1979年 7月7日
目の前に広がる光景を飲み込……めるわけない。
黒フード被って包丁持った男と大人くらいの身長した…鬼?と黒い何かがバトってるんだよ?意味わかんなくね?
「裕也!慎也!逃げるよ!わけわかんないけど、ヤバいかも!!」
シャンとして!と声をかけられ、手を引っ張られる。
俺、"八上裕也"と"慎也"、"影神慎也"の目があって、ふと、微笑みが溢れた。
俺達の手を引っ張るのは"天津雪"。
俺、慎也、雪は幼稚園からの幼馴染だ。
俺たちは雪に手を引かれて、街の中を走った。
ーー1979年 7月7日ーー
あの意味不明な現場からある程度遠ざかると、三人共々、肩で息をしながら話した。
「なんだったの!?あれ!私見た事ないよ!?」
見たことあったら怖いぞ。
「あれは、なんだったんだろうね」
「わかんねぇな。」
三人は頭を傾げて考えたが、なにも分からなかった。ので、その日は大人しく帰路についた。
俺が玄関にバックを置いた瞬間、外から悲鳴が聞こえた。聞き覚えのある悲鳴だった。
「雪っ!?」
俺はすぐに家を飛び出した。
雪の家はすぐそこで、2分も経たずに着いた。
「は?」
家の前に蹲る雪が居て、その目の前でさっきの黒フードと鬼が戦闘していた。
「意味わかんねぇよ。」
と口に出しながらも、雪に駆け寄る。
「雪!大丈夫か?」
「大丈夫…私は大丈夫なんだけど、」
雪が鬼を指差す。
「鬼さんが、私を庇って、刺されて…」
もう本当に意味わかんない。
でも、確かに鬼は腹部から出血していて、苦しそうな顔を……そういう顔か。
とにかく、俺は雪に肩を貸して、鬼達から離れる。
その時に鬼達がなにかブツブツと話しながら戦っていることに気づいた。が、何を話しているのかは分からず、とにかく離れることが先決であるとして、離れていった。
「大丈夫だぞ…」
そう何度も声をかけた。
ある程度行くと、俺の家が見えてきて、そのまま家に入って時が過ぎるのを待った。
「……」
二人で漫画を読んでいると、窓の外から声がした。
「裕也!雪!大丈夫か?」
影神の…慎也の声だと分かり、二人で顔を合わせて答える。
「大丈夫!」「外、大丈夫だった?」
そう言ってカーテンを開ける。慎也が安心したような笑顔で言う。「開けて」
俺は鍵を開けて窓を開放した。
『バカなガキ』
知らない声だった。
隣に居た雪が外に吸い込まれるように放り出され、急いで窓から出ると、黒フードの男が雪の首を掴んで持ち上げていた。
『すげぇな。"ヤゴコロ"が濃く染み込んでる。これが天津の家の者…』
黒フードは高笑いをしてはしゃいだ。
『コイツを使えば、"マガツコノハナサクヤ"を超えられる!俺が神になれる!』
雪を物としか考えていないその物言いに殺意を覚え、俺は窓から身を乗り出そうと窓枠に手をかける。
『待て!ヌシでは何も出来ぬ!』
目の前に鬼が立ち塞がった。それを見て黒フードは苛立ちを隠せずに、舌打ちをする。
『しつけぇんだよ。ジジイが!!』
雪を地面に叩きつけて、腰からナイフを取り出した。
『何度刺されても懲りねぇ奴は大っ嫌いなんだよ!!』
『……今度こそ、倒す。』
鬼と黒フードがまた戦いを始めた。
もう見慣れてきた。まぁ、意味はわかんないけど
そんなことよりも、地面に叩きつけられた雪が蹲って悶えている。
「殺す…」
衝動的に動こうとする体とは引き換えに頭は冴え渡っていた。
このまま行くと死ぬな…
俺は走って玄関まで向かい、靴を履いて外に出る。庭の真ん中でバトってるのをみて、外周を走って雪に近寄る。
「雪…」
雪の体を起こして、庭の岩に座らせる。
鼻から血が…
雪の顔に傷つけやがったな…ゴミが…
グツグツと煮え滾る殺意をギュと抑えて、雪の鼻にティッシュを当てる。
「鬼さんがまた私を助けてくれた…」
「あの黒フード、完全にお前を狙ってる。どうにかしないと……どうにもならない。」
「だよね…」
目の前で行なわれている戦闘はどんどん激しくなっているが、明らかに鬼が劣勢になってきている。
腹部の傷が痛むようだ。
『"鬼"さんよぉ…その傷で"五大怪異"の俺様に勝てるとでも思ってんのか?』
『人の子を守れ…と言われているのだ。』
鬼は体勢を立て直して黒フードとの戦闘を続行する。
「五大……"怪異"…?」
聞いたことのない言葉だ…
『そこの者っ!その子を連れて逃げよ!!』
鬼が叫んだ。
「っ!わかりました!」
思わず反応してしまった。
「…とにかく!動ける?」
雪に聞く
「任せてよ」
ちょっと元気なさげな声に心配しつつも俺たちはウチの敷地を出る。戦闘はかなり激しいらしく、その戦闘音がいつまでも聞こえてきていたが、黒フードの怒号と共にその音はスッと消えた。
鬼が勝った…?
いや…
目の前にヌッと黒フードが現れる。
『やっと死んだわ…』
黒フードは頭を掻きむしりながらぶつぶつと怒りを吐き出す。
「逃げるよ…」「私、走れるよ」
小さく頷き、逆方向に走り出す。
『お前らもそう思うよな?』
目の前に居る…
すぐに振り返る。
「は?」
スッと首元から手が伸びて、俺の肩にボロボロの衣服を纏った腕が乗る。
『お前も死にたい?』
耳元で黒フードの声がした。不気味な声、人とは思えない声…焦燥感を駆り立てる声。耳から全身に鳥肌が広がり、止まらない。
「……分かった!私は逃げない!だから、裕也は助けてよ!」
雪の声が響いた。俺はハッとして雪の顔を見る。怒り泣きと言って差し支えない顔でこっちを、黒フードを睨んでいる。
やめろ!声を出そうにも上手く出ない。だから、全力で首を横に振る。
逃げて、と。
しかし、すぐに頭を黒フードに抑えられ、ボソッと『大人しくしとけ』と言われ、放り出された。
黒フードは両手を伸ばして笑う
『いい子じゃん。聞き分けのいい子は好きだぜ?』
黒フードが雪の顔に手を伸ばした。
「やめろ!」
腹の奥から声が出た。そして、その声に驚いたのか黒フードは雪から手を離してこっちを凝視した。フードに隠れて見えない眼が俺を凝視した。
『は?なに?本当に死にたい?』
黒フードが腕を横に振るとナイフがその手に現れ、そのナイフをこちらに向ける。
『なら殺す。』
後ろからやめて!!と雪の悲鳴が聞こえる。
黒フードは俺たちの反応を味わうようにじっくり、ゆっくりと一歩ずつ近づいてくる。それを見て俺は雪に逃げろ!と目で合図を送る。雪はすぐに意図を汲み取ったようで頭を横に振る。しかし、俺の目を見てすぐに諦めたような顔になり、ゆっくりと歩み出し、糸が切れたように走り出した。
黒フードがそれに気付き、グンっと顔を走る雪の背中を見る。
『嘘つく女は嫌いだ』
ボソッと呟き、雪に飛び掛かる。
「雪!」
雪が異変に気付き、振り返る。
黒フードの凶刃が雪を襲う。
『させない!!』
金属同士がぶつかる音が聞こえ、雪と黒フードの間に血だらけの鬼が現れた。
『ハァ〜!?往生際が悪過ぎるんだよ!!』
『それが取り柄なのだ!!』
黒フードが鬼の気迫に圧倒されて吹き飛ばされる。
『っぐ』
鬼が膝から崩れ落ちる。
『もう限界だろ?諦めろよ大人しく、さ』
立ち上がった黒フードがケラケラ笑う。
『おのれぇぇぇ!!!!』
鬼が大剣を持ち上げ、目で追えない速度で黒フードに迫る。
『だぁかぁらぁさぁ?』
黒フードが片手で鬼を抑えて、呆れたように話す。
『五大怪異の俺にお前が勝てるわけがないんだって』
鬼が吹き飛ばされ、俺の目の前に倒れる。
『大人しく見とけよ、ザコ。』
俺たちの目の前を黒フードが通り過ぎて雪の方へ向かう…
「いいぞ!雪!」
雪はもうそこには居なかった。
『はぁぁぁぁ!?だっるぅぅぅ!!!』
黒フードは地団駄を踏み、消えた。
俺は目の前でのびている鬼の頬を叩く。
『……むっ』
「起きたか」
鬼の背に手を添えて上半身を起こす。
「お前らは何者なんだ?なんで雪が狙われている?なんで雪を助けている?」
『我等は"怪異"。人の業から生まれ出でる存在だ。そして、あの子は"天"の巫女である。故に、狙われておる。』
怪異?天?巫女?分からないことだらけだ。けど、
「俺じゃあ助けられないのか?」
『それを行うのは我の…』
俺は鬼の体を見て言う
「その体で、か?」
鬼は押し黙る。
「なにか方法はないのか?お前の力を俺に貸すとかさ!!」
『あるにはある。』
「なら!」
その続きを言う前に鬼が被せてきた。
『だが!待て、その術を使えば、ヌシはたちまち世界から忘れ去られてこの世の者でなくなり、永劫を生きる者に…』
「その程度でいいのか?なら、力を渡せ。俺に雪を守らせろ。」
『ことの重大さを分かっていないのか!?』
「時間がねぇんだ。俺の願いを叶えやがれ!鬼!」
鬼ははぁ、と息を吐き俺の顔を見つめる。
『覚悟はいいのか』
「雪のためなら」
そうか。と言い、鬼は無理やり立ち上がる。
『ヌシの名を問おう。』
「俺の名前は八上裕也!」
『八上裕也!!我は主と共にある!』
鬼が光の粒子になって俺の中に入ってくる。
『今日から主は鬼の怪人だ。』
ーー
さっきから外でガンガンうるさい。変なのを見たからかな?
ベットから起き上がり、窓の外を見る。すると、雪が全速力で走っていた。何かから逃げるように。
「何かってなんだよ……」
ふと、さっきの黒フードと鬼と黒い塊を思い出す。
何故か焦燥感に駆られて俺は家を飛び出して雪が向かった方向へと走った。
すぐに雪に追いつき、事情を聞く。
「鬼さんが助けてくれて!黒いフード男から逃げてて!」
「分かった」
俺は雪に並走しつつも辺りを見渡して何かが居ないか確認した。
その時、目の前の影が動いた気がした
『こちらだ!』
影から黒い塊が現れて手招きする。
「明らか罠だろ…」
俺は雪の手を取って引き返す為に後ろを向く。
黒フードが立っていた。
『"鬼"は何をしてるんだ!』
そう言うと黒い塊は人の形を取り、黒フードに立ち向かう。
『テメェも大概、諦めが悪いよなぁぁ!!』
黒フードと黒い塊の戦闘が始まった。
俺と雪はそれを尻目に走り出した。
『やめろ!』
『お前らはあとでゆっくり殺してやるからよ!!』
ハッとして振り向く
眼前に黒フードが迫っていた。
『まずはこっちだぁぁぁ!!』
その手に握られた刃が俺に向けられる。
「いいや!こっちだ!」
聞き覚えがないのに聞き馴染みのある声が聞こえて、それが俺たちの目の前に現れた。
「鬼…さん?」
雪が呟く
『はぁあ!?お前、嘘だろ!?』
「事実は小説よりも奇なり、だろ!!」
鬼と呼ばれた男は大剣を振り回して黒フードを圧倒した。
「今のうちに二人で逃げろ!俺が殿を務める!"影"は二人につけ!」
『事情は後で聞く!!任せたぞ!』
黒い塊が動き、俺たちに近寄る。
『はやく逃げるぞ!』
俺達は影に引っ張られて鬼と黒フードの戦いから離れた。
ーー
『うぜぇんだよ!そのぜぇーんぶが!!』
動体視力が上がったのか、コイツが闇雲にナイフを振り回しているのがよく見える。
「怒っているから単調になるんだよ!」
ナイフを持っている手を掴み、もう片方の手で何度も拳を叩き込む。
『クッソがァァァ!!』
黒フードがもう片方の手を振りかぶり、俺の腕を止め、頭突きをかます。
「いってぇぇ!」
思わず手を離す。
『っ!』
その隙を見逃さずに黒フードはナイフを頭目掛けて振り下ろす。が、それを避け、黒フードの顔に一撃拳を見舞った。
『っがぁぁ!!ウゼェェ!!』
黒フードのナイフが一回り大きくなる。
『死に晒せァァァ』
『金棒を出すんだ!』
はっ!?金棒!?
『想像しろ!空から抜刀する様を!』
わかんねぇけど、
「オラァァァ!!」
金棒を振りかぶる想像をしたらいつの間にか大剣を握っていて、黒フードのナイフを弾き飛ばしていた。
『はぁ!?』
「これが…金棒……?」
いや、大剣だよな…
『大剣も言いようによっては金棒とも言える』
暴論すぎる…でも、
「これで勝てる!!」
『ナメるなよ…』
黒フードがフードを脱ぎ捨て、その身体を露わにする。その身体は漆黒の全身タイツを纏っている様で、その輪郭は定まっておらず、揺らいでいる。
『俺は…五大怪異の一角のぉぉ!!!』
口や目と思われる部分からビキビキと音が立ち、赤い電気の様な物質が溢れ出す。
『【悪の怪異】だぁぁぁぁ!!!!』
悪の鋭利に尖った指が迫る。
「あぶねぇ!!」
横に飛び移り、回転し、大剣を悪の顔にぶつける。 鈍い音が響くだけで、斬った感覚がしない。
『あぁ…ウゼェな。』
悪が大剣の刃を握り、押し返す。
「嘘だろ!オイ!!」
『言ってるよなァ!俺は!お前程度では!倒せない』
悪の足が腹部にめり込み、路肩の電柱に背中からぶつかる。
「があ!」
悪は手を握って開いてを繰り返す。
『本調子はまだ出ねぇな。まっ、しゃあねぇか。』
こちらを向く。
『契約したての怪人如きに遅れはとらねぇよ。んじゃあなー。強くなったらまた戦ってやってもいいぜぇ』
手をひらひらと振って悪が消えた。
ーー
影に手を引かれながら雪と俺は街の外れまで来た。
『ここでミナコシアラタが来るまで待つ。』
「あの!今、何が起きているのか説明して欲しいんです!!」
雪が声を荒げて問う。すると影はゆっくりと話し出した。
『まず、我々の説明だな。我々は【怪異】。人の感情や想いから生まれ出でた存在だ。』
『次に、今攻撃を仕掛けてきている存在は【悪の怪異】と呼ばれる存在だ。』
『最後に、何故攻撃を仕掛けられているのかは、君、そう君だ。君が天津家の人間だからだ。』
雪が頭を傾げる。
『天津家は代々、【天の怪異】の加護を受けている。』
「なんでー?」
『江戸時代の天津家当主が天の怪異と共に戦った友情からきているな。』
「じゃあ、なんで私限定なの?」
『君が天の加護を色濃く受けているからだ。それはもはや怪異の領域だ。』
「えっ?」
『だって覚えているんだろ?彼のことを』
「彼って…」
『鬼と融合していただろう?』
「えっ!?あれって…裕也なの…?」
裕也……?
「知り合いなのか?」
「え?」
雪が俺に駆け寄り、肩を掴む。
「何言ってんの!?裕也だよ!裕也!」
「だから…えっと…」
雪は必死に裕也だよ!?と訴えるが、その名前に一ミリも心当たりがない。
『これが普通なんだ。』
「普通って…」
『怪異と契約した者は世界から忘れ去られる。ただし、世界の理の外の存在である怪異やそれに近しい者、怪人はその範疇ではない。』
「じゃあ、慎也が裕也を思い出すことはないってことなの?」
『いや、彼が怪人となれば全てを思い出す。』
「なんで?」
『人の世界から一つ上の場所に怪異の世界がある。まぁ、世界というのは一種の比喩であるがな。とにかく、怪人となった者は人の世界に記録されていた記憶が怪異の世界に書き写されることによって世界から忘れられる。故に、怪人となればそれは閲覧可能であり、全てを思い出すことができる要因だ。』
意味がわからないが、もっと意味わからないのは
「まってくれ、じゃあ、なんで雪はその、裕也ってやつの記憶を持っているんだ?」
雪もうんうんと首を縦に振る。
『それは…』
影が言い掛けた時、背後に何かが着地した。
『それは、お前が天の力を受けた"擬似的な怪人"だからだ。』
黒フード…じゃない。黒い影の化け物、悪の怪異がそこに居た。
『"悪"!?鬼は何をしているんだ!?』
『倒したんだよ。雑魚だったわ。』
『ミナコシアラタはまだ来ないのかっ!?』
『ムズイだろうなぁ……かの"戦争"でも"王"はそうすぐには倒せない!』
『"王の怪異"かっ!?何故、今更日本に!?』
『決まってんだろ?俺に協力してくれてんだよ。アイツは俺に貸しがあるからなァ』
『そんなっ……』
『じゃあさ、大人しく渡せよ。天の巫女を』
悪の怪異がこちらに近づいてくる。
『…逃げろ!二人だけでも逃げろ!』
影が俺らを庇う様に広がる。
「は!?」
『悪を止める。その間に逃げるんだ!』
『そりゃ無理だろ。お前如きに俺が勝てるわけない。』
『守ると決めたのだ!』
『あっそ』
影が悪の怪異の猛攻を必死に受ける。
『逃げろ!逃げろ!』
『無駄だから。』
影がどんどん小さくなっていく。
「……おい。影!!俺と契約しろ!」
俺は気づいたからそう叫んでいた。
『えっ!?』『はぁ!?』「えーー!?」
三者の動きが止まる。
「今すぐだ!契約して、この化け物ぶっ殺すぞ!」
『だがっ』
「つべこべいうな!」
一瞬の沈黙、後に影は笑う。
『わかった。』
その時、影は光の粒子となって俺の中に入った。
「いくぞ悪の怪異。俺が相手だ。」
『ウゼェ、ウゼェ、ウゼェ!!超ウゼェなァァァ!』
影で体を包み、腕先に大きな爪を作る。
「影爪!!」
化け物の体を貫く。
『はぁ!?』
「影はどこまでも浸透する!!」
『意味わかんねぇなぁぁ!!』
悪の怪異が俺の頭を掴もうとして、俺は咄嗟に目を瞑った…が、
『はぁ!?掴めねぇ!?』
『影を掴むなんて誰に出来る?』
無敵ってことか!
「影は掴めねぇもの…なんだってさ!!」
手を悪の怪異の中に入れる。
『実態がねぇから痛くねぇなァ?泥試合だぞ?』
「さぁね」
手を実体化させ、引き抜く。
『ガァァァァ!?』
悪の体に腕の大きさぐらいの穴が開く。
『凄い…この姿ならあれができるかもしれない!』
あれってのは?
『体を貸してくれ』
「わかった。」
目を閉じる。
『諦めたのかぁ??』
悪の手が迫る。
「いいや、」
ガシッと悪の手を掴む。
ゆっくりと目を開く。
『その目の"紋様"はなんだ?』
「さぁな。」目が熱い…
「影奏……掴め。」
悪の影から紐のようなものが出現し、絡みつく。
『こんなもの!!』
振り解こうとすればするほど巻き付いていく。
悪は空高く持ち上げられ、
「今だァァァ!!!」
「鬼の金棒!!!」
裕也の大剣が悪に打ち付けられ、影の手を離す。
悪が地面に叩きつけられる。
『ガァァァァ!?』
目の前に裕也が着地する。そして、俺を見て切ない顔をした。
「契約したんだな」
「だからお前を知っている。」
「ちなみに私も知っているよ」
裕也が雪を二度見する。
「はぁ!?え!?おかしいだろ!?」
「私もそう思う。」
『待て、まだだ。談笑を終わらせろ。』
影に囁かれ、悪の方を見る。
『あぁウゼェ……』
悪がこちらを睨み、構える。
「こい!」「今度は二人で!」
その時、悪はハッとして背後を振り向いた。
『戦争……クソッタレがぁ!今の俺じゃアイツに勝てねぇ!今は引く。次会う時は本気の俺だ。せいぜい……いや、いいか。』
そう言って悪は消えた。
三人が安心して倒れ込むと、水越争太と名乗るものが現れ、俺たちは彼のアジトに向かった。
長い一日だった。
ご精読ありがとうございました。
長いので、誤字脱字などがあったら報告おねがいします。
怪人は目に紋様が現れることがあります。




