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青を翔ける  作者: 倉津野陸斗
第4章 思いの丈
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青春を翔けていく

 それから一週間の間、俺は生きる糧を失ったかのようだった。陸人がいないなんて、こんなに寂しいんだ……

 何かをするにしても、やる気が出ない。

 地元の友達と遊んでも、あんまり楽しくない。俺の問題を他の人にまで、巻き込ませるのは申し訳なかった。


 家族にも、いつもより元気がなさすぎると心配された。それはそうなんだよ。陸人がいないから……


 そんな風に一週間を耐えて、ようやく俺も東京に戻れるようになった。

 帰りの新幹線。

 家族に見送ってもらった。

 早く会いたいから、のぞみ号。

 あっという間に東京に着いた。


 自分の家に着くなり、俺はスマホを取り出し、真っ先に陸人に連絡した。


「着いたよ。会いに行っていい?」


 送信した瞬間、スマホが小さく振動する。思っていた以上に早い返信だった。


『もう着く』


 どういうことだ?

 俺は、到着時間なんて伝えていない。それなのに――。


 不思議に思いながらふと窓の外を覗くと、そこに陸人が立っていた。

 夕方近くの太陽が傾き始めたとはいえ、まだ陽射しは強い。空気にはじっとりとした夏の湿気が残っている。そんな中、汗を滲ませた陸人が俺を見上げていた。


 なんでここにいるんだ。


 心の中でそう思ったけれど、嬉しさの方が勝って、俺は衝動的に階段を駆け下りていた。


 玄関を飛び出すと、じんわりと熱を帯びたアスファルトが足元から伝わってくる。でも、それさえも気にならないほど、陸人の姿が目に焼き付いていた。


 陸人は、俺を見るなり強く腕を広げる。そして次の瞬間――俺はしっかりとその腕に包まれていた。

 これまで以上に、ギュッときつく、激しく抱きしめられる。


「暑いだろ」


 そう言いたかったのに、言葉が出てこなかった。ただ、陸人の体温が直に伝わってきて、それだけで胸がいっぱいになった。

 陸人の腕は、まるで離さないと言わんばかりに強く俺を抱きしめている。その鼓動が、俺の胸にまで響いてくるようだった。

 耳元で感じる陸人の息遣いに、心臓がさらに早鐘を打つ。

 どれくらい抱きしめられていたんだろう――時間の感覚が曖昧になるほど、俺たちはじっとそのままの姿勢を続けた。


 日差しが傾き、二人の影が長くアスファルトに伸びていく。近くの木々が風に揺れ、葉擦れの音が微かに耳に届く。

 陸人の背中にそっと手を回した瞬間、俺は確信した。

 この人が、俺のすべてなんだ。


 ゆっくりと顔を上げると、陸人が優しく微笑んだ。その笑顔が眩しくて、俺はまた言葉を失ってしまう。

 暑さと陸人の温もりが混ざり合った空気の中で、俺はもう二度とこの腕から離れたくないと、強く願っていた。

 夕暮れの光が、長く伸びた影を柔らかく染め上げる。

 俺たちはまだ、家の前で抱き合ったままだった。


「陸人……」


 名前を呼ぶたびに、胸が温かくなる。この腕の中にいることで、どんな不安も消えていく気がした。


「もう離さない」


 陸人はそう言って、俺をさらに強く抱きしめる。その言葉に、俺は涙をこらえることができなかった。

 この瞬間、俺たちの間にあるものが、恋人とか親友とか、そんなありきたりな言葉では収まりきらないものだと、はっきりと感じた。


 愛には形がない。

 それは触れられるものでも、誰かに見せつけるものでもない。


 誰にも定義できないこの絆は、きっと自由で、壊れることのないものになるはずだ。

 俺たちは、誰にも負けない青い青い青春を翔けていくんだ。この瞬間から、これからずっと。


 ただ、こうして互いを思いやる気持ちが重なり合い、時を経て深く育っていくものなのだと、今、陸人の温もりから教えられた気がする。

 二人の間にある絆は、誰にも定義できない。だけど、それでいい。形がないからこそ、自由で、壊れることのないものになる。


 俺は陸人の胸に顔を埋めながら、これがきっと愛なのだと確信する。

 そして、この愛はこれからも変わらずに、俺たちの間にあり続ける。そう信じながら、ゆっくりと目を閉じた。


 夕暮れに染まる空の下で、俺たちはそっと唇を重ね、また新しい一歩を踏み出していく。

 

 大好きだよ、陸人……

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