきっと・・


 『我の名前は【平和の怪異】。今、この世で最も貧弱な原初の怪異だ。』


 「やっぱりそうか。俺の力になってくれ。」


 俺はすかさず願った。

 

 鳩は、平和は何も言わず、頷いた。


 そして俺は平和を肩に乗せ、空に飛び立った。


 眼下に広がる業火の世界、眼前で飛ぶ黒鉄の鳥。


 「この国から出ていけ!」

 

 水の刀が黒鉄の鳥を二つに断つ。


 「空襲機…こんなもの、全部切り落とす!」

 

 『空を飛ぶ手伝いをしてやる!』


 平和の羽が背中に現れる。


 「一気に切る!!」


 刀を握り直し、構える。


 「一刀にして…


 「Don't let them control you. 」


 聞き慣れない言語、瞬間、目の前に淡く光る純白の羽が舞った。


 「お前は?」


 飛行機乗りの服装で全体的に白い男が純白の羽を広げて空襲機の上に立っていた。


 「……ワタシ、は、Elnes.」


 「えるねす…?」


 「……そう。」


 まるで天使のような出立ちだった。


 「Peace…water…」


 エルネスは小さく舌打ちをし、翼を広げた。


 「アナタと、ここで、戦うのは、こちらに不利だ。」


 そう言うと空襲機と共に跡形もなく消え去った。


 「…相手国にも怪人がいるのか…」


 『今のは…?』


 ーーーーー


 その後の処理など、いろいろ大変だったが、最も辛いことが起きた。


 「戦争において、怪人の有意性が証明された。お前達には、前線に向かってもらいたい。」


 俺と伊刻は前線に向かうことになった。


 それは、5月の終わりの頃だった。


 ーーーーー


 「さて、真奈狐。俺たちは海に向かう。」


 「湊の事は絶対に守る。だから、安心してくれ。」

 

 「湊って守られる側だったんだ。」


 「殴るぞ。」


 俺と伊刻は真奈狐に色々と話をして、旅立った。


 死地へ


 ーーーーー


 海戦が始まり、俺と伊刻は水と槍の力を用いて縦横無尽に海上を飛び回り、敵機を撃墜していった。


 明らかにこちらが優勢。


 しかし、何かきな臭い。


 あの時の怪人がまだ出てこない。


 『……まずいな…』


 頭の上に鎮座していた鳩が空を見上げる。


 無数の翼を広げた"天使"が上空に現れた。


 「アイツは!」

 

 空一面を覆う閃光が走る。


 『避けろ!!』


 平和が叫ぶ。しかし、避ける間もなく光の矢が降り注ぐ。


 艦隊が沈み、飛行機が落ち、光の矢が俺の体を貫く。

 

 海に落ち、沈んでいく。


 少しずつ、血液が海に流れ出していく。


 「死ぬ・・」


 と、思ったが、そういえば俺は平和と水の契約者。

 

 「簡単に死ねるわけないよな。」


 腰に携えられた水の刀に手を伸ばす。

 

 「復帰する。羽を貸してくれ平和」


 『わかった。』


 平和の羽が背中に現れる。


 水の刀を抜き、周囲の水を操る。


 沈みゆく船体を支え、落ちていく兵士を救い上げ、火を消していく。


 「水はすべて俺のモノだ。」


 数多の水の竜巻が巻き起こり、敵を空に打ち上げる。


 上空で純白の翼を広げる怪人がいる。


 「あの日の水と平和の混在か。」


 「やけに日本語が流暢だな」


 「【天使】の加護だ。」


 『なるほど。【天使の怪人】か。』


 日光に照らされて【天使の怪人】、エルネスが神々しく光る。


 しかし、その神々しさにはどこか、禍々しさも孕んでいる。


 待て。

 

 「なんだ?あの、黒い煙。」


 天使の周囲に煙る黒い煙に気が付く。


 『臭い....まさか、あれは!!ダメだ!!あいつは、アレは!!侵されている!!』


 「何に!?」


 『【戦争】だ!!』

 

 再び閃光が走る。


 「水の壁!!」


 光の矢を水の竜巻で防ぐ。


 「私は主の下僕!!私の光を防ぐなど、主を拒むと同意であり、それは、万死に値する!!」


 「思想強すぎだろ!!」


 エルネスが高速で旋回をはじめる。

 

 「ん?なんだ、これ、」


 空から純白の羽根が落ちてきた。


 『触れるな!!』


 「え?」


 指の先に羽根が触れる。

 

 すぐに手を引く。が、羽根の触れた指が痛ましく爛れる。


 ジリジリと痛みが押し寄せる。爛れた部位が少しずつ灰に変わる。


 「はぁ!?なんだよ、これ」


 指先が灰になって消えた。しかし、すぐに再生する。


 「まて、羽根に触れただけでこれって、」


 はっとして空を見上げる。


 純白の羽根が無数に舞い、落ちてくる。

 

 「嘘だろ!あの羽根がこの量!?」


 その時、風が吹き荒れ、羽根が舞い上がる。


 「死をもって、償う刻だ!!」


 風に乗り、数多の羽根が迫る。


 「まだ死ぬには早すぎるなぁ!!」


 ここは幸い海上だ。

 

 俺は莫大な量の水を操り、押し寄せる死天使の羽根を防ぐ。

 

 「なぜ抗う!!これは主の意思である!!」


 「防がないと死ぬから防ぐんだよ!!」


 ダメだ。質量が大きすぎて圧される!


 「御手杵!!」


 エルネスの横腹に灼熱の槍が突き刺さる。


 「ガァァァァ!!」


 「今だ!!」


 大質量の水を圧縮させ、姿勢の崩れたエルネスの胸部に打ち込む。


 しかし、それによっていくつかの羽根が体に触れる。

 

 「ぐっぁ・・・いや、こんな痛み!!!」


 奥歯を食いしばり平和の羽を広げエルネスに迫る。


 刀を鞘に納め、腰に戻す。


 「いったん眠れ!!」


 頭を蹴り、エルネスを気絶させる。


 【天使の怪人】エルネスを確保。


 眼下では残存兵達が生き残った船に乗り込み、戦争を継続しようと体制を立て直してる。


 まだ戦う気なのか。


 「まぁ、伊刻!!ありがとう。助かった!!」


 槍が飛んできた方向を向く。


 壊れた戦艦の甲板に寝転がる伊刻が見えた。


 「湊!!!」


 甲板に降り立ち、伊刻に寄り添う。

 

 「大丈夫か!?」


 「あ、あぁ、」


 伊刻の体には光の矢に貫かれた傷が無数にあり、甲板上に血痕が残っている。


 「羽根は船を盾にして防げた。けど、流石に、」


 光の矢は防げなかった。


 「なんで、お前は無傷なんだ?喜ばしいことだけど。」


 確かに、こんなに再生が早い理由がわからない。


 『水の権能だろう。』


 水の操作だけじゃなくて、身体再生も可能なのか


 『原初の怪異だから、権能面は何でもありの場合が多い。故に、深く考えることはやめたほうがいい。』


 「水の権能だ。」


 「なるほど。しかし、槍にはそんな権能はないみたいでな、俺はここで休養させてもらいたい。死ぬことはないから安心してくれ。それよりもこの海戦を終結に向かわせてくれ。」


 「了解。」


 俺は伊刻を安全な位置に寝かせて飛び立ちすぐに、司令官の元に向かった。


 「怪人。先ほどの化け物はどうなった。」


 「気絶させ、確保しました。」


 司令官にエルネスを引き渡す。


 「荒浜中佐はお前たちを好きにさせることが最も勝利に近づくとおっしゃっていた。先ほどの戦いを見ればそれも納得だ。そろそろ増援が着く。お前たちは・・・・もう一人はどうした?」


 「負傷し、休養しています。」


 「それも仕方ないか。そもそもあの戦いを通じて無傷なお前が恐ろしい。とにかく、お前は一人で戦況を見て戦え。」


 「はい。」

 

 俺は司令官の元を離れ空から俯瞰するように戦場を見渡した。


 溺れている人を助け、船を支えて、


 「来やがった。」


 空の向こう側から数多の戦闘機が向かってきている。


 「母艦を壊すしかない。」


 海に潜り、敵国の母艦を探す。

 

 「まぁ、どれかわからないし、」

 

 敵国の船が見えたら超高圧縮した水で貫き、船を壊す。

 

 「早く終わらせる。」


 ーーーーーー


 「正直、これで【天使】との戦闘が終わりだとは思っていない。」


 俺は軋む体を起こして、壊れた船から飛び出した。

 

 『あまり無理するな。』


 「するさ。」


 槍を携え、俺は天使が届けられた司令官の元に向かった。


 「アイツはお人好しだからな。きっと天使になんの枷もつけてない。」

 

 ーーーーー


 戦争が始まって、軍に所属して、私は何をしていた?

 

 記憶が曖昧になる時がある。


 「ここは…?」

 

 見覚えのない牢屋だ。


 敵国の捕虜にでもなったのか?


 私が?


 「どうしてこうなった?」

 

 私は【羽の怪異】と契約しただけの弱い…


 「羽?いや、まってくれ。」

 

 アレは、羽なのか?


 『今更気がついたのか?貴様が契約せしモノは最早、【羽】などではない。ましては、【天使】などでもない。もっと醜悪で、気味の悪い、"主"の下僕』


 「主?なんなんだ!お前は!」


 『【紛争の怪異】』


 「おかしいだろ!俺は確かに、【羽の怪異】と契約した!!!」

 

 『そんなもの、食い殺した。』

 

 「ありえない…ありえないだろ!!」


 『世界が【戦争】を求めた。お前が【戦争】を求めた。【戦争】がお前を求め、お前を欲した。だから、俺が来た。【紛争】である俺が"主"に変わり、俺が来た。お前の【羽】を毟り取り、【紛争】の翼を植え付けた。』


 「俺は、そんなモノ望んでない!!俺はただ、"リリス"の為に、早く戦争を終わらせる為に【羽】と契約しただけだ!!!」


 『そんなもの、建前に過ぎない。お前は【戦争】を求めた。しかし、それを否定し、【戦争】を拒むのなら、意識など手放せ。【戦争】はまだ、終わっていない』


 「やめ…ろ…」


 『眠れ。"エルネス•バード"鳥籠に囚われし愚かなる"鳥"よ。』


 ーーーーー


 「見えた!あれが司令官の居る


 音が消え、船が爆散する。


 船の破片と共に純白の羽根が舞い上がる。


 「【天使】…!!」


 爆煙の中から翼にくるまった【天使】が現れた。


 『先手必勝だ!!』


 「『御手杵!!』」


 灼熱の槍が【天使】の翼に突き刺さる。


 「槍よ!!」


 7つの槍が空中に浮かび上がる。


 「我らの敵を貫き殺せ!!」


 全ての槍が高速で飛び、翼に突き刺さる。


 『「何度も、同じ轍を踏む訳がない。」』


 羽が広がり、突き刺さった槍が零れ落ちる。


 『「【槍の怪人】よ。その傷でワタシと戦うつもりか?もし、そのつもりならば愚かだな。」』


 たしかに、俺の身体には穴が沢山空いている。


 「でもな、ここで戦わない選択はないだろ?」


 『「そうか。貴様は【戦争】を求めているのだな。良い。とても良い。ならば、戦おう。さぁ、戦おう。そして、【戦争】を続けよう。』


 「【戦争】なんて、クソだよ。クソだ。だけど、戦わないといけない。だから、俺もクソに染まる。」


 『「いい覚悟だ。」』


 「覚悟なんてものじゃねぇよ。【天使】」


 『「ふむ、ワタシは【天使】ではないぞ?」』


 はぁ!?


 「じゃあ、お前は何者だ!?!」


 『「【紛争の怪異】」』


 【紛争】だと!?


 『「さぁ!【戦争】を続けよう!!」』


 螺旋状に羽根が高速回転し、眼前に迫る。


 足元に槍を召喚し、俺ごと空に打ち上げる。


 空中で旋回し、槍を握り直す。


 ヒリヒリと腹部に開いた穴が痛む。


 長期戦はできない…


 「何かいい方法は?」


 『俺に任せろ!』


 握られた槍は形状を変え、禍々しく、尚且つ、神々しく成る。


 「『必殺必中の槍(ゲイ•ボルグ)!!』」


 放たれた槍はまっすぐ【紛争】の胸を貫いた。


 「『っがぁ!!!!』」


 【紛争】の翼が消失し、海へと落ちていく。


 「まだだ!!」

 

 もう一度、槍を握って…


 ダメだ、もう、


 「意識…が…


 【槍の怪人】は意識を手放し、海へと落ちた。


 ーーーーー


 敵船をあらかた破壊し終えた。


 「そろそろ上がって戦況を…


 海上に飛び上がり、周辺を見渡す。


 味方艦隊側でとてつもない気配と共に伊刻の気配がすることに気づいた。


 「伊刻が戦っている?なんで?」


 『……そういえば【天使】に枷も何もつけてなかったよな?』


 「気絶してたからな」


 『怪人って、再生力すごいよな?』


 「やらかしたか。」


 俺は【平和】の翼を広げ、すぐに味方艦隊側へ向かった。


 遠くで伊刻が槍を【天使】に突き刺しているのが見えた。


 「伊刻!!!!」


 速度を上げる。


 【天使】が落ちていく。


 「すげぇよ!!伊刻!!」


 喜んだのも束の間、伊刻が海に落ちた。


 「湊!!!!!」


 海の中に入り、伊刻を掬い上げにいく。


 「湊!!!!」


 伊刻を見つけ、近寄る。しかし、視界の奥から【天使】が迫るのが見えた。


 「【天使】!!!」


 『「違う!ワタシは、【紛争】だ!!」』


 【紛争】!?


 『"天使の加護"っていう言葉は嘘だったのか!?』


 『「信仰の自由だ。」』


 「紛らわしいんだよ!!」


 水流を作り、伊刻を水中から持ち上げる。


 「そろそろこの海戦を終わりにしよう。」


 水中から上がり、近くに浮いていた瓦礫に立つ。


 『「そういえば、貴様は、何者だ?」』


 水中から上がった【紛争】が目の前の瓦礫に立ち、俺に問う。


 俺は何者か。


 【水の怪人】とは言い難い。


 かと言って、


 完全な【平和の怪人】とも言い難い。


 俺は何者だ?


 『確かに、俺と正式な契約を結んでいるわけでもないからな。』


 俺の目的はなんだーーーーーー?


 『"アレ"じゃないのか?』


 アレ、か…


 ーー遡ること数日前…俺達の海戦配属が決まった日


 「水越、ちょっといいか?」


 俺だけ荒浜中尉に呼び出されていた。


 「単刀直入に言う。今回の作戦で司令官を殺して欲しい。」


 「はい?」


 「アレは"戦争に侵されている"」


 「それは、どう言う意味で…」


 「君の中に秘めている"鳩"に聞くといい。まぁ、とにかく、あの司令官を殺せばこちら側に優位に働くと言うことだけを頭に入れて欲しい。」


 「直接手を下せばいいのですか?」


 「いや、難しいかもしれないが、間接的に殺してくれ。」


 「分かりました。」


 俺はその場を後にする。


 「あっ、言い忘れていた!!」


 背後から荒浜中尉が叫ぶ。


 「これは、この【戦争】を終わらせる為に必要なことだ。【平和】への第一歩なんだ。だから、頼む。【怪人】として、この世界を助けてくれ。」


 「【戦争】を終わらせる…か。分かりました!任せてください!!」


 ーーーーー


 そうだよ。俺は、この戦争を終わらせる為にここに立っているんだ。


 なら、名乗るべき名は…


 「俺は、この世界を【戦争】がなく、ただひたすらに平和な、"水平なる世を作る為に戦う"!!それが俺、【水と平和の怪人】水越争太だ!!」

 

 『「そうか…二つの名を名乗るか…しかし、それでいい。終わりなき【戦争】はその対極にある【水平】を許容する。そして、その【戦争】の代弁者であるワタシが相手をしよう。【紛争の怪異】であるエルネス•バードが!!」』


 【紛争の怪異】エルネス•バード VS 【水と平和の怪人】水越争太


 "戦争"開始…


 その瞬間、眼前で蝶が舞った。


 【紛争】が指を鳴らした。


 「嘘だろ…」


 眼前に広がる無数の銃口。


 『「掃射、開始」』


 「水の壁!!」


 銃声が響き渡ると同時に水の壁が現れ、銃弾の全てが水の中に沈み、威力が消える。


 『「"衰退の羽根"」』


 触ったら終わりの純白の羽が全周囲に現れ、舞い上がる。


 『「灰となれ。」』

 

 「なるわけない。」


 水の竜巻を起こし、羽根を吹き飛ばす。


 『「"懇願の光"」』


 竜巻の向こう側から無数の閃光の矢が襲いかかる。

 

 『光の矢は水の太刀で防ぎ弾ける!筈だ!』


 「信じるからな!!」


 眼前に迫る光の矢を弾き返し、旋回し、背後からの矢を避け、左右から迫る矢を回転し弾き、水の渦で触手を模造し、振り回す。そうすることで光の矢を屈折させ、軌道をずらす。


 そのまま距離を詰め、


 『「近寄るな!!」』


 『本命はこっちだ。』


 【紛争】の背後に一匹の"鳩"が現れた。


 『【紛争】の弱点は【平和】だろ?』


 【紛争】の身体に平和の羽根が一本突き刺さった。


 『「がァァァァァァ!!!!!」』


 【紛争】が悶える。


 「さて、終わらせようか。」


 射線確保。


 水量十分。


 超水圧縮開始。


 「ーーー龍極水線(りゅうごくすいせん)


 音が消え、超高圧縮された水が放たれた。


 『「や、やめろ!!」』


 数多の羽根や銃で壁が作られ、龍極水線が塞がれる。


 しかし、それも長くは持たない。


 「終わりだ!!」


 俺の周囲に三つの水泡が浮かび上がる。


 「龍極水線(りゅうごくすいせん)三門(さんもん)


 三つの水泡から超高圧縮された水が放たれる。


 『「や…るな……」』


 【紛争】の身体に大きな穴が三つ開き、【紛争】は沈黙した。


 「これでも死なないのか。」


 しかし、確実に意識は失っている。


 今度こそは絶対的な拘束を施す。


 「もう、暴れられたら困るからな。」


 【紛争】と【水と平和】の戦いは【水と平和】の勝ちで幕を閉じた。


 しかし、


 この海戦は司令官を失った我が国の大敗で終わった。


 【戦争】は止まることを知らなかった。


 伊刻は沖縄に派遣され、


 夢結は絶望に呑まれ、


 水越は……最後の戦いに身を投じることとなる。

ご精読ありがとうございました。


やっと…終わった…

あれ、まだ中編?

大丈夫です。がんばります。


ちなみに、これはフィクションです。


フィクションです。


めちゃくちゃフィクションです。

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