鏖殺公
イルア「氷系統最上位魔法・氷霊〝凍結呪〟」
アルド「おいおい、話する気は無いのか?」
イルアは開口一番で最上位魔法をアルドに向け放つ。しかし、アルドもそれを読んでいたのかそれに難なく対応してみせる。
イルア「ふざけた事を抜かすな。私の耳はお前達の悪辣な話を聞く為についてる訳じゃない。」
イルア「風系統最上位魔法・風滅〝斬塵〟」
アルド「えぇ、悲しいこと言うなよ。な?話そうぜ?」
イルア「!?」
イルアが2発目の最上位魔法を放ったと同時にアルドは既にイルアの眼前に立っていた。そして右腕でイルアの頬を掴む。
アルド「うん、やっぱり綺麗な顔立ちだ...ここで殺すのは惜しいなぁ...」
その言葉と共にイルアの腹部に強烈な痛みが走る。それと同時に後方へ吹き飛び壁へとめり込む。その衝撃はイルアがこれまで体験したどの痛みより強烈で、苦痛だった。
イルア「ゲホッゲホッ...!何が...?」
アルド「何も特別なことじゃない。ただ蹴っただけだ。まぁ、俺の蹴りは魂に届くけどな。」
イルア「魂.....?」
アルド「そう、俺の特殊異能〝霊魂破壊〟は触れた相手の魂に直接干渉し破壊できる。だから俺に殴られると肉体と魂、2つにダメージが発生する。」
イルア「つまり、お前の攻撃は避けなければ一度に2回攻撃を受けるって事ね...厄介だね。」
アルド「それだけじゃない、魂に傷が出来るという事は再生しなければ即死するという事。傷を再生させる際魔力は魂修復を優先する。つまり、攻撃を受ければ受けるほど戦いに使える魔力は減っていく。」
イルア「.......!」
アルド「まぁせいぜい、俺を楽しませろ。」
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シエル「...ここは...?」
リンド「良かった。意識が戻ったんですね!」
シエル「リンド...今は、どういう状況だ...?」
リンド「はい、現在大穴は6つ中3つを制圧、残り3つは現在も交戦中です。」
シエル「...もしかして、彼らが...?」
リンド「はい、あの3人が敵を倒してくれました。今あの3人は他の穴の救援と亡霊達を殲滅しています。」
シエル「そうか.....私も、戦わねば...!」
リンド「ダメです団長!貴女の体の傷は治っていますが魔力はほぼ空、とても戦える状態ではありません!ですので今は休んでください。」
シエル「わかった...」
避難所に運ばれたシエルは目を覚ましてすぐ副団長リンドとそんな事を言い合う。話が一区切りついたと思った時、再び空中に映像が映し出された。
リンド「今度はなんだ....?」
シエル「誰かが、戦ってる.....?」
映像は荒くハッキリとした状況が見えないでいると徐々に映像が正常になる。徐々に正常になる映像を見ながら国民は再び絶望で顔を塗り潰される事になった。なぜなら、映像にはズタボロにされ全身から血が流れるイルアの姿が映し出されたからだ。
シエル「女王陛下...!?」
リンド「騎士達、至急王宮へ向かうぞ!戦える者はすぐに準備しろ!」
騎士A「副団長!」
リンド「どうした!?」
騎士A「それが、亡霊達がこの避難所に向け大群を形成し迫っています!」
リンド「はぁ!?」
そう、これがアルド・グレイヴの作戦。大穴の半数が落ちた際、溢れ出た亡霊が避難所を襲撃し、多くの民間人を虐殺する。アルド・グレイヴは大穴を制圧される事を予見し、それを逆手にとった作戦を敷いていた。
リンド「数は!?」
騎士B「最低でも、12万....」
シエル「12万....?」
騎士A「今戦える騎士は多く見積って1万人...亡霊の強さは目測ではありますが騎士5人分...」
リンド「つまり相手は、、、、、」
シエル「騎士団全戦力の約6倍...!」
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アルド「粘るねぇ。ひと思いに死ねば楽になれるのに、なぜ抗う?勝てないと分かっているだろう?なぜ、そんな無駄な事をするんだ?教えてくれ。」
イルア「何故か、だと...?はっ、決まっているだろう?それは、私が女王だからだ!!」
アルド「女王だから?」
イルア「私はこの国のトップ、全ての国民は私の護るべきものであり、大切な民だ!それを殺されそうになっている時、自分だけ楽になろうとする者を、女王とは呼ばないんだ!」
アルド「なるほど、つまりは根性論って事か...呆れた...そんなくだらない考えだったのか。」
イルア「あぁ、なんとでも言え...!彼から居る限り、私が諦める事は無い!!」
アルド「そうか、ならお前が惨たらしく殺される所を全国民に見て貰え。」
アルド・グレイヴは自身の信念を口にしたイルアに対し侮蔑的な目を向けそう言い放つ。ただ冷酷に、ただ残虐に、アルド・グレイヴの魔法はイルアの命を削っていく。皮膚は裂け、骨は砕け、苦悶の色を浮かべるイルアに対しアルド・グレイヴは嘲笑する。
アルド「いくらご立派な考えを持とうが、それを実現出来る力がねぇと、ただの夢物語なんだよ!何も果たせず、何も得ずに、死ね!」
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リンド「もう、こんなに近く.....」
リンドの目線の先には亡霊達が群れを成しこちらへ向かってきている光景が広がっていた。
リンド「今この場にいる騎士達に通達する...全員で民間人を連れて避難しろ。あれは、俺が何とかする...!」
シエル「リンド...何を言ってるんだ!?」
リンド「俺が命をかければ数分は侵攻を止めれます...!その間にこの街の外へ逃げてください!そして、他国に救援要請をしてください!」
シエル「ダメだ!そんな事をしたらお前は...!」
リンド「この命は貴女に救って貰ったものだ。その恩を今、お返しします...!」
そう言い終えるとリンドは亡霊達の群れへ走り出す。その目には覚悟と、1つの後悔と決意が宿っていた。
リンド「団長、貴女には多くの恩があります。その殆どを返す事が出来ずすみません。そして、この命燃え尽きても、貴女を守ってみせます!」
シエル「リンド!!お前達っ、離せ!リンドが!」
騎士A「できません!」
騎士B「これがリンド副団長最後の命令、」
騎士C「団長を守れ、です!」
シエル「ダメだ!死んじゃダメだ!!」
シエルの叫びはリンドの耳にも届いていた。しかし、リンドは振り向かない、いや、振り向けなかった。溢れ出した涙を見せる訳にはいかなかったから。
リンド「行くぞ、亡霊共!」
リンド「鏖殺しろ、敵を嬲れ、血に染めろ、絶叫を聞け、命を奪え、共食いする敵、弱者を痛ぶれ、邪神に落ちろ」
リンド「奪命魔法・鬼神鏖殺魔」
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イルア「たとえ私が死んでも、皆が勝つ。私がいなくてもこの国の民は強くて、絶対に諦めない。」
アルド「そうかよ。じゃあ死ね。」
アルド「死霊系統最上位魔法・奈落之鬼」
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「万象之拒絶〝世界拒絶〟」
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イルア「.....え?」
アルド「何?俺の魔法が、消された?」
???「空間系統最上位魔法・空削之龍」
アルド「!?」
その詠唱と共に現れた龍の攻撃にアルド・グレイヴは超反応。ギリギリの所で躱すが、左足を切断される。
アルド「あ?」
切断された足を再生させイルアへ目を向けるとそこには先程まで居なかった二人の少年が立っていた。
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滝壺「能力焼却」
リンド「なっ魔法が...!?」
滝壺「ダメだろ、命を捨てるような真似しちゃ。」
リンド「あんたは...!」
滝壺「やっほ〜、顔を合わせるのは1ヶ月ぶりだね〜。元気してた〜?」
リンド「今俺に遊んでる時間は...」
滝壺「分かってる。だから俺がここに来た。」
リンド「...?」
滝壺「お前はあの団長さんの傍に居てやれ。」
パチンッ、と指が鳴る音が聞こえたと思えば、リンドはいつの間にかシエルの隣に立っていた。
シエル「え、え?リンド...?」
リンド「なっ、いつの間に...!」
状況を上手く呑み込めないシエル達は混乱している。その状況を見て滝壺間宮は笑った。
滝壺「ハハハ、やっぱり、ハッピーエンドが1番だよな。」
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蓮斗「イルアさん、大丈夫ですか?」
イルア「蓮斗、くん...?」
蓮斗「今、治しますね。」
少年はそう言いイルアに回復魔法を放つ。傷が癒え少し動けるようになった時アルド・グレイヴが声をあげる。
アルド「おい!誰だお前ら!」
天羽「うるせぇよ。俺達はただの旅人だよ。」
アルド「旅人?まぁ、そんな事はどうでもいい。お前ら、どうやってさっきの魔法を消した?」
蓮斗「簡単ですよ。私の能力で魔法を最大限弱体化させた上で、」
天羽「俺の魔法で虚空に落とした。」
アルド「なに?」
蓮斗「貴方、パンデモニウムの大幹部なのに、何も知らないんですか?」
アルド「なんの事だ?」
天羽「自分の同僚が、どこに手を出して、冠位が出張ってきた?」
アルド「まさか...!!」
蓮斗「その、まさかです。」
アルド「ははっ、そうか、じゃあお前らが噂の特異点か!」
天羽「俺達は相手は違うが、パンデモニウムの大幹部だ。リベンジマッチと行こう。」
蓮斗「えぇ。出し惜しみ話ですね。はぁ、滝壺さんとの約束、破る事になっちゃいますね...」
天羽「怒られる時は一緒に怒られてやるよ。」
蓮斗「感謝します。」
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滝壺「さてと、俺も少しだけ、本気を出そうか。」
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「闇系統根源魔法」
「空間系統改変根源魔法」
「霊基解放・擬似神霊」
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蓮斗「黒王戦鬼」
天羽「改元之神」
滝壺「焼却之狐」
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空中に流れる映像に3体の神に等しい存在が並び立つ。国の民は息をのみ、騎士団長は驚愕し、一国の女王は古の鬼を見る。




