第六十四話 ある星の超新星
【死の怪異】の力を纏った【花の怪異】である新木彩花は空から降り注ぐ質量と熱を伴った光を的確に避けながら階段を駆け上るように飛んでいく。
『ほう、この密度の光を避けるか』
「見えるんだよ……この攻撃の"デッドゾーン"が!!」
『怪異の力の拡大解釈か!!いいぞ!それは怪異の戦いの本質にかなり近い!!』
怪異の力の拡大解釈。
それは、概念武装の運用方法や、相性問題と同じ区分の怪異の特性だ。
例として、
【戦争】は人が行うモノ。だから、人の天敵である【病】が【戦争】の弱点になる。
【夢】を見ることは人が生きている証拠であり、【死】はそれを否定する存在であるため、【夢】の弱点となる。
などが挙げられる。
ここで一つ、疑問が湧くと思う。
【人の怪異】はあらゆる怪異から弱点を突かれるのではないか?と。
それは半分正解で半分不正解だ。
【人】は乗り越える存在であり、継ぎ足して弱点を克服してきた存在だ。弱さはあるしかし、それ以上に30万年もの間、敵しかいないこの世界で繁栄してきた確かなる強かさがあり、その積み重ねの集合体である【人の怪異】は全ての怪異に弱点を突かれ、全ての怪異の弱点を突ける唯一無二の存在なのだ。
そして、【花の怪異】は世界に刻まれた終焉の力を宿しているため、全ての怪異に耐性を持ち、
全ての怪異の弱点を突ける。
「ごちゃごちゃ言う前に、勝負しよう!!私と【夜の怪異】、強い方がこの地を制するんだ!!」
『ハハっ!!思想が神のようになってきたじゃねぇか!!』
「最高の悪口だよ!!」
鎌を振り回しながら螺旋を描くように駆け上っていき、攻撃の有効範囲に入る。
ドス黒いタール状の死の力が込められた鎌を構える。
「死ね!!」
振るわれた鎌は空間を切り裂き、そのまま夜の翼を切り裂いた。
『なんだ、その攻撃……【死】はそんな攻撃方法を持っていな……なるほど』
【夜】は初見の攻撃を受け、困惑するが、すぐに理解する。
ドス黒いタールの飛沫の形が"桜の花弁"だったからだ。
「【花】に内包された"終焉"の力と、【死】の力のブレンドだよ。お味はどう?」
『発展途上……だが、限りなく最高に近い。』
「ふーん、じゃあ、これで満足に足るかな?」
彩花が手を広げ、落ちていく。
その下から、サクラがレンと手を繋ぎながら飛翔して来た。
「行けるよな?レン!!」
「任せろ!」
サクラはレンの手を握る腕を振り上げ、レンを放り投げる。
放り投げられたレンは手に力を込めて笑う。
「僕の本気の力を、受けてみな!!」
レンの体から漏れ出た冷気が空気中の水分を急速冷凍させていく。
『溢れた冷気だけで……』
【夜】が息を呑む。
怖気付いたからではない。
は己と同格である【氷の怪異】の全力を受けて見たいという期待を胸に抱いたからだ。
「"超越絶対零度世界"!!!」
その場の全てが止まった。
まるで、レンが時間そのものを凍結させたと錯覚するほどに。
しかし、そんな世界でレンを除きたった一人が動く。
サクラだ。
サクラは背中から六つの龍の顎門を生やし、その顎門を砲門として、龍の炎を装填する。
そして、ただでさえ高火力な龍炎を六つの顎門で同時に運用し、手のひらで更に龍炎を捻出する。
「全ての熱量を一つに。」
【死の怪異】との戦いで龍炎は単なる質量攻撃に収まった。だが、それは龍炎の運用方法として大いに間違っている。
龍炎は"幻想の炎"。
最初からそう言われて来た。
彩花が【死】の力と【花】の力を合わせて攻撃を放った。
レンが自分の中の力を極限まで収束させ、これまで見たことのない規模の凍結を行った。
なら、俺はどちらも糧として摂る。
人から盗み、奪い、自分のモノにするのは人の業であり、人の美徳だ。
「幻想の力なら、俺の思い通りに動きやがれ。」
顎門の中に収束した炎が糸のように細く、無数に溢れ出す。
全てが手のひらの中で溶け合い、混じり合う。
そこに"人の概念"を乗せる。
「これは人々の築いていく軌跡……"人は、夜を超える"」
炎の中に漆黒の、【人】の力が練り込まれていく。
「"業龍炎"」
掴んでいたものを離すように腕を広げ、編み込んだ炎を放つ。
放たれた炎はレンが凍らせた空間を溶かし、焼く。
そして、凍らされた【夜】にはさっきまでの炎を吸収するような力は無く、無防備な姿で果てしない熱をぶつけられ、爆発が起こる。
氷が砕け、【夜】が砕ける。
『はっ!正直、舐めてたよ』
砕けた龍体の中から人の姿をした【夜】が現れた。
【夜】は不気味に笑いながら、手を叩く。
「なにが、軽いだ。」
『うん……撤回するよ。彩花も、レンも、サクラも……とてもいい味だった。』
ふと、【夜】の上にある星空がまた、動いた気がした。
『だから、ご褒美だ。今、この世界において、誰も防ぐことのできない一撃を、見舞ってやる。』
「は?」サクラは声をこぼす。
「は?」レンも声をこぼす。
「はぁ!?」彩花もこぼした。
【夜】は不気味な笑みを浮かべながら手の上に一つの小さな星を現した。
『ついこの前、力が使いにくくなった瞬間があった。そして、サクラは俺の攻撃を知っているような口振りをした。ここから導き出せるのは、お前が俺の力をなんらかの方法を使って行使した。』
「!!」
サクラは驚きの表情を浮かべる。
『ビンゴかな?なら、この力は使っただろう?お前の使った力とは比べ物にならない本物の力だ』
手の上の星が赤く光り、大きくなっていく。
【夜】が言う通り、俺はそれを知っている。
「あー、詰んだわ」
サクラがボソッと呟く。
【夜】の手のひらの上の星が赤い色から白に変わる。
傍聴した星は、圧縮され、
その瞬間、星は終わる。
『ーーーある星の超新星』
全てが吹き飛んだ。
ご精読ありがとうございました。
リオ編、まだまだ続きますよ!!
ここでどれだけ積み重ねられるか、が、これからの章で大切になるから




