月の光
月に照らされて炎と鬼は月の化身に向かって飛び出した。
それを見守る言葉と花は言葉を交わしていた。
「さっきは時間がないから無理矢理、話しを終わらせたけど、僕も優希も納得できてないよ?なんで彩花は契約したの?」
彩花は急に涙を流す。
「思い出させてもらったの…二人のことを…二人と過ごした日々を…あんなにずっと三人で居たのに、急に、私の前から居なくなって…記憶からも居なくなって…記録も何も残さないで…ずっと心に穴が開いてたの……寂しかった、悲しかった。そして、悔しかった。私って守られるほど弱い子なのかな……どんな理由があっても私を一人にしないで…私には優希と忍しか居ないの…」
この子の中にある感情はいつからこんなに重くなっていたんだろう。
高校に入ってから仲の良かった女友達が軒並み別の高校に行ってしまって、同級生の女子は口が裂けても良い子なんて言えない人だらけで、うるさいし、よく聞こえる音量での陰口、自分達が優位だと思い込んで他の女子を見下したり…なまじ正義感の強い彩花はそう言うグループにいじめられていた子を助けちゃって、次の標的になっていた。
中学の頃は僕と優希で解決できたけど、高校に入ってから僕達は強く出れなかった。根本を無くせなかった。でも、ずっと三人で居て、陰口とかいじめとかが及ばない様にしていたけれど、それでも守りきれない部分があって、だと言うのに僕達は二人して怪異という悪から守るっていうのに注力して、人間の悪意から守ることを放棄した。何も考えていなかった。
こうやって考えると僕らにしか非がない。
彩花にとって怪人になる方が救われる。
「ごめんね。一緒に戦ってくれる?」
「……うん」
ーー
「八上さん!」
「分体を頼む!俺は本体を叩く!」
そう言って八上さんは空飛ぶ分体を踏みつけ、はるか上空に鎮座する月の本体に向かった。
「マジすか」
眼前に広がるのは何千体も居る月の分体。すべての分体が鎌を握り、その刃に月光が反射して空に広がるネオン街の様だった。
ネオン街ってなんだよ。
「全部焼く。」
空中で炎を出してブースターの様にして縦横無尽に駆けていく。
『哀れな子よ』
「哀れだなこんなに簡単に焼かれて。」
最低限の動きで最大火力を最小範囲でぶちかます。
『この、程度…』
「斬れろ!」
焼き殺せなかったら刀で首を斬り落とす。
『疲れたら交代するぞ』
「ありがとなっ!」
まだまだ月の分体は迫り来る。その奥では八上さんが本体と熾烈な争いを繰り広げている。
「負けねぇよな。」
ーー
「俺は本体を叩く!」
分体を踏みつけて空高く舞い上がる。
『ゆくぞ!神殺しじゃ!!』
月の怪異は崇拝されし者、【ツクヨミ】。
神と同等の存在。そんなやつに勝てるか?
「勝つんだよ!」
大剣を持ち直して、迫る本体に向ける。
俺に力を貸せ!
「"天金棒"!!!」
空を裂く程の威力で月を斬る。
『天の力には程遠い。しかし、良しとしよう。妾に挑む権利を授けよう。鬼よ』
龍のような何かの上に人の影が見えた。
「なるほど、その龍ですらお前の分体なのか。」
『妾にとってその全てが妾である。』
初めて見た月の怪異の本体。
黒の布だけで仕立てられた十二単を纏い、足元まで伸びた黒い髪に整いすぎている顔立ち。
「かぐや姫…か。」
『さぁ、来い。』
その冷たい視線はそれだけで俺を刺し殺さんばかりだった…が、
『主よ、楽しくなってきたな。』
「本当にな…」
大剣を握り締める。手汗が止まらない。
「俺にはな……倒さなければならない怪異がいるんだ。名を"悪の怪異"ここでお前に負けるようじゃあ、ダメなんだよ!!!」
目を見開く。
「天金棒」
『一芸しか持たぬか!鬼よ!』
月が鬼の一撃を片手で掴み弾き返す。
『その程度で…ぬ?』
鬼が消えた。
瞬間、月を衝撃が襲う。鬼が月の腰に蹴りを入れたのだ。
『ぬぅ!?』
「鬼出電入」
再び鬼が消える。
『忌々しい…なれば!鏡花水月』
水滴が水面に落ち、月を中心として波紋が広がる。
『そこか。』
月が飛び上がり、無を蹴ると、呻き声が聞こえる。
『まだ隠れるか』
空中で回転し、再びそこを蹴り上げる。
「っぐぅ」
『鬼よ、それでは面白くないぞ!』
現れた鬼の首を握りしめる。
『幕引きじゃ』
ボキ、と音を立てて鬼の首が折れる。
「鬼哭啾啾」
鬼の体から青い焰が溢れ出し、月を掴む。
「お前も潰れろ」
『鬼火かぁ!!』
月の体がミシミシと音を立てて軋んでいく。
『この、程度かァァァ!!』
月が焰を振り解き、手を伸ばす。
「オラァ!」
鬼が近付く月を蹴り飛ばし、後退する。
「…本気は出さないのか?」
『出したら面白くないだろ』
「だしてみろよ。」『は?主?』
すると月は笑いだして空に手をかざす。
『死ぬなよ?』
空に満月が現れる。
見上げる。
月光に照らされて月の怪異が不敵に笑い、月光が月の怪異に収束し、矢となる。
『月に照らされて』
『死ね!!!!』
矢が放たれる。
眼前に広がる光輝なる矢に目を奪われる。
『迎え撃つのか!?避けんのか!?』
「迎え撃つ。合わせろ!」『おう!』
鬼は大剣を構え、光の矢を迎え撃つ。
「『天金棒!!》」
天の力を貰い受けた鬼の金棒(大剣)で光の矢に対抗する。
「『ガァァァァァァ!!!!』」
光の矢に押し返されていく
「『まけねぇぇぇ!!!』」
『諦めよ。』
「くそっ」
落ちてゆく。
ーー
「はぁ…はぁ…」
どれだけの分体を焼いた?
『あと少しだ!』
指先に全火力を集め、指で銃を象り、迫り来る二体の分体にそれを向けて放つ。
「熱線!!」
高火力のビームが二体の分体を切り刻んだ。
まるで、バイ◯ハザード。エ◯ダなら避けれたぞ。
『とにかく、』
「目に見える範囲は全部やった…」
ふと、空を見上げると閃光が走った。
「あれが、月の怪異の技?」
『……おい、なんか落ちてくるぞ!?』
え?
あ、ほんとだ……あれ?
「八上さん!?まって!まって!」
「『ぶつかるぅ!?!?』」
そのまま意識を手放した。
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月の放った一撃、shoot for the moon は英語のことわざ?だっけかで困難に挑戦するって意味だったはず…です。なので、月からして光の矢は手抜きの一撃…因みに、あの一撃に八上はやられましたが、あれを受け止められるのは水越と伊刻、エルネスの三人だけなので八上は弱くないの!初期設定だとここら辺で死ぬ予定だったけど!




