第8話 春風
その夜はなかなか眠れなかった。
私にとって今日は特別な日だ。
浜崎くんはきっと初めてではないだろう。
浜崎くんが中学三年生の時に、付き合っていた彼女を知っている。
もう眠ろうと布団にうずくまった。
次の日、私は久しぶりに部活へ行った。
相変わらず部活は楽しい。
運動をしていると色々考えなくて済む。
部活の帰り、校門の前にみさきと有里がいた。
有里に合わす顔がないな、と思いながらも
「みさき!有里!」と呼んだ。
今日は先輩グループとバイクに乗る約束をしている。
私達は一緒に待ち合わせ場所へと向かった。
待ち合わせ場所には浜崎くんもいた。
実は浜崎くんはこのバイク集団、当時は暴走族
と呼ばれていた、いわゆるリーダー、頭だった。
浜崎くんはいつも何台ものバイクの先頭で走っている。
「花!」
と浜崎くんに呼ばれ、今日は俺の後ろに乗ってほしいと言われた。
有里の目が気になって
「ちょっと聞いてくる。」と言って、
みさきと有里に話した。
「えー!いいなぁ!先頭じゃん。」
と有里が言った。
「せっかくだし乗ってきなよ。」
とみさきが言う。
結局私は浜崎くんのバイクの後部座席に乗って夜の街を駆け抜けた。
春の風を体中で感じながら
大きな背中を見つめていた。