絶望のち希望
蓮斗「アルド、グレイヴ...?」
アルド「ガハッ......!!!」
戦いが終わった、そう思ったと同時に2人を襲った剣。祇梨蓮斗はその攻撃を察知できず剣が当たるはずだった。しかし、アルド・グレイヴにより祇梨蓮斗は助けられ命を奪う攻撃から守られた。
蓮斗「何が....」
アルド「(傷が、再生しない...これは...)」
?「おいおい、負けてんじゃねぇかアルドよぉ...」
2人が何が起こったのか考えていると前方からそんな声が聞こえた。
アルド「やっぱり、てめぇか、デレストロ...!」
蓮斗「デレストロ...?」
デレ「よぉ、特異点のガキ。俺はパンデモニウム大幹部が1人、〝死の剣雨〟デレストロ・アグロだ。」
蓮斗「大幹部...!」
デレ「いやぁ、まさか大幹部をたった一人で、しかも正面から打ち破るとわな。成長が早すぎるぞクソガキ。」
そう言い終わりと同時にデレストロ・アグロは疲労困憊の祇梨蓮斗の前に超速で移動する。その手には大剣が握られていた。
デレ「これ以上成長されるのは面倒だ。ここで死んでいけ。」
蓮斗「闇系統最上i......」
祇梨蓮斗は魔法で迎撃しようとする。しかし、最早そんな魔力、残っていなかった。食らうと確信した次の瞬間、アルド・グレイヴが間に割って入る。
アルド「こいつは、殺させねぇ...!」
蓮斗「アルド....」
デレ「あ?負けた上に、抹殺対象を守るってのか?お前、どうなるか分かってんのか?」
アルド「あぁ分かってるよ!リーダーに伝えろ!俺はパンデモニウムを抜ける!」
デレ「はぁ...?」
アルド・グレイヴのその言葉を聞いたデレストロ・アグロは眉を顰める。
アルド「俺にも、初めて友達が、できたんでな...!殺させねぇよ!」
デレ「友達、だと?」
そう呟くと同時にアルド・グレイヴに頭突きを食らわせる。よろめくと同時に胸ぐらを掴み膝蹴りを叩き込む。
アルド「ガハッ.......」
デレ「何ぬるい事言ってんだてめぇ...てめぇ今ここで死ぬんだよ!」
胸ぐらを引き寄せ怒号にも似た声でデレストロ・アグロは叫ぶ。
デレ「国一つ滅ぼせず、負けて、その上友達だァ!?恥を知れ!」
アルド「恥さらしってのは理解してる...だが、あそこまで真っ直ぐ、俺見て叫んだんだ...それに答えねぇで、何が人間だ...!」
そう言うとアルド・グレイヴはデレストロ・アグロに向け拳を放つ。しかし、その拳は空を切りデレストロ・アグロを見失う。その瞬間、ドスッという鈍い音がその場に木霊した。
アルド「あっ........」
デレ「裏切りもんが...惨めに死ね。」
背後から大剣で一突き。心臓はおろか、多くの臓器が損傷し、胸椎すら完全に切断された。
蓮斗「何、すんだ、てめぇ!!」
アルド・グレイヴが貫かれるのを目の当たりにし激情に飲まれた祇梨蓮斗がデレストロ・アグロに襲い掛かる。
デレ「こいつ、魔法を...!」
その体は最早限界をゆうに超えていた。しかし、自身を友と言い命懸けで救った者に対する残虐な仕打ち。到底、我慢出来るものではなかった。
蓮斗「お前を殺す!」
激情のまま動く殺戮人形、そんな者は大災害に認定される存在には通用することは無い。
デレ「黙れ。」
横薙ぎ一閃。腹部に剣を受けた祇梨蓮斗はその身体を激しく切り裂かれ吹っ飛ばされる。
蓮斗「アガッ........!!!」
夥しい出血と吐血。最早それは命に関わる致命傷だった。しかし、祇梨蓮斗は再び立ち上がる。
蓮斗「死なせ、ない...!お前を、倒して、みんなたすけるんだ.....!!」
デレ「(小僧の声とは別にもう1つの声が重なっている...その上、徐々に口が回らなくなっている...間違いない、完全なる暴走の前ぶれか...)」
デレ「今のお前近づくのは得策では無さそうだ。」
そう言いデレストロ・アグロは宙に浮かぶ。
デレ「何も、お前達やこの国を壊すのは俺でなくてもいい。さて、お前一人で、何とかできるか?黒王戦鬼。」
そう言いデレストロ・アグロは空間魔法を発動させる。しかし、今発動しようとしている魔法は空間魔法には無い魔法だった。
蓮斗「なに、を...」
デレ「さぁ、顕現しろ、破壊の災害!」
アルド「........!!」
悪辣な笑みを浮かべながら発動された魔法は門だった。門が開き閉じ込められていた存在が外へ出てくる。出てきた存在は触れてはいけない怪物だった。
アルド「やはり、、、厄災か.....!」
解き放たれたのは世界三大厄災の1つ、圧殺之獣、〝デル・ハザード〟だった。
蓮斗「.......!!」
デレ「一つ忠告しておいてやる。コイツらは群れで動く。一体なら勝てるだろうがコイツらの群れは1つで数百万だ。お前一人じゃ、どうにもできない。」
蓮斗「数、百万.....?」
途方もない数を聞き、脳がそれに強制的に敗北の文字を出す。いくら、黒王戦鬼を完全に解放したとて、厄災相手ではその数で押し潰される。
デレ「ハハハハハ!その顔!勝てない事が分かって絶望したか!?」
そうデレストロ・アグロは腹を抱え笑う。今祇梨蓮斗がどんな顔をしているかなんて祇梨蓮斗は知らない。だが、希望を砕かれ絶望に支配された圧倒的な不運だけは祇梨蓮斗の胸に突き刺さっていた。
デレ「そんな稀有な力持ってるんだ、楽には死ねねぇだろうなぁ...ハハハハハ!」
ゲラゲラと笑うデレストロ・アグロの顔には愉悦と多幸感の色が滲む。それに対し祇梨蓮斗は膝から崩れ、ただ絶望していた。
デレ「さぁ行け!厄災共!」
その呼び声を合図に厄災達が動き始めた。もはや、祇梨蓮斗も、アルド・グレイヴも、戦う余力など残っていなかった。
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「二重詠唱・牢獄之蛇〝灼熱炎〟」
デレ「は?」
1つの詠唱が聞こえた瞬間、祇梨蓮斗達めがけ迫っていた厄災達が一瞬にして消し炭と化していた。それ見たデレストロ・アグロは間の抜けた声しか上げれずにいた。そこに立っていたのは.....
滝壺「お疲れ様、蓮斗君。君の戦いはとても見事だったよ。」
蓮斗「たき、つぼさ、ん....」
滝壺「凄い怪我だね...約束は果たした。ここからは俺がやる。っと、その前に。」
滝壺「二重詠唱・生命癒ス再生之焔」
その名を口にした瞬間、祇梨蓮斗とアルド・グレイヴの傷が再生していく。もはや死ぬこと以外何も出来なかったはずの体はたった数秒で完治した。
蓮斗「滝壺さん、アルド・グレイヴは...?」
滝壺「大丈夫、彼君と同じでめちゃくちゃ頑丈だから死なないよ。」
蓮斗「良かった.....」
安心したせいか体から力が抜ける。すると背後に誰かが着地した。そこには天羽綾人が立っていた。
蓮斗「天羽...」
天羽「よくやった。約束、ちゃんと守ったな。」
蓮斗「約束は、守るモンだからな...」
滝壺「天羽君、そこで2人を守っててくれ。」
天羽「分かりました。滝壺さんも、気をつけて。」
滝壺「あぁ、そうするよ。」
そう言い終えると滝壺間宮は厄災の方へ向き直る。そして1歩ずつ歩を進める。
デレ「貴様、何者だ...?」
滝壺「さぁ、何者だろうな。」
デレ「ふざけるな!厄災を数百体、しかも一撃で殺す存在なぞ聞いた事もない!」
滝壺「うるさい。俺はな、最初は見せるつもりは無かったんだ。でも、全員が命をかけて戦って、それで掴んだ勝利だ。俺は彼らに敬意を表したくなった。それに、俺はハッピーエンドが好きなんだ。その邪魔をするって言うんだ、どうなっても知らねぇぞ。」
デレ「はっ!何をごちゃごちゃと!たった数百体殺したからなんだと言うのだ!行けお前ら!奴らを、この国を滅ぼせ!」
デレストロ・アグロは力の限り叫ぶ。しかし、厄災達は動かない。なにか、大きな何かに怯えている様だった。
滝壺「それにしても礼をするよ。厄災を出してくれて。これで、俺も気兼ねなく暴れられる。」
デレ「は....?」
滝壺「霊基解放・【空狐長】完全解放」
その呟きと共に滝壺間宮は炎の柱に消える。
滝壺「お前が踏み入った彼の不可侵、俺が代わりに罰してやるよ。」
そこに立つのは世界に3体しか存在しない、人の身でありながら冠位に至ったイレギュラー。
滝壺「さぁ、宴を始めようか。」




