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青を翔ける  作者: 倉津野陸斗
第2章 天織り
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甘い期待

 陸人から「俺ん家こない?」とメッセージが届いた。


 画面を見つめながら、ふと昔のことを思い出す。そういえば、子供の頃もこうやって「家に来ないか」とお互い誘い合っていた。ゲームをしたり、宿題を広げたり、夜が更けるまでくだらない話で笑ったり。

 そんな何気ない時間が、今になって懐かしく胸に迫ってくる。


 今日は幸い何の予定もない。特に断る理由も思い浮かばず、気軽に「じゃあ、一時間後に行く!」と返信した。


 送信した後、すぐに準備に取りかかる。と言っても、特別な用意は何もない。スマホと財布をポケットに入れて、軽く髪を整えるだけ。


 陸人の家までは自転車で十分ほどの距離。まだ時間には余裕がある。部屋を出る前に、少しだけベッドに腰を下ろした。こうしてぼんやりと待つ間にも、記憶は自然と昔の風景を引き出してくる。


 ゲームをして盛り上がった夜。わからない宿題を一緒に悩んだ時間。果てはそのまま疲れて二人で寝てしまったこともあった。目を閉じると、あの頃の光景がまるで昨日のことのように浮かび上がる。


 そして、ふと思った。今日はどうするんだろう。

 昔みたいに遊ぶのか、それともただ話すだけか。それとも、何か特別なことでもあるのか。少しだけ胸が高鳴る。いっそ訊いてみようかとも思うが、それを言葉にするのがなんだか気恥ずかしい。


 時計を確認する。まだしばらく時間はある。

 軽く深呼吸して立ち上がる。扉を閉める音が、小さく響いた。


「今日は、泊まっていいの?」


 返信が来るまで待つ。許可されれば、着替えやらタオルやら、いろいろ持っていこう。


『泊まっていいよ!』


 返事はすぐに届いた。それを確認すると、自然と体が動き出し、準備を始めていた。リュックを取り出し、中にタオルや着替えを詰め込む。念のため必要そうなものを揃えてみたが、まだ時間はたっぷりある。

 ふと手を止め、思いついた。


(そうだ、早めに行って驚かせてやろう)


 そう決めると、準備にも少し勢いが増した。カバンを肩にかけ、自転車の鍵を掴む。外に出ると、夏の強い日差しが体にまとわりつくようだったが、それも気にならない。


 ペダルを漕ぐたびに風が頬を撫で、少しずつ陸人の家が近づいていく。


 思いがけない早めの訪問に、どんな反応をするだろうか。

 それを想像するだけで、少しだけ笑みがこぼれた。

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