full moon
龍が消えて、空から八上さんと優希が降ってきた。
彩花と僕が駆け寄ると二人はゆっくりと立ち上がって優しく微笑んだ。
「勝ったの?」
優希がグッドポーズをしてウインクをした。
ーー
月を倒して、地面に落ちて、彩花と忍に勝利報告をした後、月が現れた。
『認めよう。よく、妾を負かした。』
八上さんが俺の背中を叩いて月の前に持って行った。
「お前の勝利だ。俺はなんもしてねぇからさ?」
そんなことない。八上さんが居なかったら勝てなかった。でも、賞賛を拒めるほど俺は謙虚じゃなーい
「ありがとうございます!」
月が手を差し伸べてきた。
俺はその手を握る。
『妾は見ているぞ。もし、何か起きた時、お前が対処しきれないと悟ったらすぐに駆けつけ……分かるな?』
その目はとても厳しくて優しい目だった。
「はい。任せてください。」『任せろ。』
そう言うと月は微笑んで消えた。
『改めて言おう。見事なり。』
月光に照らされて、月の怪異戦は幕を閉じた。
ーー
よし、諸々片付いたな?
「彩花ちゃん。お話ししましょう。」
彩花はすぐに正座フォームに移行した。
「よろしい。では、何故、契約を交わしたのか端的に述べよ。」
「寂しかった→二人を思い出した→同じところに行きたい→連れてって!!→今」
……なんで俺らを思い出したんだ?
『聞けばいい。』
だな。
「なんで思い出せたんだ?」
「ハナに見せてもらった」
「ハナ?」
「そう。花の怪異で、ハナ」
どう思う?
『黒』
だよな。どうする?
『伝えるわけにはいかないだろ。』
中でどんな会話が繰り広げられるかなんて俺らには分からないからな。変に刺激するより監視下に置いて好きにさせない。これが先決か?
『だな。』
まぁ、一旦、
『水越争太だな。』
彩花は戦闘に出さない事を条件にヴァルフォールに加入した。
ーー
皆が寝静まった夜。
空に満月が浮かんでいて、月光が足元を照らしてくれている。
「三人は無事なのか…」
夢結さんは回収できたけど、闇の怪異戦に向かった伊刻さん、水越さん、影神と連絡がつかない。
心配だけど、俺だけではシンガポールに行けない。
だから、どうしようもない。
八上は山の中を一人歩く。
今回の戦い、俺は何も出来なかった。
なんなら、迷惑もかけた。
『そうだな。』
俺はまだまだ未熟だった。
たった40年。だけど、40年。
そろそろ変わらないと。
慎也は強くなった。
なら、俺は?
水越さんは俺だけで月を対処できると思って置いてくれた。
俺はそれに応えられた?
どちらも否。
こんなんで顔向けできるか?
無理だろ。
巨木の前で歩みを止め、目を閉じる。
巨木の下には一本の剣が刺さっている。
「強くなる。強くなるよ。」
八上はしゃがみ、膝をつけ、剣に手を当てる。
「待っててね。"ユキ"」
満月が俺を見つめていた。
ーー
今日は満月…の筈だ。
闇の中で外と連絡が取れなくなった。
でも、隣には伊刻さんと水越さんが居る。
最強の二人がここに居る。
「影神!大丈夫か!」
「水越さんっ!大丈夫です!」
体制を立て直す。
闇を俺のものにしろ。
「"ユキ"に顔向け出来るように!!」
闇は深く、深く、深淵は三人を包み込んだ。
ご精読ありがとうございました。
誤字脱字ありましたら報告お願いします
次回から【幕間一】あしたの天気
八上、影神の過去編です




