花の神
病が花に吸収され、花が神になった。
神って何だよ。
まぁ、一旦そこは置いておいて…
病を吸収しただけで神になんかなれるのか?
多分だけど、そんな訳ない。
病を吸収するだけで神になれるなら病は神ってことになる。だから、それだけで花が神になるなんてことありえない…多分ね。
そこで考えられる事は、
「これまでも花は怪異を吸収してきた…?」
『管理不足…?』
ありえる。
無能集団じゃん。
『でもそんなミスするか?』
「しないよな。彩花は俺たちとずっと一緒だったし…寝なくてもいいようにしてもらってたし…」
『あーー!!!そうだ!言ってたよな、世界中の花の怪異は共有されてるみたいなこと!!』
「…だとしたらどうしようもないじゃん」
眼前に広がる桜吹雪。
花の神となったハナが作り出した大樹が海の向こう側へ向かっていく。
「彩花!!!!!」
優希が叫ぶ。
しかし、返答はない。
「忍!」
「わかってる!!」
忍のバフがかかる。
地面を蹴り、海に飛び出す。
手のひらの中で炎を編む。
「『劫火球!!』」
灼熱の火球が花の大樹にぶつかる。
しかし、花の大樹には傷一つ付かなかった。
花の大樹は優希に見向きもせずに海の向こうへ進んでいった。
「クソガァァァァァ!!!」
優希は落ちた海の中で何度も何度も水面に拳を叩きつけた。
ーーーーー
花の大樹が水平線の向こうへ消えてからすぐに水越が到着した。
「すまん……遅れた…」
水越の表情は酷いもので、衰弱しているような悲しんでいるような…とても暗かった。
「はぁ…はぁ…はぁ…あれ?争太…着いてたの…」
夢結が遅れてやってきた。
「今っ、どういうっ、状況?走ってて、シップの、報告、聞けなかった…」
息を切らしながら夢結が聞く。
「彩花が病の怪異を吸収した後、神に成って、あっち向かいました。」
忍が海の向こう側を指差しながら話す。そして、その指先を少し下に向ける。
「あそこに、浮かんでいるのが優希です。誰か引き上げて下さい。」
水越と伊刻が二人で引き上げた。
「あの、なんか聞こえない?」
八上がそう呟くと共に皆が辺りを見渡す。
「たしかに…なにか…」
瞬間、水越の銃声が響き、その向こう側にトカゲと犬を合わせた様な獣が倒れていた。
「【獣の怪異】…?」
伊刻と水越が倒れた【獣の怪異】に近づき、その死体を弄る。
「なんだ、この"花"…」
【獣の怪異】の身体に異質な花が纏わりついていた。というか、生えていた。
「水越さん!!」
忍の怯えるような声が辺りに響き渡る。
それぞれが顔を上げると夥しい数の【獣の怪異】や【虫の怪異】が周囲に集まっていた。
しかもその全てから花が生えていた。
「マジか…湊!」
「わかってる!」
水越と伊刻が獣や虫を薙ぎ倒す。
「一旦引くぞ!!」
水越の叫び声と共に視界が暗転し、気がつくとアルトライの前に居た。
ーーーーー
「シップ!状況はどうなっている!!」
「水越さん!お帰りなさい!今、【花の神】がばら撒いた【花の種子】に侵された怪異が"世界各地"で活性化、人に危害を与えています!もうめっちゃくちゃですよ!!しかも、【花の神】を中心とした【怪異冥界】が発生していて、その中に巻き込まれた人が全員消失しているんです!もう終わってます…」
「あの大樹はどこに向かっている?」
「ロシア…ですね。」
「じゃあ最終的には北極か…人間を吸収しながら向かっているんだろう。」
「なんで北極なんでしょうか」
「あそこが世界の中心だからだろうな。」
「????????」
「北極と南極の中心には世界にエネルギーを供給する龍脈?なんかそういう地球の血管の動脈?があるんだよ。花がそこに根を張れば世界を吸収できる。」
「なんで神に成ったってのに、まだエネルギーを欲するんです?」
「……神について話しておこうか?」
「他の人呼びます?」
「みんな休んでるから、いいよ。」
「あ、はい。」
「まず、この世界には神が既にいる。その神はこの世界を創り出した、所謂…創造神?」
「その、創造神はなにをしているんですか…」
「なにもしてない。世界を創った後、神は世界を放置している。」
「無責任?」
「違う。何も出来ないんだよ。」
「どういうことですか?」
「神は世界を創造する力しか持っていない。しかもそれはたった一度で、やり直しが効かない不便極まりない権能だ。故に、世界を創った後、神は天上から世界を見守るしか出来ない。」
「そんな…」
「次に、神に成るってことについて話そう。」
「はい。」
「神に成るには二つの条件がある。
一つ目、前任の神を殺す。まぁ、これは無理だね。天上に行くのは難しいからな。
二つ目、前任の神の力を超える力を得ること。これがスタンダードな神の成りかた。戦争もこの条件で神に成って、世界を変えようとした。」
「なんで変えられなかったんですか?」
「世界を変えるには、世界を壊さないといけないからだ。」
「え?」
「世界を創るって大層に聞こえるだろ?実際は再構築なんだよ。つまり、世界を壊して、創り変える。それが神による【世界の創世】だ。」
「つまり、花の神は世界を壊すための力を貯めようとしているってことですか?」
「然り。」
「つまり、貯める前に倒せばなんとかなるって事ですか?」
「そう。だから、"整備"できてる?」
「クウの確認が終わればいけます。」
「流石だ。」
ーーーーー
数分後、艦内アナウンスが響き、管制室に全員が揃う。
皆の前に水越が立つ。
「これから花の神討伐戦及び、新木彩花救出戦の作戦を発表します!」
なんかのイベントかのように水越がホワイトボードを引っ張ってきて、話し始める。
「現状、花の神はロシアの…ここらへん?に居ます。」
「「「「はい。」」」」「「うん。」」
「そこで、全員でここに特攻仕掛けます。」
「え、どうやってですか?水越さんの戦闘機で行くんですか?」
「いい質問ですね。忍くん。そこで、コレを使います。」
水越が管制室のモニターを指差す。
そこにはアルトライが映し出されていた。
「は!?え!?遂に!?」
伊刻が興奮しながら水越に詰め寄る。
「そう。終わりました。70年に及ぶ修繕の末、我らが拠点、アルトライ、遂に本来の力を取り戻し、やっとこの名でよべます。【アルトライ•アラヴァース】と。」
その名は水越、伊刻、夢結が初めてこの船を見つけた際に記されていた名だった。
因みに意味は不明。
「それで、どうするんですか?」
忍が話を戻そうとする。
「このアルトライで花の神の大樹に侵入し、内部で花の神の本体である禍津木花咲耶姫と戦闘する。」
「はい!そこについて詳しく言います!」
シップが手を上げて話し始めた。
「花の大樹ではいくつかの冥界の層が重なりあっています。その中心地点にて花の神もとい、禍津……彩花ちゃんが立っています。そこに、このアルトライでどかーん。と入り込みます。」
「冥界の層?」
「はい。しかも、その冥界の層は奥に行けば行くほど危険度、というか、なんというか、まぁ、ガチな冥界に近づいて行きます。まぁ、それをコレから冥界深度と言います。冥界深度が深くなると人は身体を保てませんし、怪人も具合悪くなります。」
「なるほど…」
「なので、この作戦には時間制限があります。神が待つ場所は冥界深度4で、10分戦うと、怪人でもヤバいと思うんですよ。」
みんな思った。
なんか、曖昧だな。と
「で、層はいくつあるんですか?」
「えっとですね…層はおおよそ3つですね。そして、深度としては、入るまでが冥界深度1、層を一つ跨ぐと冥界深度2、次の層が冥界深度3、最後の層を跨ぐと冥界深度4ですね。」
「冥界深度の影響はなんですか?」
「冥界深度1、常人は具合が少し悪くなる。怪人は影響なし。
冥界深度2、常人は立っている事すらできなくなり、子供などの身体が弱い人から死んでいきます。怪人は少し具合悪くなります。
冥界深度3、常人は確実に死にます。溶けます。消失します。怪人は弱い人から具合が物凄く悪くなりだします。
冥界深度4、常人が入り込む余地などないです。怪人は数分間の戦闘で消滅の可能性があります。」
「なるほど…」
それってソースどこ?とか、いろいろ言いたい事があったが、それってコレまでの全てに言える事だったので呑み込んだ。
「じゃあ、行きますか。」
水越がそう言い、作戦がはじまった。
ご精読ありがとうございました。




