第七十二話 混沌夜戦 その一
今のヒビ割れがレンの概念武装?
『何が起きたのか分からなかった……』
時間すらも凍らせたってことか?
「お前も十分規格外だよ、レン」
だから、俺も規格外の力を見せつけてやろう。
「彩花、歯、食いしばれ」
目の前の【夜】を前にして俺は身体中に【龍】の力を巡らせる。
【人の怪異】の力による身体変形能力には無限の可能性がある。
そこに質量保存の法則なんてない。
倍以上の大きさに変形できるんだ。
それに加えて【花の怪異】による他怪異の力を運用する力。
同時に二つを用いて、これまで思い付きすらしなかったこの方法を!!
「いくぞ……【龍化】……!!」
身体中から黒いドロドロを溢れさせ、その身を新しく創り変える。
翼を広げ、金剛石の様な爪を構築し、長い尾を伸ばし、【龍】の身体に変形する。
「ガァァァァ!!!!!」
大きな腕を振り上げて、【夜】を切り裂く。
夜空に張られた天幕が裂け、【夜】の姿がそこに現れる。
【夜】は再び、龍の姿に変わる。
『龍と、龍の戦いだ!!』
「消し……飛べ!!!」
胸に空気を送り込み、力を込める。
「龍炎!!」
夜に光が灯されて、【夜の龍】は翼で顔を隠す。
その閃光に身を隠し、大きく羽ばたいて速度を上げながら体の大きさを変え、姿を変える。
羽をしまい、尾をしまい、人の姿に戻る。
顔に髑髏のお面を付け、黒いドロドロのローブを身に纏い、"鎌"を握り、振り翳す。
「"死"せよ。」
鎌から放たれた斬撃を【夜】の背に回った俺が、【死】の攻撃を放つ。
『アッハハハ!!結局、借り物の力か!!』
【夜】の体の中に内包された星々が煌めいて、光が放たれる。
身体を離散させて光を避けるが、いくつかの身体が焼け落ちる。
「くっそ……」
花弁が舞い上がり、身体を再構築させる。
肩に傷ができた。
なんで?
『力が削られる事はあると思うけど、直接的な傷は産まれて初めてかな?
本気の星の光は概念的に傷を付ける。
お前と言う概念に直接ダメージを与えたんだから、傷を負うのは自明の理だろ?』
傷が開かない様に【花】の蔓で縫い付けて取り繕う。
「あまりにも強すぎる。
なにが、概念に攻撃だよ……規格外が多すぎて色々とインフレし過ぎててんだろ。」
『だとしたら、このインフレの波に置いていかれていない【花】は更に化け物だよ。
【夜】という化け物はそれに及ばない雑魚だよ。』
彩花、言うねぇ。
でも、その通りだ。
「前座風情がぁぁ!!」
黒いドロドロを溢れ出させ身体を大きくさせる。
ドロドロを足に集めて【夜】を踏み落とす。
【夜】が地面に落ちる。
その瞬間、地面から悍ましい冷気を感じた。
その気配はレンのモノだ。
ーーーーー
先陣を切って【夜】に莫大なダメージを与えた……気がする。
だから、一旦離脱して、サクラ達が【夜】を落としてくれるのを待つ。
「……"俺"は"人類"の敵な筈なんだがなぁ…
ううん、"僕"は"人類"の味方だよ……
過去は違う?
んな訳ない……過去はお前だし、現在も俺だよこれまでは記憶の有無が俺とお前を切り離していただけだ。
過去は過去だよ。
僕は僕だ。君はただの僕の"前世"だ。
だから、君は思い出に沈んでおくれ。
君は君、僕は僕なんだから。
は?んな訳ねぇよ。俺は、沈まない。
俺は死なない。俺は……お前だ。
止めて!!
沈むのは、お前だ。
……何を……する気…なの?」
レンが倒れる。
空でサクラが【夜】を蹴り落とした。
そして、【氷】が目覚める。
「……簡単な復讐だ。俺を沈めた【夜】にな。」
落ちてきた【夜】に手を翳し、力を込める。
「都合のいい力を付けたな。"郡山レン"…
凍り、沈め……絶対零度世界。」
身体から冷気が溢れ出し、落ちた【夜】を完全に凍らせる。
「この程度で死ぬやつじゃない。
この程度で死なないから、俺は負けた。」
『レンに……ソレを返せ。
お前は2000年以上前にボッコボコにしてんだよ。』
「だから、ソレの復讐だよ。
俺が俺であるために。
お前を殺し、【花】を殺す。」
『サクラ達の戦いは毎度毎度……
混沌に沈むのが定番なのか?』
「その定番はここで終わりにしてやるよ!!」
雷が落ちたかの様な爆音が響き、刀を握ったサクラが降り立つ。
「『その体は、レンのモノだ!!返せ!!』」
「【花】も【夜】も、纏めて殺してやるよ!!」
ご精読ありがとうございました!
氷との戦い、頑張りましょうね!!
夜との戦い、頑張りましょうね!!




