躍動
滝壺「霊基解放・〝空狐長〟完全解放」
滝壺「赤月焼爛火葬狐」
その忌み名を口にした途端、滝壺間宮の周囲を業火が包む。赤月焼爛火葬狐、世界にたった3体しか存在しない人から冠位に至ったイレギュラー中のイレギュラー。その1体が世界が見ている前でその正体を明かした。
デレ「貴様...!ま、まさか、執行官!?」
デレストロ・アグロは驚愕した声を上げる。無理もない、冠位指定執行官とはパンデモニウムの大幹部であろうと触れる事すら許されない枠外の怪物だ。デレストロ・アグロの目に焦りが浮かぶ。
滝壺「おいおい、さっきまでの威勢はどうした?」
業火に包まれる滝壺間宮はまるで全てが見えてるかの様にそう口走る。デレストロ・アグロは混乱しながらも冷静に今の状況を分析していた。
デレ「(まて、もし仮に冠位だったとしても厄災の総数は280万体。全てを殺すにしてもいくら冠位と言えど時間はかかるはずだ。その内に撤退せねば!)」
デレストロ・アグロの表情が何かを決心したものへと変わる。その次の瞬間デレストロ・アグロは再び厄災達へ命令を出す。
デレ「厄災達よ!能力解放を許可する!この国を、命を全てを滅ぼせ!」
その声を合図に厄災達の雰囲気が変わる。体の一部が発光し周囲の重力が重くなる。
天羽「やべぇ、体が重い...!」
蓮斗「これが、厄災.....!」
厄災「「ガァァァァァァァァァ!!!」」
厄災達は咆哮を上げこちらへ向け走り始める。しかし、その侵攻はすぐに止まる事になる。
滝壺「うるさい。」
その言葉と共に業火が消え滝壺間宮の姿が顕になる。そこには狐の面をつけ黒の着物を身に纏い羽織を肩にかけた滝壺間宮の姿があった。その姿を目にしたデレストロ・アグロの顔には冷や汗が流れていた。
デレ「これが、イレギュラーか...!」
滝壺「初見の感想がそれって少し傷つくなぁ...それにしてもいいのか?俺の間合いだけど。」
その言葉を聞いた途端デレストロ・アグロは魔法を発動し防御を固める。次の瞬間、剣の盾に大鎌が振り下ろされた。
デレ「ぐ、ぐぅぅぅぅぅぅ!!!」
何層にも渡る剣の盾は一瞬にして切り裂かれデレストロ・アグロが持つ大剣の剣幅の半分まで刃が入っていた。
滝壺「お、これを止めるか。じゃこれはどうだ?」
そういうと同時に左手が跳ね上がり拳が剣にめり込む。剣がひしゃげ異音を鳴らす。
デレ「なん、だ!この馬鹿力!」
デレ「二重詠唱・貫雷氷華」
天羽「空間系統最上位魔法・広域展開〝次元断層〟」
蓮斗「闇系統最上位魔法・黒掌触腕」
祇梨蓮斗と天羽綾人は同時に魔法を発動し魔法と厄災を迎撃する。
蓮斗「はぁ、はぁ...クソ。力が出ねぇ...!」
天羽「祇梨、今は休め。今のお前は魔力がほとんど無いんだ。」
蓮斗「いや、魔力は少し回復した...!いつまでも休んでられるか...!」
滝壺「ふむ、蓮斗君は休むつもりはもう無いのか。よし、だったら少し手助けしてあげるよ。」
天羽「え?」
滝壺「生きる生命、木漏れ日に歌う、光の粒、聖者の教え、広がる神域、笑い合う声、楽園の塔、狐の丘」
滝壺「極大魔法・黄金平原〝狐之都〟」
滝壺間宮がそう魔法を唱えると突然その場が揺れ始める。その揺れは徐々に激しさを増し光がその場を包んだ。
天羽「...え?何だこれ....」
光が収まり目を開けると辺り一面がひらけた平原になっていた。いたる所に狐がおり、祇梨蓮斗達の様子を伺っていた。
蓮斗「これは、世界そのものを塗り替えたのか?」
滝壺「せいかーい。この魔法は結界で閉ざすんじゃなくて世界そのものを自身の能力で作り替えるんだよ。よって、強制的に解除もできないし効果も問答無用で付与されるんだよ。」
天羽「効果を付与?その効果って一体...」
滝壺「効果は敵味方で変わるんだけどまず味方側への効果は一つ、魔力量の倍化並びに回復量増加。二つ、身体能力向上。三つ、状態異常完全無効。四つ、超速再生付与って所かな。」
天羽「え、それだけでだいぶイカれ性能じゃ...」
滝壺「そして敵側への効果は、一つ、魔力の大幅減少、二つ、身体能力半減。三つ、状態異常のバーゲンセールって感じ。」
蓮斗「敵に対しての殺意が凄いな...」
滝壺「あはは、まぁこんな感じに味方は強化して敵を弱体化する能力だから、君達も暴れていいぞ!」
滝壺間宮がそう叫ぶ。すると
イルア「氷系統最上位魔法・獄氷華」
シエル「水系統最上位魔法・溶解侵食〝蔓蓮華〟」
蓮斗「!!」
後方からの最上位魔法の攻撃。それは滝壺間宮の魔法により弱体化を受けた厄災達の命を問答無用で狩りとった。滝壺間宮が後ろを見るとそこには神聖国家アルベシアの最高戦力達が立っていた。
イルア「皆の者!旅の者たちに全て任せっきりでは我らの立つ瀬がない!ここで挽回するぞ!」
シエル達「「はっ!!」」
イルア・シルド・アルべシアのその声を聞いた騎士団、魔法師団、国下六王剣が声を張り上げ厄災達に向かい突進していく。
イルア「滝壺殿、今回は我らに挽回する機会与えて下さり感謝する。」
滝壺「いやいやぁ〜。気にしなくていいよ。」
イルア「感謝します。それと、蓮斗くん。全部終わったらお話しようね。」
蓮斗「...あぁ、分かった。」
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デレ「くそっ!!テメェら、邪魔すんな!!」
シエル「その申し出は聞けんな。貴様は我らの敵だ!ここで何としても捕らえる!」
デレ「ちっ!」
デレ「剣之豪雨〝痺雷魔剣〟」
シネア「土系統最上位魔法・大陸崩牙」
デレ「ぐっ...!厄災共!早くこっちに加勢しろ!」
滝壺「よそ見出来る程お前は今余裕なのか?」
デレ「なっ.....」
滝壺「少し出力を上げようか。」
滝壺「火系統最上位魔法・蛇炎」
デレ「剣之防壁〝水龍魔剣〟」
デレストロ・アグロは火に有効な水の魔剣で防御を展開する。しかし、滝壺間宮の魔法の威力は常軌を逸していた。通常蛇炎のスピードはおよそ時速500kmなのにも関わらず、今滝壺間宮が見せたのは光を超える速度だった。
デレ「ガバァァァァァ!!」
発する熱も通常時とは比べ物にならない程であり、蛇炎の通った場所は融解を超え蒸発していた。
デレ「(まずい...奴らのペースに飲まれた!このままでは、負ける...!こうなったなら!)」
デレ「死霊系統最上位魔法・邪神転換!!!」
滝壺「!」
滝壺間宮はデレストロ・アグロのその咆哮にも似た詠唱を耳にし少し表情が険しくなる。すると、国の周りにいた数十体の動物が一瞬にして化け物へと成り果てた。
シエル「まさかっ!」
シネア「国民を狙っているのか!?」
その意図を遅れて理解したシエル達は焦りの表情を見せる。その時だった。
蓮斗「滝壺さん、極大魔法の範囲って、城下町も含まれますか?」
滝壺「あぁ、この国全土に影響が出るように調整した。好きにやりな、蓮斗君。」
蓮斗「分かりました。...行けるか?アルド・グレイヴ。疲れてるだろ?」
アルド「うるせぇ。生かされたんだ、少しは働かねぇと罰が当たるってモンだろ。」
蓮斗「そうか。じゃぁ、行こうか。」
蓮斗「炎熱加速×黒王戦鬼」
アルド「災速之神」
その瞬間、祇梨蓮斗とアルド・グレイヴの姿が忽然と消えた。瞬間、凄まじい衝撃波がその場を襲う。
天羽「あちゃー、すげースピード。」
滝壺「あの2人、なんか似てるな。」
イルア「似てない様に見えますが...」
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蓮斗「闇系統最上位魔法・黒掌触腕」
アルド「噴っ!!」
滝壺間宮の魔法の効果で更に速さを増した二人は次々と化け物を殺して行く。その目には先程あった絶望は無く、希望の光が宿っていた。
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デレ「アルドォォォォォ!!」
シエル「水系統最上位魔法・水龍衝波」
デレ「邪魔だぁ!!」
イルア「二重詠唱・氷風之檻」
シネア「土系統最上位魔法・岩神之掌底」
デレ「(規模がデカすぎる...避けらんねぇ!)」
デレ「剣之防壁〝風神魔剣〟」
イルアとシネア、シエルの連携によりデレストロ・アグロは大ダメージを負う。焦りと苛立ちがここに来てデレストロ・アグロに牙を剥く。
デレ「この俺が、お前らみたいな雑魚に!負ける訳がねぇんだよ!厄災共!街を攻撃しろ!」
怒りに任せそう叫ぶが厄災達はデレストロ・アグロのその命令に従う事は無かった。
デレ「おい、聞いてるのk......」
ごうを煮やし振り向いたデレストロ・アグロの目には想像を絶する光景が目に飛び込んできた。
滝壺「いやぁ、流石に龍鬼達から厄災以外で本気だすなって言われてたから、最近運動不足だったんだよなぁ。久々に運動できて気持ちいいわ。」
厄災達の死骸が散乱し炎で焼き爛れた顔がデレストロ・アグロを見る。正しく地獄がそこには広がっていた。
デレ「全、滅........?」
滝壺「まさか、たかだか数百万ぽっちで、俺から逃げられると、本気で思っていたのか?」
デレ「........」
もはや、言葉は出なかった。滝壺間宮の瞳がデレストロ・アグロを映す。デレストロ・アグロは体を引き裂く様な圧に襲われる。
デレ「(逃げなければ...!)」
そう心の中で絶叫し身を翻した瞬間、空から何かが降ってきた。轟音がその場に響き土煙が上がる。土煙は徐々に晴れ降ってきたモノが徐々に姿を表す。そこには黒い鬼と光速の怪物が立っていた。
蓮斗「今更、逃げられるとでも?」
アルド「元同僚からのアドバイスだ。投降しろ。そうすりゃ、俺もお前もすぐに殺されたりはしない。まぁ、聞く気がなければどうでもいいが。」
デレ「っ....」
デレストロ・アグロは再びシエル達の方を向き走り出す。
デレ「邪魔だぁぁぁぁ!」
半狂乱状態。極度の焦りと恐怖、絶望によってもはや正常な判断など出来なくなっていた。
天羽「次元系統最上位魔法・次元龍〝跋扈〟」
天羽綾人が発動させた魔法でデレストロ・アグロは弾き返されその場に倒れ込む。何とか立ち上がろうとした瞬間、デレストロ・アグロは何者かの影で覆い隠された。
デレ「......?」
イルア「投降しろ大幹部、デレストロ・アグロ!」
デレ「う、うわぁぁぁぁぁ!!」
発狂しながらデレストロ・アグロの凶刃がイルアへ向け振るわれる。が、刀身が消失しその刃が届く事は無かった。
蓮斗「イルアに、手を出すな。」
イルア「よ、呼び捨て..../////////」
蓮斗「...?どうかしたのか?」
イルア「い、いや、何でもない。」
蓮斗「なら良いんだが。」
滝壺「デレストロ・アグロ、この包囲網を俺の魔法が発動してる状態で突破するのは無理だ。大人しく、降参しろ。」
デレ「............」
デレストロ・アグロは今の圧倒的不利な状況に絶望し、発狂し、狂乱しながら策を講じる。しかし、今の状況を打破する策は1つとして思い浮かぶ事は無かった。
蓮斗「.....!こいつ、意識が...」
天羽「気絶、してるな。」
シエル「ていう事は...」
イルア「この戦い...」
滝壺「あぁ、俺達の勝ちだ.....!?」
勝利ムードが漂い始めた瞬間、何者かの攻撃がこの場にいる全ての者に降り注ぐ。それをいち早く察知した滝壺間宮が防御魔法を展開する。
天羽「何が...!!」
蓮斗「デレストロ・アグロが居ない!」
シネア「何だって!?」
今、この場で気絶していたデレストロ・アグロの姿が忽然と消えた。その事に一同は混乱しザワついた。しかし、滝壺間宮とアルド・グレイヴはなにかに気づいていた。
滝壺「おい、そこに居んだろ?姿を現したらどうだ?」
???「おや、バレていましたか...」
アルド「(この声...!)」
アルド「蓮斗!闇魔法で全員の視界を奪え!」
蓮斗「はぁ!?」
アルド「いいから早く!」
蓮斗「わ、分かった!」
蓮斗「闇系統上位魔法・暗転黒視」
その詠唱と同時に滝壺間宮を除く全ての者の視界が失われた。それに加えシネアの土魔法に密閉され音も断絶された。滝壺間宮が相対している存在は、
レレ「初めまして、空狐長。私の名前はレレイス・スフィア。殺神、堕落虚無の名を持つ者です。」
滝壺「堕落虚無ねぇ、そいつを持ってるって事は、味方って訳じゃないよな?」
レレ「分かっているのに聞くとは、貴方、性格悪いですね。えぇ、そうです。」
滝壺「性格悪いって言わないでね〜。...今ここで戦ってもいいが、これ以上戦いを長引かせたくない。今すぐ失せろ。さもないと.....」
レレ「分かっていますとも。私がここに来た理由はこの馬鹿の回収だけです。貴方々と事を構えるつもりはありません。でわ、私はこれで...」
そう言い残し、堕落虚無と名乗ったレレイス・スフィアは姿を消した。何とも言えない空気が流れていると祇梨蓮斗がアルド・グレイヴを縛り上げながら声を上げた。
蓮斗「何はともあれ、この戦争は俺達の勝ちだ。」
その言葉を言い終えると同時に祇梨蓮斗は意識を失う。緊張の糸が切れたためだろう。
滝壺「今は、寝かせてやろう。」




