開戦
端的に言おう。
間に合わなかった。
彩花ちゃんは【花の怪人】になっていた。
「彩花…」
忍くんの声が震えていた。
「なんで契約したんだ!」
優希くんが怒っていた。
俺は、この時どう言う顔をしていたんだろう。
『主の顔などどうでも良い。ただ、残酷であるな。まるで主らと"お嬢"の様じゃ。』
そうだな。本当にそうだな。
しかし、問題はそこじゃない。
問題なのは彩花ちゃんが【花の怪異】と契約した点だ。
『戦争の小僧が言っていた件じゃな。災いを引き起こすのは花である可能性がある。と』
そう。
そして、彩花ちゃんの事を伊刻さんが監視していたとも聞いている。つまり、
『この嬢ちゃんが何かしら特別な能力を持っておるという可能性じゃな?』
本当にあの人達は言葉が足りない。
しかし、考えている時間はないようだ。
シップからの通信を取る。
《八上さん!月の怪異が近づいています!加えて怪人協会も動き出しました。協会の方には夢結さんが向かいましたが》
本当にあの人は…
『主らが戦わないと夢の嬢ちゃんは夢と現実の狭間に堕ちてゆくぞ。』
わかってる。
だから早く終わらせよう。
「三人とも。話している暇はないよ。月の怪異が近づいてる。」
空には既に無数の分体が飛び交っていて、その奥の雲からゆるりゆるりと龍のような本体が降りてくる。
『堕ちたか。ならば、汝には死を』
三人は一斉に空を見て笑った。
「あの日はよくも殺そうとしてくれたね」
「怖かったんだから!」
「彩花は殺させない!」
話は纏っていた様で、三人は既に戦闘体制に入っている。
あっさりしているなぁ
『かつての主とは違うな。』
……ウルセェ。
俺は大剣を無から抜き、空に掲げる。
「戦うなら本気だ。いくぞ。」
ーー
怪人協会の会長であるエルネス•バードは争太の古い友人だ。太平洋戦争末期にまで遡る程の。
戦時中に怪人となった争太は戦争の怪異を止めるために米軍の怪人であったエルネスと力を合わせて戦った。
なのに彼らは今、敵対している。
私はそこを深く知らないつもりでいる。
だから私たちにとって怪人協会は人殺し集団である。と思うことにしている。
どれだけ悲しい過去があっても、忘れられても、人を殺したらそれはただの化け物…
だから私は許さない。
「シップちゃん、怪人協会の観測地点に着いたよ。月の怪異の方は大丈夫なのかな?」
《はい!御三方はしっかり月の怪異と……戦闘してますね…》
「うぇ!?今回は交渉に行くって言ってなかった!?」
《わかんないんです…怪人反応が一人増えてますし、何故か通信が途絶えていますし…》
「それでも私のやることは変わらない。」
《です……ね。怪人協会の人数は35人です。その中には2人の巨大な反応があります。》
「ヴォルフとミケちゃん?」
《はい》
「不思議なのよね、ヴォルフから強い反応が出るのは【力の怪人】として分かりやすいけど、【鎖の怪人】っていう弱い存在がなんで毎回、エルネス達と同等の反応を示すのか」
《それは私も気になっていました。本人に聞いてみては?》
それはいい考えだけど…
「聞かない方がいいかもしれないわね。」
《何故です?》
多分彼女は何かを隠してる。
それを指摘した途端何が起こるかわからない。
なんか、そんな気がする。
《あ!もうそこまで来ています!》
「分かったわ。」
通信を切る。
街の喧騒の中から周囲から見て異質な神父とポニーテールの女の子が現れる。
「これは、夢結真奈狐様…」
「夢の怪人…」
私は彼らの前に降りて、髪を靡かせる。
カッコいいでしょ?
「貴方達の相手は私。ここから先は行かせない。」
ご精読ありがとうございました。
エルネスのくだり必要だったか?
まぁいっか。




