青春を翔けていく
それから一週間の間、俺は生きる糧を失ったかのようだった。陸人がいないなんて、こんなに寂しいんだ……
何かをするにしても、やる気が出ない。
地元の友達と遊んでも、あんまり楽しくない。俺の問題を他の人にまで、巻き込ませるのは申し訳なかった。
家族にも、いつもより元気がなさすぎると心配された。それはそうなんだよ。陸人がいないから……
そんな風に一週間を耐えて、ようやく俺も東京に戻れるようになった。
帰りの新幹線。
家族に見送ってもらった。
早く会いたいから、のぞみ号。
あっという間に東京に着いた。
自分の家に着くなり、俺はスマホを取り出し、真っ先に陸人に連絡した。
「着いたよ。会いに行っていい?」
送信した瞬間、スマホが小さく振動する。思っていた以上に早い返信だった。
『もう着く』
どういうことだ?
俺は、到着時間なんて伝えていない。それなのに――。
不思議に思いながらふと窓の外を覗くと、そこに陸人が立っていた。
夕方近くの太陽が傾き始めたとはいえ、まだ陽射しは強い。空気にはじっとりとした夏の湿気が残っている。そんな中、汗を滲ませた陸人が俺を見上げていた。
なんでここにいるんだ。
心の中でそう思ったけれど、嬉しさの方が勝って、俺は衝動的に階段を駆け下りていた。
玄関を飛び出すと、じんわりと熱を帯びたアスファルトが足元から伝わってくる。でも、それさえも気にならないほど、陸人の姿が目に焼き付いていた。
陸人は、俺を見るなり強く腕を広げる。そして次の瞬間――俺はしっかりとその腕に包まれていた。
これまで以上に、ギュッときつく、激しく抱きしめられる。
「暑いだろ」
そう言いたかったのに、言葉が出てこなかった。ただ、陸人の体温が直に伝わってきて、それだけで胸がいっぱいになった。
陸人の腕は、まるで離さないと言わんばかりに強く俺を抱きしめている。その鼓動が、俺の胸にまで響いてくるようだった。
耳元で感じる陸人の息遣いに、心臓がさらに早鐘を打つ。
どれくらい抱きしめられていたんだろう――時間の感覚が曖昧になるほど、俺たちはじっとそのままの姿勢を続けた。
日差しが傾き、二人の影が長くアスファルトに伸びていく。近くの木々が風に揺れ、葉擦れの音が微かに耳に届く。
陸人の背中にそっと手を回した瞬間、俺は確信した。
この人が、俺のすべてなんだ。
ゆっくりと顔を上げると、陸人が優しく微笑んだ。その笑顔が眩しくて、俺はまた言葉を失ってしまう。
暑さと陸人の温もりが混ざり合った空気の中で、俺はもう二度とこの腕から離れたくないと、強く願っていた。
夕暮れの光が、長く伸びた影を柔らかく染め上げる。
俺たちはまだ、家の前で抱き合ったままだった。
「陸人……」
名前を呼ぶたびに、胸が温かくなる。この腕の中にいることで、どんな不安も消えていく気がした。
「もう離さない」
陸人はそう言って、俺をさらに強く抱きしめる。その言葉に、俺は涙をこらえることができなかった。
この瞬間、俺たちの間にあるものが、恋人とか親友とか、そんなありきたりな言葉では収まりきらないものだと、はっきりと感じた。
愛には形がない。
それは触れられるものでも、誰かに見せつけるものでもない。
誰にも定義できないこの絆は、きっと自由で、壊れることのないものになるはずだ。
俺たちは、誰にも負けない青い青い青春を翔けていくんだ。この瞬間から、これからずっと。
ただ、こうして互いを思いやる気持ちが重なり合い、時を経て深く育っていくものなのだと、今、陸人の温もりから教えられた気がする。
二人の間にある絆は、誰にも定義できない。だけど、それでいい。形がないからこそ、自由で、壊れることのないものになる。
俺は陸人の胸に顔を埋めながら、これがきっと愛なのだと確信する。
そして、この愛はこれからも変わらずに、俺たちの間にあり続ける。そう信じながら、ゆっくりと目を閉じた。
夕暮れに染まる空の下で、俺たちはそっと唇を重ね、また新しい一歩を踏み出していく。
大好きだよ、陸人……




