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青を翔ける  作者: 倉津野陸斗
第4章 思いの丈
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告白

 雄也がお風呂に入っている間、俺は何をするでもなく、ただベッドの上でボーッとしていた。時計の秒針が静かに刻む音だけが響く部屋で、俺の頭の中は雄也のことばかりだった。


 早く戻ってこないかな。


 そんなことばかり考えている自分が少し情けなくも思える。けれど、この距離感が心地よくもあり、苦しくもあった。


 ふと、スマホが短く震える。無機質な通知音が静寂を破り、俺は驚いたように画面を確認する。


『お兄ちゃん、上手くやってる?』


妹からだった。なんだ、急に。


「なにが?」


『雄也くんと』


「別に。普通だけど」


『あっそう』


 それだけの短いやり取り。スクリーンの文字はすぐに消えて、また元の静けさが部屋を支配した。


 側から見れば、こんなやり取りはよくあることだ。兄と妹の何気ない会話だと割り切れば、何てことはないはずだった。でも、俺にはその言葉が妙に重く響いた。


 上手くやってる? 妹は何を知っていて、そんな言葉を送ってきたんだろうか。


 俺の気持ちに気づいている? そんなはずはない。けれど、もし気づかれていたとしたら――そう考えると心臓がひどく波打つ。

 窓の外を見ても、真っ暗な景色が広がっているだけで、どこにも落ち着ける場所はない。


 雄也、早く戻ってこないかな。


 待っている時間がこんなに長く感じるなんて思わなかった。雄也が隣にいるときは、何も考えずに笑ったりふざけたりできるのに、一人になると途端に心が揺れる。

 俺はこの気持ちをどうしたらいいんだろう。好きだと伝える勇気もないくせに、雄也が離れることを考えると怖くてたまらなくなる。


 ふいに遠くのシャワーの音が止まった気がした。俺はドキッとして、ベッドから身体を起こす。


 もうすぐ戻ってくる。


 その事実だけで少し気持ちが楽になる自分が、やっぱりどうしようもなく雄也を好きなんだと再認識させられた。


 それから、少しくらいして雄也は帰ってきた。


「おかえり。長かったね」


 大体、四十分くらいだっただろうか。雄也にしては、かなり長かった。お湯を張って、入ったのだろうか。夏なのに?


「え、うん」


「どした?」


 あれ? どこか様子がいつもと違う気がする。


「ん? いや。なにもないよ」


「本当?」


 雄也は小さく頷いて、俺の隣に座った。そして、俺に抱きついて……


「陸人……。俺……、陸人のことが……す、好き……かも……」


「え……?」


 耳を疑った。信じられなかった。


「俺、陸人のことが好きなの……」


 雄也の震える声が、部屋の静けさに溶けていく。

 心臓が跳ね上がった。

 まさか。いや、そんなはずはない。

 俺がずっと隠してきた想いと同じものを、雄也も抱いているなんて、そんな奇跡みたいなこと……。


「そ、それって……」


 言葉が詰まる。心臓の鼓動が耳まで響いて、自分が今どんな表情をしているのかすら分からない。


「俺、陸人のことが好きなの……!」


 もう一度――まるで俺の疑念を吹き飛ばすように、雄也がはっきりと告げた。


「だ、だから……」


 潤んだ瞳が真っ直ぐに俺を見つめる。弱さも強さも、全部さらけ出してくれるようなその目に、俺は逃げることができなかった。


「だから、俺と付き合って欲しい……。付き合ってください……」


 一瞬、世界が止まったようだった。


 呼吸をすることすら忘れそうなほどに、俺は雄也の言葉に飲み込まれていた。そんなわけない。

 いや、そんなはずないと、何度も心の中で否定しようとしたのに、雄也の必死な声が俺の胸に深く突き刺さった。


「雄也……」


 名前を呼ぶだけで精一杯だった。その名前が震えそうになるのを必死に抑える。


「陸人も、俺のこと好きなんでしょ……?」


 その言葉は、まるで俺の隠していた想いをすべて見透かしているようで、胸の奥を鋭く刺した。


「え……?」


 顔が熱くなる。俺の秘密はバレていた? どれだけ必死に隠してきたつもりでも、雄也にはすべて見透かされていた?


「う、うん……。雄也、俺も……」


 震える声で、ようやく言葉を紡ぐ。


「俺も雄也のことが好きだった……」


 言った瞬間、雄也の目に涙が溢れた。


「やっぱり……」


 不安と喜びが入り混じった表情で、雄也が俺を見つめる。その顔が愛おしくてたまらなくなった。


「なんだよ」


 そう言って、俺はゆっくりと雄也を抱きしめた。雄也は驚いたように肩を震わせたけれど、すぐに俺の背中に手を回してくれた。


「嬉しいよ……」


 そう小さく呟く雄也の声に、俺はたまらなくなってさらに強く抱きしめる。


 この瞬間、俺たちは友達とか親友という関係を超えて、新しい一歩を踏み出した。


 俺は、我慢し続けてきた、雄也の唇を奪った。

 狂おしいほどの口づけを交わす。雄也はされるがままに俺に全てを委ねてきた。俺はそれに応える。

 雄也の小さな口に俺の舌を入れる。雄也が官能的な声で反応してくる。

 それがたまらなく可愛くて、俺はもっと雄也を奪いたくなる。雄也をベッドに寝転がらせて、上から覆い被さる。雄也はもう俺にされるがままだ。


「ん……。あぁ……」

 目を閉じて、小さな口から気持ちよさそうに声を出す。雄也の柔らかい唇と耳たぶ、喉仏、首筋を順に喰う。

 もう雄也は俺のもの。誰にも渡さない。


 これは俺だけの特権なんだから。

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