異常
蓮斗「二重詠唱・鬼哭雷煉!!」
天羽「次元系統最上位魔法・空斬之使徒!!」
私と天羽の攻撃が大地を揺らす。しかし、今目の前にいる存在はそんな攻撃、無意味と言わんばかりに無効化する。
蓮斗「相手の魔法の種は分かりましたか!?天羽君!!」
天羽「知らんっ!今探り探りでやってる!お前は少し下がって傷を癒せ!」
蓮斗「了解!」
長野「bhojojeohap!!」
天羽「お前はうるせぇから一旦吹っ飛んどけ!!」
そう言い天羽は長野に強烈な蹴りを叩き込み盤外へと追いやった。しかし、今私達の脅威になるのは長野ではなく、今目の前に立つフェレドール・アテナだけだった。
フェレ「凄いね君たち!魔力は尽きてる筈だけど、この空間自体を自分の魔力リソースにするなんて、お姉さん感心するなぁ!!!」
フェレドールはそう言い笑う。その声には、目には今まで触れて来なかった新しい玩具を手にした幼子の様な狂気的な色が浮かぶ。
天羽「(祇梨、ちょっと良いか?)」
蓮斗「(大丈夫です。何か分かったんですか?)」
天羽「(あぁ。アイツの能力の発生は恐らく、言葉だ。)」
蓮斗「(言葉...?)」
天羽「(あぁ、アイツが何か口走る度に俺達の魔法は湾曲したり、消失する。多分、奴の声を聞いたら発動する言霊的な能力だ。)」
蓮斗「(つまり、言葉を聞かなければ能力は発動しない...?いや...)」
私はそう短絡的な考えに至ろうとする自身の思考を制止し熟考する。
蓮斗「(相手は言霊使い...ましてや欺瞞神なんて呼び名が付くほど暴れ回ってるパンデモニウムの大幹部...そんな初歩的な弱点を放置している訳が無い...じゃぁ何だ?音...空気の振動か!)」
私がそう考えをまとめていると突如大地が隆起し岩盤の下から何かが這い出してくる。
天羽「!?」
蓮斗「は?」
地の底から這い出してきたのは、紛れもなく、殺神だった。
天羽「なんで、こんな所に殺神が出てくるんだよ!しかも、複数体!!」
突然の出来事、既に疲弊していた私達はこの重大なイレギュラーに対し、何の策も打つことは出来なかった。
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どれぐらい時間が経ったのだろうか...1秒?1分?はたまた10数分?私は意識を失っていた。突如眼前に湧いた破壊の権化。私の体は既に限界を超えていた。少し体をよじるだけで全身が砕けるような痛み、呼吸一つするだけで吹き出す血。もはや、何故生きているのか自分でもよく分からない。
蓮斗「あ、もう、君.....」
視線を横へ移す。そこにはもはや意識を手放し地面に転がる天羽の姿があった。まだ辛うじて息はある。まだ、助かる...
フェレ「ふーん、ちょっとこの子達強くし過ぎちゃったかなぁ...次の改造はもうちょっと控えめにしよう!それはそれとして〜」
そうフェレドールは鼻歌混じりに天羽へ近寄る。足元には先程まで動いていた殺神の残骸が散らばっている。
フェレ「新しい被検体が手に入って良かった〜!最初は殺すつもりだったけど、ここまで頑丈なら私の改造にも耐えられる!!」
そう言いフェレドールは天羽へと手を伸ばす。捕まれば最期、二度と元には戻れない。
天羽「........」
天羽は依然として意識が無い。もはや、私にはどうする事も出来ない。
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「殺す」
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「許さない」
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「全てを滅ぼす」
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「守る」
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「また会おう」
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蓮斗「天羽君.....」
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「闇系統根源魔法・黒王戦鬼」
フェレ「おや...?」
突如としてフェレドールの目の前から天羽が消える。突然起きたその出来事にフェレドールは間の抜けた声をあげる。しかし、すぐにフェレドールは天羽を見つけた。
フェレ「そうだったね、君も、怪物だったね。」
フェレドールの前に立っていたのは私だった。何故動けたのか、どうやって天羽を助けたのか、私には理解ができなかった。一歩も動けない筈だった、なのに、体が自然と動いていた。
蓮斗「渡しません、よ。天羽君、は、友達なんです...他を、当たってく、ださい.....」
フェレ「ふぅん.....」
フェレ「(あの傷で動いたのか?あれはそもそも生命維持で精一杯だったはず...中の鬼が動いた...?まぁ、理由はどうであれ、黒王戦鬼が本格的に目覚める前に殺しておくか...)」
フェレ「最後の君の抵抗に敬意を称して、私の手で殺してあげる。」
フェレ「逆夢〝泡沫〟」
フェレドールは魔法を発動した。もう、私には何も出来ない。潔く、負けを認めy.....
???「認めなくていい。」
蓮斗「え........」
そんな声が聞こえた。夢だと私は思ったが、次の瞬間フェレドールの魔法が消し飛んだ。
蓮斗「何、が......!?」
いきなりの出来事。脳の処理が追い付かず、現状を把握できない。混乱と疲弊で目が回る。すると視界の端に何かが映る。
蓮斗「........」
声が出ない、身動きも、呼吸さえも。何か、とてつもなく大きく、とてつもなく深い何かが私の隣に立っている。
???「その友達、離すなよ。」
フェレ「.......!!!」
フェレドールへ目を向けると先程までの余裕は消え、その目には怯えと焦りの色で塗り潰されていた。
蓮斗「あなた、は......」
そう質問しようとしたと同時に私は意識が薄れる。そして、完全に意識が無くなる寸前こう聞こえた。「殺戮神」
と.....




