第七十三話 混沌夜戦 そのニ
禍々しい冷気がレンのものであると感じた。
けど、何か違う。何か引っ掛かる。
だから、凍り落ちた【夜】の隣に立つレンを凝視した。
凝視した。だから、気がついた。
表情が違う。表情が、レンのソレじゃなかった。
「お前は、『誰だ!?』」
身体を槍の様に変形させて高速落下する。
地面に衝突した瞬間、砕けた身体を再構築させて万花万蕾の太刀を呼び寄せる。
「『その体は、レンのモノだ!!返せ!!』」
全力で一歩を踏み出して切先を敵に向ける。
「【花】も【夜】も、纏めて殺してやるよ!!」
俺と敵がぶつかる瞬間、龍の姿から人の形になった【夜】が声を上げた。
『そいつは、【氷】で、紛う事なき敵だ!!
記憶を取り戻した事が仇となったみたいだ。
【龍】の所で似た様な経験あるだろ?
気合いで勝て!!』
必要な情報は全部聞けた。
「ぶちのめしてやるよ」
【氷】はまるで、自分の身体を、レンの身体を差し出す様に両手を広げた。
ニタニタ笑った。
「死ねよ」
俺は刀を振りかぶり、肩から腰にかけて【氷】を切り裂いた。
「は?はぁ!?」
「【氷の怪異】が何、驚いてんだ?」
切り裂いた【氷】の傷から氷の結晶が溢れ出し、周囲の空気が凍てつく。
「あぁ、俺も、お前も、夜も……身体構造はほぼ一緒……不定形の怪異だからな。
ソレを見抜いたか?【人の怪異】なんだから、情に流されて欲しかったが……」
「俺が?『私が?』情に流される訳ないだろ。」
【氷】をボッコボコにしてレンを呼び起こすんだよ。
トドメを刺そうと【氷】にもう一度、切先を向ける。
「へぇ…」
【氷】は手元で武器を構築して俺達の刀を受け止めた。
「その武器、邪魔だな」
【氷】の武器と俺の太刀がぶつかった所が侵食される様に凍てついて、離れなくなる。
「えっ?」
吸い込まれる様に太刀から手が離れて【氷】の武器ごと放り出される。
「『まずい!!来いっ万花…』遅い!」
【氷】が武器を再構築して俺達の首元を狙う。
黒いドロドロを手の平から出して硬質化させて、小刀を作り【氷】の武器を防ぐ。
急拵えだから硬度は担保できなかったけれど、【氷】の武器も同様だったみたいで、双方がぶつかった瞬間で同時に崩壊した。
「ちっ……」
「アハっ!!急拵えでもやってみるもんだな!!『こっわ!!』」
もう一度、俺も【氷】も武器を構築する。
一手早かったのはそれに慣れている【氷】で、俺は一手遅れる。
【氷】が作り出した武器は大剣。俺はそれを見た瞬間、大剣を作り出し、ギリギリで受ける。
一手遅いのは弱点だが、後出しジャンケン出来るのが強い。
そもそも、武器構築の手順が違うのが強い。
多分、相手は武器の構築を一手で行える。
それに対して俺は、黒いドロドロを出して、形を形成して、硬質化させる。三手だ。まぁ、形成と硬質を同時にやってるからほぼ二手なんだけど、相手が武器を構築した瞬間に俺がそれを見て形成、硬質させるんだ。
「追いつこうとするのか?相変わらず【人】は真似事が好きだなぁ?」
レンの顔でレンがしない表情を浮かべる。
そういえば、レンが身体を奪われるのは二度目か。
ん?じゃあ、また龍炎を……
『バカなの?殺したいの?』
あぇ?でもあの時も……あ、優希の有無っ!
『優希の炎のマーキングあっても危なかったんだから、マーキングなしで無理に決まってるし、多分、これはそうじゃない。二重人格みたいな話でしょ?』
じゃあ暴力療法の継続か。
【氷】がランスを作り、俺の顔を目掛けて突きに来る。
それを見て、盾を作り、相殺する。
が、威力を殺しきれずに吹き飛ばされる。
相手も同様で姿勢を崩し、膝をつく。
「来い!万花万蕾の太刀!!
………収束終焉詠唱……万永春天…!!」
終焉の力を刀に込めて、更なる強化を目論んで刀を握り、飛び出そうと地面を踏み締める。
が、
「あれ?」
転んだ?
「限界…?いや、違う……身体が凍って…」
芯が凍ってる。身体が棒になったみたいだ。
「最高だろ?
氷に包まれる気分は、よ。」
【氷】は立ち上がり、武器を構える。
『お前は一旦、身体を治せ!!
俺も同じ症状になっていたが、結局は氷だ!!溶かせ!!』
【夜】が人の形のまま【氷】に飛びついて戦闘を始める。
……完全に混沌だな
【龍】の力を使って体温を上昇させて、氷を溶かす。
「そういえば、忍は何をしているんだ?」
『冥界を形成するための準備をしているんじゃない?【夜】を倒した時用の。』
「なるほどね」
ーーーーー
【氷】に飛びついて吹き飛ばす。
立ち上がり、髪をかきあげる。
『2000年ぶりの戦闘だ……衰えてたら萎えるぜ?』
【氷】も立ち上がり、その青い髪を解く。
「はっ!!それは俺のセリフだ。」
再び【夜】……いや、"星"の力を身をもって知るといい。
『ーーー星間視覚…!!』
ご精読ありがとうございました!!
あれ、ここって【夜】との修行の場なんじゃ……
キャラは勝手に動くから大変だね^^;
星の力、魅せてくれよ?
煌めいていこう!!




