黒王戦鬼
蓮斗「.....ん、ここ、は?」
目が覚めるとそこはどこまでも続いてるかのように思える程広大な荒野だった。草木が1本も生えておらずまるで大きな争いがあったかの様な寂れた場所。上半身を起き上がらせて周りを見ても人っ子一人居ない静かな空間。もっと周りを見ようと手を地面に着けた時手に何かがふれた。
蓮斗「?」
俺は疑問に思い手に触れたものに目を向ける。そこにあったモノは人間の首だった。
蓮斗「うわぁ!?」
初めて見る人間の生首。その首の後ろには風ですなが吹き飛ばされ先程まで見えなかった多くの死体が転がっていた。100や1000などといった生ぬるい数ではないと一目で悟った。
蓮斗「なんだよこれ、何がどうなってんだよ!?」
平静など保ってられなかった。返事など返って来ないと分かっていてもそう疑問を口にするしか出来なかった。辺り一面に広がる人間の亡骸、それを貪るために集まっている動物。まさに地獄。それ以外に形容する言葉を俺は知らない。この惨劇を見て呆然としていたが自身の後ろから亡骸を食いに動物の群れがやってきた。
蓮斗「やばっ、、、」
襲われるかと思った。だがどういう事か動物たちは俺の体をすり抜け亡骸を貪り始めた。
蓮斗「本当に何がどうなってんだよ、、、」
今自分が置かれる意味不明な状況に理解が追いつかない。だがふと先程教室で意識を失う寸前に見た光景を思い出す。
蓮斗「え、これって」
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意識が戻って10分ほどたった。今の現状で分かっている事はこれは誰かの記憶だという事。先程から動物や瓦礫が自身の体をすり抜けていく。まるで幽霊になったかのような気分だ。
蓮斗「何でいきなり、それにこれは誰の記憶だ?そしてなんで俺なんだ?」
疑問が尽きない。行く宛てもなく荒野を彷徨っていた時微かに声が聞こえた。声は小さいが誰かが叫んでいる様なそんな声が。
蓮斗「あっちか!」
俺はその声を頼りに丘を走って登った。丘の頂上に着いて目に飛び込んできたのは魔法を扱う大勢の人間とそれを相手にたった一体で戦う鬼のような存在だった。その集団の後ろには大きな街みたいなものがあった。そこを守っているのだろうか、あの鬼を近づかせまいと何人もの人間が魔法を放ち、武器を手に突撃して言った。鬼はそんなに者達をなんの躊躇もなく殺した。何故あの街を襲っているのかは分からない。でも何故かあの鬼からとても強い憎しみと悲しみを感じた。その時俺はとあることに気がついた。
蓮斗「ちょっと待て、これってまさか。」
俺はすぐさまあの鬼に目を向けた。そっくりだった。意識を失う寸前に見たあの鬼に。そして意識を失う前先生が説明していた闇属性。一瞬にしてそれらの情報が頭の中で繋がり一つの答えを導き出した。
蓮斗「これって、闇属性を唯一使えた人間の記憶なのか?」
頭が混乱した。なぜいきなり俺はそんな存在の記憶を見ているんだ?なんで俺だけ?そんな疑問が頭の中を駆け巡る。すると音が聞こえなくなっているのにようやく気が付いた。ふとそちらに目を向けるとそこには人間の集団が全員殺され鬼がたった一人立っている光景だけがあった。よくよく鬼の顔を見ると目から黒い何かがとめどなく溢れ続けていた。注視していたからか声が聞こえた。地の底から響く様なとてつもなく冷徹で恐怖心を煽る声で一言
「スベテホロボシテヤル」
蓮斗「ヒュッ............」
たった一言。たったその一言だけでとてつもない殺気を感じた。だが何故かは分からないがあの鬼からは殺気以上になぜか哀しみを感じた。鬼を見ていたら鬼がこちらに振り向き、目が合った気がした。
蓮斗「えっ」
その瞬間頭の中に一つの光景が見えた。そこには1組に夫婦とその子どもの家族写真のような光景だった。その光景を見た瞬間世界が崩れ始めた。
蓮斗「なんで急に!?」
そう思った時には自分が立っていた足場が崩れ落ち俺は奈落へと落ちていった。
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「れ、、、れん、、、、蓮斗!!」
私はその呼びかけで目を覚ました。目をあけ、声の方向に目を向けると香織、翔さん、天羽がいた。
蓮斗「ココは、、、、、」
体を起こし周囲を見渡すとそこは学校ではなく病室だった。なんでこんな所になんて思っていると
蓮斗「うおっ」
香織がいきなり抱きついてきたのだ。その目には安堵と涙が浮かんでいた。
香織「グスッ、心配したんだから、、、」
蓮斗「えっと、心配させちゃって申し訳ない...?」
翔「あぁ。ほんっとうに心配したぞ!!!」
そう言いみんながやっと緊張が解けたのか話しかけてきた。話を聞くと私は学校で倒れてから2日も意識を取り戻さなかったらしい。意識不明の原因も不明だそうで倒れた時はすごい騒ぎになったらしい。
蓮斗「いや、あのホント、スミマセン、、、、」
そう言い私はベットの上で土下座をした。香織はまだ涙を流しているが翔さんが落ち着かせているところだった。
蓮斗「(ほんとにごめんね香織)」
すると病室の扉が開き医者の先生と母さんが入ってきた。
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色々な手続きが終わったのは目覚めた日の翌日だった。
母「にしても、大変だったわね蓮斗。」
蓮斗「ハハハ。本当に申し訳ない」
母「いいわよそれくらい。それにしても不思議よね。今まで1度も病気しなかった蓮斗が倒れて入院なんて。」
蓮斗「本当に俺にも原因が分からないんですよね。いきなり変なモノが見えて気がついたら意識失ってて。本当に嫌になるね。」
母「変なモノ?」
蓮斗「あ、何でもないから気にしないで。」
そんな話をしている内に家に着いた。すると帰り着くと同時に父さんが帰ってきた。
父「お、蓮斗。帰ってきたんだな。おかえり」
蓮斗「うん、ただいま。」
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???「どうしたんだ?龍鬼」
龍鬼「いや?ちょっとわかった事があるからあんたには教えておかないとでしょ?祇梨蓮斗の事。」
???「.....話せ」
龍鬼「あの少年が倒れてから少し見せて貰ったけどあれは外的要因じゃなくて内の問題だ。それに一瞬だけ感じたけどあれはまず間違いね。」
???「やっぱりか.....」
龍鬼「あれは《黒王戦鬼》だ。」
???「........」
龍鬼「これからどうなるのか、楽しみだね。」
龍鬼「ねぇ、〇〇」
母=祇梨紗奈
父=祇梨清和