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助ける。そう言ったから

 「はよいけ!」

 優希がそう言った。優希に会えるのはこれで最後かもしれない。とマイナスなマインドになった自分を恨みたいが、こんな状況なんだし、しょうがないよね。

 だけど、優希は彩花が生きていればそれでいいと思ってこの行動に出たんだと思う。だったら僕はここで彩花を守る。この命に変えてでも。

 それでも優希には生きていて欲しい。だからこう言おう。

 「生きないと殺す」

 優希は返事を返さなかった。けど、その背中は本当に心強かった。

 かすかに優希の啖呵が聞こえて、それが僕の心の闘志を燃やしてくれた。

 女の子みたいだね。と言われ続けた人生だけど、これでも男だ。

 「根性見せるしかないでしょ」

 彩花を背負う。

 「えっ!?」

 「駆け降りるよ。優希のためにも!」

 「……うん。」

 彩花はどんなことを考えているんだろう。

 僕はガタガタの石階段を駆け降りた。

 「自転車起こしておこう。」

 「優希を待つよ。」

 一向に降りてこない。

 ーーに降りてこない。

 ーーー降りてこない。

 ーーーーりてこない。

 ーーーーーてこない。

 ーーーーーーこない。


 こない。


 ーーーーだれが?


 あれ、なんだ、なんか、

 「忘れてる?」

 「ねぇ、この自転車、忍一人で持ってきたの?」

 そこにはうちの自転車が2台立てかけられていた。

 「あれ、ほんとだ。彩花が消えて、声が聞こえて、境内で彩花を背負って、降りてきて、」

 僕はどうやって自転車を持ってきたの?

 「…帰ろうか」

 「うん。」

 僕達はなにか釈然としない思いを抱きながら帰路につこうとした。

 「じゃあ、その自転車彩花が乗って」

 「うん」

 瞬間、熱風が僕達を襲った。

 その後すぐに爆風が襲ってきて、二人して倒れてしまった。

 「なにっ!?」

 山の上を見ると恐ろしいほどの火柱が立っていて命の危機を感じた。

 「にげよう!」

 そう彩花に言うとすぐに彩花は自転車に乗り、僕達は山から離れた。

 「は、はやく!」

 もう空は暗くなっていて、その闇が焦燥感を駆り立てた。

 街に出て、月明かりが道路を照らして僕達の行先を指し示していた。

 「人?」

 道路の真ん中で空を見上げている人がいた。

 そして僕は直感した。

 この焦燥感は闇に対してではなかった。

 

 この目の前の人が原因だった。


 「迂回しよう。」

 そう言って道を逸れようとハンドルを切った。

 『ヒトに魅入られし者。哀れなる汝らに引導を』

 視界の端で何かが光った。

 僕は自転車を捨て、彩花に飛び付いて自転車から降ろした。

 案の定僕の自転車は真っ二つに裂かれてしまった。

 「鎌…」

 月明かりに照らされて僕達の前に現れたのは鎌を握りしめて和服を着た気味の悪い男だった。

 「なんで」

 彩花が呟く。もっともだ。

 なんで、僕達を襲うんだ。

 『ヒトに魅入られし者であるからだ。』

 「ヒトってのはなんなんだ、あんたは何者なんだ!」

 そう言うと男は振り上げた鎌を下ろして話し出した。

 『ヒトとは汝らの影であり、生き写しである。ヒトに魅入られた者は魂を壊され、輪廻から外れてしまう。故に"妾"が慈悲を与える。』

 「影…輪廻…」

 影ってのはさっきのアレか?

 輪廻って、転生とかそういう話?

 難しいわけじゃないけど、信じられない。

 「現実の話なのか」

 『如何にも。そして妾は【月の怪異】。月の"使徒"であり、人の良き介錯人だ。』

 「つまり、僕達はヒトってヤツのターゲットになって、殺されると次の人生に行けなくなる。だから、アンタが僕達を殺すことで次の人生に送ってやるってことか?」

 月の怪異はその鎌をクルクルと回して僕達の周りを歩き回る。

 『如何にも。だから言っておる。妾は慈悲深い。汝らは哀れである。故に引導を渡す。』

 その瞬間、鎌が僕の首を目掛けて振り下ろされた。

 頭で理解できても体がうまく動かない。

 このままでは首が、命が斬られてしまう。

 彩花、彩花、彩花。

 「あ、」

 あれ、なんで僕はこんなに悔しいんだ。

 彩花を守らないことがなんでこんなに悔しいんだ。

 そりゃあ、大切な幼馴染だ。だから、悔しいのは当たり前だ。なのに、もっとそれ以上の、なにかが、僕の胸にある。

 ものすごく、懺悔したい。

 死ぬのは怖い。

 辛い苦しい。だけど、それよりも、

 なんて悔しいんだ…


 「ごめん。遅れた。」


 鎌の刃が僕の首を切り落とすことはなかった。

 僕の目の前に炎が現れた。

 とても暖かく、心までもが温もりに包まれてしまうような綺麗な炎が。

 「助けに来た……よ。」

 僕の目の前に立っているのは炎を身に纏った男だった。

 「あなたは…」

 「……」

 僕の顔を見た男の顔はなぜかひどく悲しい顔をしていた。その顔を見ているとなぜか僕まで悲しい気持ちになった。

 「俺の、俺の名前は…【炎の怪異】だ。」

 声が震えていた。

 『炎の怪異…いや、"怪人"か。』

 「俺の大切な人に手を出すな。」

 月の怪異と炎の怪異がぶつかる。

 僕と彩花はそれをただ見ていることしかできなかった。

 「二人とも逃げろ!今すぐに!」

 僕達はその声を聞いてすぐにその場から逃げ去った。

 そして二人で僕の家に逃げ込み、お母さんとお父さんに泣きついた。

 怖かった、辛かった、と。

 二人は僕達のことを優しく包んでくれた。

 でも、僕はいまだに怖い。

 月の怪異ってのが言っていたヒトってのがいた僕達を襲いに来るのか。と、

 でも、なんでかな、あの炎の怪異さんを思い出すとなぜかとっても安心できるんだ。

 僕達は大丈夫だって。


 ーー


 「二人とも逃げろ!今すぐに!」

 俺はそう言って二人を逃した。

 あぁ、ダメだな。覚悟を決めたって思っていたのに、どこかで二人なら俺のこと忘れていないと勝手に思っていた。

 あの顔、完全に忘れてる。

 でも、それでいいんだ。

 俺がこうやって力を手に入れたおかげでこうして目の前のコイツから二人を守れている。

 「コイツ何者?人の怪異よりも遥かに強い。」

 『月の怪異、その分体だろう。』

 「月ィ?」

 『如何にもっ!妾は慈悲深き月の使徒である!』

 月が手に持った鎌を振り下ろしてきた。

 大きく後ろに飛びその鎌を避ける。

 「なんでアイツらを狙う」

 『ヒトに魅入られた者』

 「なら心配いらねぇよ。俺が守る。そう決めてこの力を得たんだ。」

 月は沈黙し、鎌を下ろした。

 『そうか…人よ、その先に安住はないぞ。怪異と契約を交わした者の行く末は決まって絶望である。もし、救いを求めるのなら…』

 月が言葉を出し終わる前に月は空を見上げる。

 俺もそれに釣られて空を見ると月明かりに照らされて誰かが降りてくるのが見えた。


 「また、遅れてしまったんだな。どうして俺はこうも一足遅れる。」


 『人よ、歓喜せよ。奴は忌々しき"災い"なれど、汝の"救い"となる者である。』

 月はそう言うと夜闇に溶けて消えた。

 「救い…?」

 救いと言われたその人は青年で、その顔立ちは俺が見てきた人の顔の中でぶっちぎりで整っている、まぁ、イケメンだ。

 「初めまして、俺の名前は水越争太(みなこしあらた)君と同じ、怪異と契約した者だ。」

 そう言って水越は俺に手を差し伸べた。

 「君がどうして怪異と契約することになったのか、俺に教えて欲しい。そして、俺に何か手伝えることがあれば言って欲しい。俺は…君の味方だ。」

 また信用できない相手から手を差し伸べられた。

 でも、孤独が待っていると思っていたこの心に水越のこの言葉がとてもよく響いた。

 俺を助けてくれる人がこんなにいる。

 やっぱり俺は、アイツらを守る運命にあるんだ。と思い、疑いの気持ちを捨てて水越の手を取った。

 「はじめまして。俺は東雲優希です。そして、『炎の怪異だ。お前に何ができるのか、見定めさせてもらうぞ。"戦争"』」

 戦争?なにそれ。

 「すごいな。俺の中を見透かしたのか。うん、そうだ、俺は俺の中に【戦争の怪異】を封じている。強制契約っていう手法だ。」

 「なるほど。75年前、"水"と"平和"が人間に力を貸して"神に近づいた怪異"を封印した。という話はお前のことだったのか。」

 「怪異ネットワークってやつ?やるね。」

 訳のわからない話で盛り上がりやがって…

 『この男は信用できる。嘘をついている様子はない、さらにこの男にしっかりと水と平和の残穢が残っている。』

 なるほど。

 「そんなすぐに信用はできないけど、よろしくお願いします。」

 「よし。じゃあ、話を聞かせてくれ。君が契約に至った理由を」


 ーー


 「……なるほど、人の怪異か。」

 水越は顎に手を当てて考え込む。

 「確かに君が契約を交わさなければ人と月のダブルコンボで確死だったな。まぁ全部俺が間に合っていれば済んだ話か…」

 「てか、なんで俺たちが危険だって気づいたんすか?」

 「あー、俺たちのアジトにある機械と"(くう)"のおかげ…あ、(そら)のことね。」

 「とにかく、一旦俺たちのアジトに来て欲しい。そこで君達が憂いている人の怪異への対抗策を考えよう。」

 うーん、ついていっていいのかな?

 『まぁ、いいと思うぞ。』

 んーなら、

 「わかりました。行きましょう。」

 『そのアジトに何がいるのか聞いといた方がよかったんじゃ、』

 おっそ。なんでさっき言わないの?

 『すまん。』

 「まぁ、いいけど、あの、水越さん?」

 「お?」

 「その、アジトにはどんな怪異がいるんですか?」

 あっ、忘れてた。みたいな顔をして水越は説明を始めた。

 「説明端折ってたよな。すまん、まず、俺たちの組織の名前から。組織の名前は空挺怪異大隊(ヴァルフォール)。名前の由来は、アジトに使用している舟に残されていた"空挺魔導大隊(ヴァルフォール)"のもじりだ。アジトにも名前があり、希望の方舟(アルトライ)だ。これは舟に残されていた名前をそのまま使用している。ちなみに、空は飛びません。」

 は?空挺って言葉知ってるの?この人。

 『知っているから補足したんだろ』

 そうなんだけど、そうなんだけどさ!

 「で、メンバーについてだな。怪異2体、怪人5人がいて、」

 「怪異と怪人の違いは、契約の有無?」

 「そうだ。怪異と契約した人は怪人と呼ばれる。」

 「なるほど…」

 そういえば、俺とお前が契約しないでお前が俺らを助ければよかったんじゃ?

 『あー、そこ説明してなかったな。怪異が同じ位置に長居するとそこが"怪異結界"通称"冥界"と化して周囲の人間に悪影響を及ぼすんだ。だから、俺は同じ場所に定住しない。』

 あの神社みたいな?

 『そう。』

 なるほど、だからアイツらを助けるためには俺は契約せざるを得なかったってことか。

 『てか、脱線してるぞ。メンバーの話をよく聞け。』

 はーい。

 「いいか?まず、怪異から【船の怪異】と【空の怪異】がいて、怪人は【槍】【夢】【影】【鬼】そして俺【戦争】だな。」

 「ふーん。」

 わっかんねぇ、そう言われても、「わっ!すごい!◯◯の怪異がいるなんて!」とか言えねぇよ。てか、それで興奮できる奴いんのか?

 『すげぇ、夢と契約した奴がいるのか』

 いたよ。

 「まぁ、兎にも角にも、行こう。話はそれからだ。」

 俺は水越に連れられてアジトへ向かった。


ご精読ありがとうございました。

誤字脱字、なんか文がキモいところがあったら報告おねがいします。

以下、怪異と人間が契約するメリットについてです。


怪異と人間が契約すると…

①人間から認識されなくなり、触れることも触れられることもできなくなります。

(目に見えない幽霊みたいなものです。物は動かせるのでこの世で起こるポルターガイストは世界から忘れられた怪人がかつての友人や家族に気づいてもらいたくて物を動かしている。という設定があります。可哀想)


②怪異の頃よりも精密な能力操作が行えるようになります。

(電気が機械を通していろんなエネルギーに変換できるみたいな?)


③怪異が定住すると発生する冥界が発生しなくなる。

(これは、溢れ出るエネルギーが人という壁に包まれて身体の中で循環を始めるからであり、人という壁を超える程のエネルギーを発した場合、冥界が作られます。まぁ、そんなことそうそうないっすよ。)


④不老不死になります。

(わー!すごい!)


まぁメリットはだいたいこんな感じですね。

あと、身体能力、動体視力アップとかありますが、そこは変身するにあたって当たり前な事項なのでぶっ飛ばしました。



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