出立と問題
滝壺「全員揃ったね。」
蓮斗「はい。」
私達は約束の集合時間には全員揃っていた。全員がそれぞれの荷物を持ち雑談をしていると滝壺さんが確認がてらそう声をかけてきた。
滝壺「うん、みんな時間を守れて偉いね。」
蓮斗「そうですか?普通だと思いますけど...」
滝壺「いやー、俺の知り合いに集合に確実に遅刻する奴がいるからさ、なんか変な認識になってた。」
天羽「大丈夫ですかその人?」
滝壺「まぁいい奴ではあるから俺は気にしてない。じゃあ雑談もそろそろ切り上げて出発しようか。」
蓮斗「出発と言うと飛行機で行くんですか?」
滝壺「いや、今回俺たちをアルベシアに連れていってくれるのはコイツだ。」
そう言い滝壺さんは指を鳴らした。すると滝壺さんの後方で枯葉が舞い上がり渦を形成した。それが10秒ほど続くと渦が消え大きな狐が姿を表した。
香織「お、おっきい...」
神崎「なに、これ...ただの生き物じゃない...?」
滝壺「正解。こいつは仙狐の白。一応九尾の狐で玉藻前と同等以上の存在だよ。」
蓮斗「え、玉藻前って確か第一級神霊を超える強さ持ってませんでしたっけ?」
滝壺「そうだよ〜。こいつ自身、妖人街の六神より強いからね。まぁ、物分りのいい良い子だから遠慮なく背に乗ってね。」
天羽「物分りのいい良い子って...流石に緊張します。」
滝壺「あっはっは。大丈夫、コイツは一応俺の配下だから今現在俺の庇護対象である君達に危害は加えないよ。そうだろ?白。」
白「主の庇護対象なれば、この白、命を賭してお守りいたしましょう。」
滝壺「と、言う事らしい。だから緊張せずに乗って乗って。」
神崎「そういう事でしたら...」
香織「し、失礼します。」
白「うむ。」
そう言い神崎先輩と香織が仙狐の背中に飛び乗る。それに続き私と天羽も背中に乗る。
白「小僧、お主もしや...」
蓮斗「え、私ですか?」
白「そうだ。顔をよく見せよ...」
蓮斗「は、はい...?」
そう言い仙狐は私の顔をじっと見つめる。正直眼力だけでも相当な圧だ。見られていると思うだけでじわりと冷や汗が滲む。1分ほど顔を見たあと仙狐は何も言わずに目を逸らした。
蓮斗「(なんだったんだ...?)」
そうこうしている内に仙狐はふわりと浮かびその状態から一気に加速した。
蓮斗「ちょっ!?」
天羽「うおっ!?」
神崎「わぁ!?」
香織「きゃっ!?」
全員が驚きの声をあげる。無理もない、今この仙狐は明らかに音速を超えるスピードで空を飛んでいる。驚くなと言うほうが無理な話だ。しかしふと考えるとあることに気がつく。
蓮斗「風が来ませんね...?」
天羽「あ、そう言えば...!」
滝壺「流石にこいつのスピードで風を受けると君たち二人はまだしも、後ろの2人は無事じゃ済まないからね。一応、白も配慮してるんだよ。」
香織「そうなんですか?ありがと〜白ちゃん!」
白「白ちゃん...!?」
神崎「良いね香織ちゃん!これからよろしくね、白ちゃん!」
白「生まれて数千年、我をそんな風に呼ぶものは、生まれてこの方初めてだ...」
天羽「(神霊が戸惑ってるな...)」
蓮斗「(戸惑ってますね、明らかに...)」
滝壺「あっはっは、良かったな白。いい呼び方じゃないか!」
白「主よ、あまりからかわないで貰いたい。しかし、娘らよ。」
香織&神崎「はい?」
白「我にも体裁というものがある、その呼び方はここに居る者達の前にしてくれぬか?」
香織「この呼び方続けていいの!?分かった!」
神崎「ありがと〜白ちゃん!」
白「う、うむ...」
蓮斗「照れてますね。」
滝壺「まぁ、あいつも神霊以上の存在だからね、普通は畏怖の対象なんだ。そんな自分に気軽に接してくれる人間が珍しいんだろうね。」
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滝壺「みんな、アルベシアに着くまであと3時間かかるから、俺の方から軽く問題を出そうと思うんだが、どうだろう?」
蓮斗「良いんじゃないですかね?皆さんはどう思います?」
天羽「まぁ着くまでの時間暇だしいいと思うぞ?」
香織「面白そうだから賛成!」
神崎「私も賛成〜!」
滝壺「よし、じゃあ1つ目の問題ね?第1問、殺神には様々な種類が存在するが、認識災害の殺神はなんて名前でしょうか。」
蓮斗「認識災害ですか...なんでしょう。」
天羽「認識災害ってあれだろ?認識する前は何もないけど認識した瞬間、能力が発動して結果が確定するアレ。」
滝壺「そう、その認識災害系の能力を使う殺神は分かるかな?」
香織「だめだー、全然分からない...」
神崎「うーん、あっ、堕落虚無!」
滝壺「正解!流石は3年生。よく知ってるね。」
神崎「やったー正解だー!」
天羽「堕落虚無?」
滝壺「堕落虚無っていうのは認識前はただの一存在に過ぎないけど、一度その存在を認識すると一気に能力が展開、確定される一種の認識災害を引き起こすんだ。そしてその能力は人を堕落させ虚無に落とす能力。堕落した者から順に虚無と呼ばれる奴の異界に落とされる。」
蓮斗「やばぁ...」
滝壺「まぁ一応対策は出来るけど、1度でも認識されると危険度が一気に増す超危険存在だね。」
滝壺「第2問、現在厄災には重力を操る種が存在します。それはなんて名前でどんな姿でしょうか!」
蓮斗「名前はデルハザード、姿は体長7m、体色は白、頭部から背中にかけて赤黒い血のような模様がある存在。」
滝壺「正解。」
天羽「はやいはやい。」
蓮斗「厄災についてはよく本で目にするので、すぐに分かりましたね。」
滝壺「勉強熱心だねぇ...じゃぁ3問目行こうか。」
滝壺「冠位神威であり、冠位指定執行官を兼任する存在、滅亡神はどの概念から出現した冠位でしょう。」
天羽「滅亡だから...破壊ですかね?」
滝壺「天羽君正解。滅亡神はその名前から滅亡の概念と思われがちだけど、その本質は破壊。世界に最初に生み出された概念は生と死、破壊と再生の4つ。彼はその破壊を司っていてその戦闘力だけでいえば、冠位の序列一位だね。」
香織「え、冠位の最強って殺戮神じゃないんですか?」
滝壺「うん、殺戮神は生物が相手なら無類の強さを発揮するけど、相手が冠位となると話が変わるんだ。実際、滅亡神相手だと殺戮神と覇王のタッグでも勝ち切れないって話だし。」
蓮斗「やっぱり原初三兄弟って底が全く見えなくて恐ろしいですね。」
滝壺「まぁあの3人はずば抜けて最強だからね。」
滝壺「第4問、第一級神霊が本気で隠密に徹した場合、冠位はどれ位探すのに手間取るでしょうか。」
神崎「はい、一瞬で見つかると思います!」
滝壺「ぶっぶー、不正解。」
蓮斗「うーん、3時間とかですかね?」
滝壺「蓮斗君も不正解。」
天羽「丸2日!」
滝壺「不正解!」
香織「うーん、まさかの見つけられないとか...?」
天羽「いやぁ、冠位だぞ?見つけられないは流石n」
滝壺「美月和さん、正解!」
天羽「あるぇぇぇ!?」
蓮斗「冠位でも見つけられないんですか?」
滝壺「あぁ、第一級ともなればその強さは真祖と同等かそれより上の可能性もある。その強さを全て隠密に向けられればいくら冠位と言えど、縛っている力で見つけるのはほぼ不可能だね。」
神崎「冠位が凄すぎて忘れてましたけど、神様も普通は人間じゃどう足掻いても勝てない存在だもんね...」
滝壺「まぁ一部の連中は概念を辿るとかいう意味不明な方法で見つける奴らも居るけどな...」
蓮斗「何それ怖い。」
滝壺「第5問、冠位指定執行官には現在、滅亡鬼神、空狐長、龍神王、廻拓者が該当しますが、この中で最も対処が難しい存在は誰でしょう。」
蓮斗「対処が難しいって、私達にとって冠位って対処できる存在じゃないんですよね...」
天羽「まぁなぁ...俺らこの前ボコボコにされたばっかだもんな...」
滝壺「あはは...まぁ、考えてみてくれ...」
神崎「順当に行くなら滅亡鬼神ですけど、一応冠位神威ですし、そもそも能力使わなさそうですよね。それを考えると...廻拓者でしょうか?」
滝壺「正解!流石に詳しいね。」
神崎「やった!2問目正解〜。」
蓮斗「理由を聞いても?」
滝壺「廻拓者、別名〝並界答求犠命廻鬼〟の能力は事象の収束と反転、改変っていう言うなれば何でもありな能力に由来するんだよ。」
蓮斗「事象の収束と反転、改変?」
天羽「祇梨の特殊異能に似た能力なのか?」
滝壺「いや、全くの別物だね。彼の能力は簡単に言えば因果律、世界、果てには物語にすら干渉するんだ。」
香織「え?まだ因果律と世界は分かりますけど...」
神崎「物語?」
滝壺「物語、現実改変と言っても良い。彼の能力は世界に起きた事象を自身に収束させそれを書き換え他者に付与するんだ。これが事象の収束と改変の部分。反転はまぁ言うなれば相手の起こす事象を反転させる。」
蓮斗「つまり、怪我を負うを反転させたら傷が治る、治療したを反転させたら怪我を負う、っていう認識で合ってますか?」
滝壺「反転の認識はそれでいい。そしてさっき言った物語、現実改変って言うのは言ってしまえば世界の物語のジャンルを書き換えたり、シナリオを自分の意のままに出来る。」
香織「ジャンルを書き換える?よく分かんない...」
天羽「とどのつまり、テレビでやってる恋愛アニメっていうジャンルを書き換えてパニックホラーにできるって事だろ。」
滝壺「そう、今天羽君が言った事を奴は多次元規模でやってくるんだ。」
蓮斗「た、多次元、規模?」
滝壺「奴の強さだとこの世界では狭すぎるんだよ。だからその気になれば宇宙、いや、次元すら消し飛ばせる。冠位ってのはそう言う連中だ。」
その場に居た4人は絶句、香織や神崎先輩は顔を青くしており、私と天羽は戦慄し言葉が出ない。私自身、学園に入学してから強くなったと自負していたが、この世界の上澄み達は私達とは比べる事すら出来ない程、強大なのだと思い知らされた。
滝壺「冠位神威もそうだが冠位指定執行官、冠位指定之獣なんかも、次元の壁やらその世界のジャンルなんかも無視してどこにでも出現できる。それが下の次元でもだ。」
蓮斗「下の次元...?」
滝壺「次元にもtierがあるんだ。tier3、tier2、tier1、tier0、そして、tieError。これが次元の階層だ。今俺達がいる次元がtier0、超越次元って呼ばれてる。」
天羽「超越次元、なんか大それた名前ですね。」
滝壺「確かにね。でも超越次元はtier3〜tier1よりも強い存在が生まれやすいんだ。その理由は1つ、ほぼこの次元に冠位が存在してるから。」
香織「それって何か関係があるんですか?」
滝壺「みんな勘違いしてる事なんだけど、冠位が影響を及ぼしてるのは別にこの世界だけじゃないんだ。tier0〜tier3、この全てに冠位は影響を与えてるんだよ。」
4人「???」
滝壺「どの次元の生命も生きてるし、怪我もする。物事を考え、争い、いつか死ぬ。そのありきたりでどんな存在にも平等にある概念、それこそが冠位の正体。冠位がいなければ対応する概念も全次元から消失し、その概念が無くなれば本来あった筈の物も消え、人間はそれを認識できなくなる。」
蓮斗「そんな存在が常に近くにいれば、少なからず影響は受ける...だから、この次元の存在は...」
滝壺「そういう事。」
天羽「じゃぁ、冠位がもし殺されたなんて事になれば...すげぇまずいんじゃ...」
滝壺「それに関しては問題ないよ。」
4人「???」
滝壺「さっきも言ったでしょ?tierErrorって。」
蓮斗「そう言えば、そんな事言ってましたね。そこはなんて言う次元なんですか?」
滝壺「これに関しては、俺の口からは言えないな。ただ1つ、その次元の名前は〝ゼニス〟という事だけ教えてあげる。」
蓮斗「ゼニス...?」
滝壺「それに白、お前、権能使ったろ?」
白「あまり長い時間背中に乗っているのも負担が大きい。早めに着いた方が主達も都合が良いでしょう?」
滝壺「お前はホントに、まぁ良いか。みんな、目的地に着いたよ。ここが俺たちの目的地、神聖国家アルベシア。」
話し込んでいる内にいつの間にか神聖国家アルベシアに到着していた。これからどんな経験ができるのか不安半分好奇心半分の自分がいた。しかし、
天羽「なんか、飛んできてね?」
天羽のその不穏な一言はすぐに私達に災難をもたらす事をまだ私達は知らなかった。




