天羽の真価
リンド「お前が僕の相手か?」
天羽「あぁ、俺はお前みたいなクソガキは一番嫌いなんだよ。それになんだ、さっきのあの言い分。」
リンド「僕は何も間違えたこと言ってない。悪いのはお前達だ。」
そう天羽とリンドが会話をしている。私はと言うと滝壺さんや香織達に説得され少々不満を持ちながら椅子に腰掛けていた。
蓮斗「.........」
香織「蓮斗ー。機嫌直してー。本当に私達は気にしてないからさ!ね!」
神崎「そうだよ祇梨君!さっき怒って来れたの嬉しかったからさ!一緒に天羽君の事応援しよう?」
蓮斗「...分かりました。ここは天羽に託す事にします。それに、万が一天羽君が負ける事はないと思いますし。」
滝壺「やっぱり、蓮斗君は天羽君の事信頼してるんだね。」
蓮斗「信頼と言うよりかは、事実を言ってるだけです。天羽君、まだ私達に見せてない力があるっぽいですし。」
香織「え?」
神崎「それ、天羽君に聞いたの?」
蓮斗「いえ、ただの憶測です。ですが、何かしら、新しい力を身につけてるのは確かです。それをこの戦いで見れるかは、分かりませんがね。」
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戦闘訓練場に多くの騎士達が集まってきた。先程の戦闘は少なくとも騎士百騎が動員されていた。国民が気付かずとも騎士達には話が広まっていたらしい。おそらく、ただのじゃじゃ馬だ。
シエル「それでは、騎士団副団長リンドvs天羽綾人の戦いをここに開始する。両者準備は出来たか?」
リンド「いつでも行けます。」
天羽「行けます。」
シエル「よし、それでは.....開始!」
開始の合図が出た。その瞬間、リンドが天羽に向け上位魔法を連発する。
リンド「ははは!お前僕の事舐めてただろ!僕はこの国で唯一、完全無詠唱で魔法を行使できる!お前に、この攻撃を捌けるか!?」
完全無詠唱。世界を見渡しても使用できる者が少ない魔法技術の1つ。この世界の魔法は極端で下手に詠唱を切れば不発、完全詠唱する場合は発動までの時間が長くなる。そのリスクを補うため簡略詠唱が作られた。
滝壺「へぇ、あいつ完全無詠唱が使えるんだ。確かに完全無詠唱で上位魔法の乱射、そこら辺の有象無象なら蹴散らせるだろうね。ただ...」
天羽「風系統上位魔法・疾風斬裂」
リンド「!?」
蓮斗「上位魔法程度の威力じゃ、天羽君の防御は破れない。」
天羽君の一撃はリンドの顔を掠めた。頬からは血が滴り落ち、床に落ちる。リンドは間一髪の所で体をずらして魔法を躱していた。その目線の先には魔法で作られた煙が広がっていた。
天羽「完全無詠唱、確かに乱戦や奇襲には持ってこいの技術だ。でも、弱点もある。それは対面での戦闘で、相手の防御が相手の手数を上回っている時、乱射した所でなんの意味も無いって事だ。」
リンド「は、はぁ...?お前の防御力が僕の手数を上回ってると言いたいのか...!?」
天羽「なんだお前、頭だけじゃなくて理解力も無いのか?今の話を聞いてそれ以外に何がある?」
煙の中から現れたのは全くの無傷の天羽だった。その姿を目にしたリンドは焦りの表情を見せる。
リンド「うるさいっ!お前みたいなガキに僕が負ける訳がない!あまり調子に乗るな!」
リンドは魔法でダメージを与えられないと判断し腰に差してあった剣を引き抜き天羽めがけ斬り掛かる。しかし、それを食らってやるほど天羽は冷静では無かった。剣は天羽の腕で止められていた。
天羽「悪いなクソガキ...俺も友達傷付けられた挙句、目の前で殺してやるとまで言われて、内心冷静じゃねぇんだ。頼むから死ぬなよ....!?」
リンド「てめっ.......!?」
天羽「お゛ら゛ぁぁぁぁぁ!!」
天羽の左拳がリンドの腹に突き刺さる。その威力は凄まじくリンドは後方へ吹き飛ぶ。天羽はそれを追い高く飛び上がり、魔法を放つ。
天羽「二重詠唱・天雷転痺」
リンド「あがぁぁっぁぁぁ!?」
雷の直撃を受けリンドは絶叫する。しかし、天羽の攻撃は激しさを増す。
天羽「空間系統上位魔法・転移〝動体〟」
距離を取ろうとするリンドを天羽の前に瞬間転移させ物理で殴る。転移させ物理で殴る。それの繰り返し。殴打する音、骨が折れる鈍い音が訓練場に響く。しかし天羽の怒りは収まらない。
天羽「おらどうした!?さっきまでの威勢はどこ行った!?俺を殺すんじゃなかったのか!?」
天羽の目には怒りが宿りリンドを見る。最早そこにいつもの天羽は居なかった。
リンド「う、うるせぇ!調子に乗るなぁぁあ!」
リンドが半発狂状態で天羽に斬り掛かる。しかしやはりと言うべきか剣が当たることはなく空を斬り、顔面に強烈な蹴りを食らう。
リンド「あ、あぁ...」
蓮斗「終わりですね。騎士団長!」
シエル「え、えぇ!」
シエル「(あの少年の強さ、やっぱり異常だ...リンドは私より弱いだけで決して弱い訳でも、慢心して戦いに挑んだ訳でもなかった。それを、たった16歳の少年が完膚なきまでに叩き潰した...!)」
シエル「そ、そこまd....」
リンド「まだだァァ!!」
シエル&蓮斗&滝壺「!!」
リンド「こんなガキに、いい様にやられたまま、終われるかぁ!!殺してやる!殺してやるぞクソガキ!!」
天羽「あ?今のお前がどうやって俺を殺すんだ?ここまで力の差を見せて、まだ俺に勝てるつもりでいるのか?」
リンド「うるっせぇ!俺はこの国の、騎士団の副団長だぁ!舐められたまま終われるかぁ!」
天羽「分かった、じゃぁかかってこい。」
リンド「鏖殺しろ、敵を嬲れ、血に染めろ!絶叫を聞け、命を奪え!」
シエル「あの詠唱は...!よせリンド!それを使う事がどういう意味だと思ってる!」
天羽「(完全無詠唱を扱える術者が詠唱...?通常の魔法では無いな。それにこの詠唱、まともな魔法ではないな。)」
リンド「共食いする敵、弱者を痛ぶれ、邪神に落ちろ!」
リンド「奪命魔法・鬼神鏖殺魔!」
シエル「リンドー!!」
滝壺「番外属性?それに奪命?明らかにまともな魔法じゃないな。蓮斗君はどう思う?」
蓮斗「あれは明らかに天羽君だけじゃなくて私たちに対しても殺意を向けてますね。私たちの何が奴をあそこまで突き動かしてるんでしょうね。」
リンド「クソガキィィィ!!」
リンドが再び剣を振り上げ天羽に突進する。天羽はそれを腕で受けようとした時、審判をしていたシエル団長が声を振り上げる!
シエル「生身で攻撃を受けるな!」
天羽「!!」
その言葉を聞き天羽は防御から回避に切り替える。剣と地面が接触した途端轟音を立て地面が割れる。それを見た天羽はリンドに声をかける。
天羽「お前条件を忘れたのか?相手を死に追いやる攻撃は即失格ってルールだろ。その魔法、明らかに俺を殺せる魔法だろ。」
リンド「クソガキィ、クソガキィィィ!!」
リンドは唾液を滴らせ天羽へ襲い掛かる。その様子を見て私達はある違和感に襲われる。
蓮斗「アレ、正気失ってません?」
滝壺「見たところ失っているように見えるな。それに、知能が下がっているのか?同じ単語を繰り返してるね。」
シエル「騎士団全騎士に通達!副団長リンド・デルタが奪命魔法〝鬼神鏖殺公〟を発動した!全員即戦闘に入る準備に入れ!」
香織「声大きい!」
神崎「耳鳴りがするぅ...」
シエルのただならぬ気迫を目にし私と滝壺さんは一瞬で今が異常事態なのだと察する。動こうとしたその時天羽が私達に静止を呼びかけた。
天羽「あの程度ならなんの問題もないんで、そこで見ててください。」
シエル「何を馬鹿な事を!その魔法は触れた箇所の命を吸い上げ奪う魔法だ!剣でも生身でも、リンドの体や持ち物に触れたところから壊死して死ぬぞ!だから.....」
天羽「大丈夫です。ご心配感謝します。でも、そこまでのプレッシャーは感じないんで問題ありません。」
そう言うと天羽はリンドと目を合わせる。その目は狂気に犯され正気を失っていた。
天羽「自身の魔法で、我を忘れてどうする。何かに取り憑かれてるならまだしも、それはただ制御できないお前の責任だ。」
リンド「クソガキ、クソガキ....」
天羽「まぁ、その状態なら少し本気出しても問題ないだろ。丁度試したい魔法もあったしな。」
そう言い天羽は深く息を吐く。そして...
天羽「特殊異能限定解除〝改変〟」
天羽「空間系統根源魔法〝次元覇者〟」
そう自身の魔法と特殊異能を呟く。
天羽「特殊異能〝改変〟を用い空間系統根源魔法〝次元覇者〟の能力を改変、変容。」
天羽「空間系統根源魔法〝改元之神〟」
天羽がそう呟いた瞬間、私達が座る空間に異変が起こる。
蓮斗「ノイズ...?」
滝壺「なるほど、冠位の権能を参考にしたか...面白いね、彼。」
ノイズが収まると同時にその空間を光が覆う。そして目を開けばその空間が一変していた。
香織「ここ、何処...?」
神崎「私達さっきまで訓練場に居たはずじゃ...?」
香織と神崎先輩は状況をうまく呑み込めない様子だった。かと言う私も予想以上の能力に驚いていた。
滝壺「さて、ここからが本番だ。見せて貰おうか、天羽君の戦いを。」




