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青を翔ける  作者: 倉津野陸斗
第2章 天織り
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俺、どうしたらいい?

 陸人を急に家に誘った時、正直、嫌がられたらどうしようと内心不安だった。断られたらどうするか、その後の言い訳まで頭の中で考えていた。


 でも、そんな心配は必要なかった。陸人は、思った以上に嬉しそうに頷いてくれた。その笑顔を見た瞬間、胸がじんわりと温かくなり、心の底から安心もした。


 けれど、それと同時に、どこか以前とは違う感覚にとらわれている自分に気づいた。特に最近、陸人の隣にいると、なぜか落ち着く。そして、ふとした瞬間にこう思うことが増えていた。


 陸人の隣にいたい、と。


 今までこんな感情を抱いたことはなかった。中学生の頃、一緒にいたのはただ楽しいから、気が合うから。だけど今は、それ以上の感情が胸を満たしているような気がする。


(俺、陸人のことが好き?)


 ふとそんな考えが頭をよぎった。いやいや、そんなはずはない、と慌てて否定する。でも、陸人と目が合った瞬間、彼の何気ない笑顔を見るたびに、その否定は揺らいでいく。


 自分の気持ちが分からないまま、心の中で繰り返される「好き」の二文字。けど、答えを出すのが怖くて、そのまま曖昧なままにしておくことしかできなかった。


「雄也? どした?」


 ふと声をかけられて、顔を上げると陸人がこちらを覗き込んでいた。その声はどこか優しく、けれど少し心配そうな響きが混じっている。


「え、あ、いや。何も。大丈夫。」


 とっさにそう答えたけれど、明らかに不自然だったと思う。いろいろと思考が巡っていて、上手く言葉にできなかった。視線が落ち着かず、手元の箸を握りしめる。そんな俺を、陸人はじっと見つめていた。


「そっか、ならいいけど。」


 そう言いながら、彼はすっと視線を外した。その瞬間、少しホッとした反面、自分の挙動不審さに少し情けなさも感じた。


 その後、食事の時間には自然と沈黙が降りた。気まずいわけではない。ただ、何か話題を見つけたいと思う気持ちが募るばかりだった。でも、どうしても言葉が浮かばない。妙に意識してしまうせいで、口を開くタイミングを見失っていた。


 ふと、今朝のことを思い出す。陸人が俺の頬にキスをしたこと――あれは一体何だったのだろう。彼は、俺が気づいていないと思っているようだけど、俺は確かに感じていた。あの瞬間、彼の唇がそっと触れた感触を。


 正直に言えば、あれが嬉しかった。それがどういう感情から来るのかは、自分でも分からない。ただ、胸が少し熱くなったのは確かだった。


 思えば、陸人はこれまでにも、どこか愛情表現とも取れる仕草や言葉をしてきたような気がする。例えば、何気なく触れてくる手の温もりや、優しい言葉。それらが、ただの友達としての行動だったのか、それとも別の意味があったのか――今になって考え込んでしまう。


 もし、あれが陸人なりのアピールだったとしたら……俺はどうするべきなのだろう。彼の気持ちに応えるべきなのか。いや、そもそも本当にそうなのか。勘違いという可能性も否定できない。それを考えると、どうしても答えを出すことが怖くなってしまう。


 だから、まだ様子を見た方がいいのかもしれない。焦って行動して、もし違っていたら――その時のことを思うと、足がすくむような気がした。


 そんなことを延々と考えていたから、朝ごはんの味は全く記憶に残らなかった。美味しかったのか、不味かったのかさえ分からない。ただ、目の前にいた陸人の横顔ばかりが、頭に焼き付いていた。


 陸人は特に気にしていない様子で、静かに食事を続けている。

 時々、これ美味しいとか、味付け上手いとか言われたけど、曖昧な返事しかできなかった。

 彼の穏やかな仕草を横目で見ながら、また自分の思考の渦に引き込まれていく。


 何も言葉にできないまま、時間だけがゆっくりと過ぎていった。その沈黙は、どこか居心地が悪いようで、けれど心地よいような、複雑な空気に包まれていた。

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