和解
戦闘が終わり天羽君が私達の元へ降りてきた。その顔には少しばかり疲労の色が浮かんでいた。
香織「天羽君大丈夫?顔色が...」
天羽「大丈夫大丈夫。これ位なんて事ないよ。」
香織「そ、そう?なら良いんだけど...」
香織は天羽の心配をしている。すると天羽はこちらを向き声をかけてきた。
天羽「どうだ祇梨、俺の新技。」
蓮斗「凄かったですよ。いつの間にあんな魔法を作ってたんですか?」
天羽「前々からだよ。真祖達との特訓の時には発想としてはあったんだが、どうもイメージがまとまらなくてな。でも、欺瞞神との戦いや英雄との遊びの時に具体的なイメージが出来たから今日実践してみたんだよ。」
神崎「じゃあ、ぶっつけ本番だったの!?」
天羽「まぁそうなりますね。だから本来根源魔法に備わってる魔力消費軽減や思考の神速化も出来てなかったんですよ。」
香織「じゃぁつまり...」
蓮斗「結果的に脳に多大な負荷をかけた挙句、魔力の使用過多で多大な疲労が出たと。」
天羽「ピンポーン、大正解。流石に試作段階をすっ飛ばして使うもんじゃねぇな。もうちょい加減ミスってたら意識飛ぶところだったよ。」
そう笑いながら天羽は言う。私達はその姿を笑って見ていると天羽の体が一瞬揺れた。次の瞬間だった
天羽「.....え?」
天羽は目と鼻、口から出血を起こしていた。
蓮斗「ちょ、天羽君!?」
天羽「やば...体に力入んねぇ...」
そう言い天羽は後ろに倒れる。間一髪の所で私は天羽の体を抱き留める。
蓮斗「大丈夫ですか!?天羽君!」
天羽「ダメだ...意識、が....」
そう言い残し天羽は意識を無くす。体にかかった負荷は私たちが思ってた以上だったようだ。私はすぐさま天羽の治療に入る。
蓮斗「治癒系統最上位魔法第二法・聖女ノ癒」
蓮斗「ダメージがあるのはおそらく体の内側です!私が一時的に治療するので滝壺さんを呼んできてください!早くっ!」
神崎「わ、分かった!」
そう言い神崎先輩は滝壺さんのいる方へ走っていく。天羽の意識は以前戻らない。
蓮斗「香織さんは急いで拭くものを!血を拭き取ってください!」
香織「分かった!」
周りの騎士達も私達の異変に気がついたのかザワつきだす。
蓮斗「(くそ、やっぱり私の適正では効果が弱い!早く来てください、滝壺さん!)」
滝壺「天羽君は大丈夫かい?蓮斗君。」
蓮斗「滝壺さん!はい、おそらくダメージがあるのは脳。あと、魔力回路が損傷してる可能性があります。頼めますか!?」
滝壺「任せて、戦闘前より元気にしてみせるさ。」
そう言い私は滝壺さんと交代する。皆が固唾を飲む中滝壺さんが治療を開始する。
滝壺「火系統最上位魔法第三法・再生之焔」
そう詠唱すると滝壺さんの掌から赤と黄が混ざった色の炎が天羽の体へ落ちる。炎と体が接触した瞬間、その炎は一瞬で天羽の体を包む。
香織「綺麗...」
香織がそう呟く。滝壺さんの顔にはいつも通りの優しい笑顔があった。炎に包まれてからおよそ30秒、その炎はゆっくりとその勢いを無くし消えた。
蓮斗「.....」
神崎「.....」
香織「.....」
シエル「.....」
全員一言も発さず状況を見守る。すると、天羽の目が薄らと開かれる。
天羽「ぁ、あれ...俺なんで、寝てるんだ...?」
滝壺「よし、治療完了だ。」
天羽は無事に目を覚ます。それを見た私達はガッツポーズをとる。
蓮斗「よしっ!」
神崎「良かったーーーー....」
香織「無事でよかったーーー!!」
神崎先輩は緊張の糸が切れ安堵から息を吐く。香織は嬉しそうにそう言いながら膝をつく。
天羽「えーっと...心配かけてすんません....」
全員「ほんとだよ!」
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シエル「今回の件、深くお詫び申します。騒動を鎮圧してくれた事、我等一同より感謝申し上げます。つきまして、我が国の王より面会したいとの要請があります。如何しますか?」
滝壺「えぇ、良いですよ。」
シエル「では、こちらへ。」
そう言うとシエルが道案内を始める。王宮という事もあり建物内は想像以上に豪勢な作りだった。
シエル「この国には3つの主力勢力があり、騎士団、魔法師団、国下六王剣があります。そのうちの一つ、騎士団が暴走した事でそれについての詫びを入れたいと、国王陛下からの通達があったのです。」
蓮斗「なるほど、私達は図らずしも国の主力を1つ制圧していたんですね。」
シエル「私共は日頃訓練に明け暮れているので、実力に関しては自負する部分がありましたが、あそこまで一方的な戦況になったのは恥ずかしいものです。」
香織「あはは、私はあんまり強くないですよ。」
神崎「私もです...そこの3人が異常に強いだけですからね...」
シエル「それは一目見た時には分かってました。保有する魔力も、技量も、我ら騎士団総軍以上。その上、魔法も根源魔法に至っていると来ました。正直、全滅を覚悟しましたよ。」
蓮斗「良かったですね、天羽君。凄い褒められてますよ。」
天羽「お前からそう言われると煽られてるように感じるからやめろ。」
シエル「ははは、お二人ともその歳でこの国の上澄みの存在とその状態でほぼ同格、根源魔法を使えば、まず勝つでしょうね。」
蓮斗「この国には根源魔法の使い手は居ないんですか?これほどの大国、何人抱えていてもおかしくないと思いますが。」
シエル「この国に在籍する根源魔法の使い手は私含め8名です。その8名が束になっても先程のあの根源魔法を使った少年には敵わないと思います。」
天羽「まぁ、まだまだ試作段階ですけどね。一度使うと意識を失う魔法は魔法とは呼べませんから。」
シエル「向上心が強いのですね。一つ質問しても良いでしょうか?」
蓮斗「答えられる範囲でいいのなら大丈夫です。」
シエル「では僭越ながら、天羽さんと祇梨さんはどちらの方が強いのですか?」
私「そうですねぇ...才能の一点だけに絞れば、私より天羽君の方が上ですね。それに、私と天羽君では強さの種類が違うんですよ。」
シエル「種類、と言いますと?」
蓮斗「私と天羽君を比べて私が勝っているのは対少数戦です。対して天羽君が得意なのは対多数。それを鑑みるとどちらが強いとははっきり言えないんです。ま、私が勝ちますけど。奥の手ありますし。」
天羽「おん?宣戦布告か?」
香織「2人共どうどう。ほんとに、すーぐ喧嘩するんだから〜、少しは自重して!」
蓮斗「すみません。」
天羽「はーい...。」
シエル「お二人とも、仲がいいんですね。」
天羽「まぁ、悪くはないですね。」
蓮斗「その意見に同意です。」
シエル「ははは。」
そう雑談しながら歩いていると王との謁見室の前に到着した。
シエル「これよりお会いする方は非常に厳格なお方ですので、心して下さい。」
そうシエルが言い扉をノックする。すると扉がゆっくりと開き中の景色が目に映る。そこには白髪のドレスを身に纏った女性が玉座に座っていた。扉が開き切るとシエルはゆっくりと歩き出す。私達はそれに続き謁見の間へと足を踏み込んだ。
蓮斗「(何重にも張られた障壁に、魔法封じの結界、)」
天羽「(盗聴防止の結界、左右には腕の立つ戦士が複数人控えてるな.....)」
蓮斗&天羽「(警戒されてるなー!!)」
そんな事を内心で思いながら歩を進めているとシエルさんが足を止めその場に片膝を折り王へお辞儀をする。私達はそれを後ろで眺める。香織と神崎先輩はおろおろしている。
シエル「国王陛下、此度の騒動を鎮圧した者達を連れて参りました。」
???「うむ、ご苦労。」
その声はとても静かだが、力強いものだった。
???「初めましてだな、異国の旅人。私の名前はイルア・シルド・アルべシア。この国の、王である。」
そう名乗った彼女はゆっくりとこちらに目を向ける。その目線はまるで矢で射られるかの様な圧を含んでいた。
イルア「さて、此度の件、お主らには多くの迷惑をかけた。ここに、謝罪を。」
そう言い女王陛下は頭を下げる。
蓮斗「(一国の王が迷惑をかけた者に対しすぐに頭を下げる...なるほど、場馴れしてるな...。)」
イルア「して、此度はお主らの尽力により騎士団副団長のリンド・デルタの暴走が収まった訳だが、何か欲しい物はあるか?出来る限りのものは用意しよう。」
そう言うと案を出せと言わんばかりにこちらを見る。これも謝罪の一部なのだろうがいちいち圧が強くて苦笑する。すると滝壺さんが口を開く。
滝壺「物品で欲しいものは何もない。ただ1つ許して貰いたいものがある。」
イルア「ほぅ、言ってみせろ...」
滝壺「しばらくの間俺達はこの国に留まりたい。そして願わくばこの国の主力達と訓練をしたいと思っている。」
イルア「ほぅ、なぜ?」
滝壺「冠位の指令だからだ。」
イルア「!!」
滝壺さんのその発言に謁見の間に居る全ての人間が動揺を見せる。女王も例外ではない。
イルア「その指令の、内容を聞いてもいいか?」
滝壺「この子達は近い未来パンデモニウムと戦う事が予想されるからだ。」
イルア「パンデモニウムか...」
滝壺「特にこの2人は少し前、パンデモニウムの大幹部と接触し戦闘になっている。」
イルア「大幹部と戦っているのか...よく生きていたな。して他の娘二人は?」
滝壺「冠位直々に成長すると言われた子達だ。まだまだ、こっちの2人より弱いけど将来必ず有望な人材になる。だから、俺達はこの国に来た。」
イルア「なるほど、嘘偽りは無いか...良いだろう、お主らの滞在を認め騎士団、魔法師団、国下六王剣と共に訓練することを許可する。」
滝壺「感謝する。」
イルア「して、貴殿の名前を伺っても?」
滝壺「妖人街神職、滝壺間宮だ。」
イルア「...そうか。この国はいい国だ。存分に羽を伸ばし、訓練して行ってくれ。」
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イルア「シエルよ...」
シエル「はっ!」
イルア「あの者達に監視をつけよ。いいか?絶対に気付かれてはならん。あの引率の男、おそらく神を超える存在だ。」
シエル「そう言いますと?」
イルア「あやつ、あの状況で私の特殊異能を完全にすり抜けていた。そんな芸当ができるのはーーーぐらいだ。くれぐれもしくじるなよ?」
シエル「はっ、了解しました。」
そう言いシエルは謁見の間から退席する。一人残った女王は天井を見上げ呟く。
イルア「異邦人の訪れ、何かの予兆と考えるのは、早計すぎるだろうか...?」




