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嘘吐き

数刻前、私達二人は眼前に出現したイレギュラーと対峙していた。1人は改造された生徒、方や近頃この国で悪名を轟かせているパンデモニウムの大幹部。なぜ突如私達を襲ったのかは分からない。しかし、私達はまだ知らなかった。なぜ相手が欺瞞神などと言う名で呼ばれているのかを。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

蓮斗「...........」

天羽「...........」

その光景はさながら、虐殺ショーとでも言うべき代物だった。確かに私達は襲いかかる2体の怪物に抵抗を見せた。しかし、何故か私たちの攻撃は全て、空を切り、自分たちに帰ってくるのだ。かれこれ10分はこうしている。なぜ、覇王はこの世界を解除しないのか、そんな疑問が頭を過ぎる。

フェレ「あら、もう終わり?先程までの戦いぶりは一体、何だったのかしら?」

そう言いながらフェレドール・アテナと名乗る大幹部は声高らかに笑う。

天羽「(なんだ、コイツ、強すぎる...!!理屈が分かんないが、俺たちの魔法が、技が、全て空かされる...!!)」

蓮斗「(考えろ、一体、どういう仕掛けだ...?能力であるなら、解析出来る筈だ...!!)」

そう心の中で口走っても私たちに出来るのはその場で多少の身を捩る程度だった。

フェレ「貴方達、特異点と呼ばれているだけあって、なかなか死なないわね。普通なら二撃目で死んでる筈なんだけどなぁ...」

奴はそう言いながら頭を傾ける。そこにはただ純粋な疑問しか映っていなかった。

蓮斗「(コイツ、ハナから私たちと戦うつもりなんて無かったのか...!!私達はただそこにいる実験動物。だから二撃目以降は手を抜いていた...!!)」

天羽「(ふざけろ...!!こんな訳の分からない奴に俺たちは負けるのか...!?)」

そうふつふつと私達の中に怒りと殺気が溜まっていく。そして、

フェレ「君たちだけじゃもうつまらない。外に居るあの女の子にも此処に来て貰おうかしら...」

そう言いフェレドールは笑みを零す。プツリ。そんな音が頭の中で鳴ったのが、聞こえた。

蓮斗「闇系統最上位魔法・黒消滅閃」

フェレ「!?」

突然自身に向けられ放たれる超高密度の魔力砲。それをフェレドールは躱しながらそちらへ注意を向ける。

フェレ「(どういう事?今あの子には、魔法を一発、放つだけの魔力は残されていない...なのに、どうやって...?)」

天羽「次元系統最上位魔法・次元龍〝天災〟」

フェレドール・アテナは突如出現した巨大な龍に気圧される。理由はどうであれ、先程まで死に体だった少年二人が息を吹き返し、最上位の魔法を発動させたからだ。

蓮斗「誰が、誰を...!?」

天羽「どこに連れてくるって!?」

その言葉から伝わるのはただ純然たる殺意。今、奴の前に立つのは、怒りを解放し、後先考える余裕を捨て去った、自損の怪物。その姿を目にしたフェレドールは、恍惚とした赤面を2人へ向けた。

フェレ「良いじゃない、そう言うの、私とても大好きよ!」

ーーーーーーーーーーーーーーーーーー

フェレドール襲来より数分後、学園は壮絶としていた。突如襲来した、大災害と言って差し支えない暴君。その圧は別の世界であっても衰えることは無かった。

創造神「龍鬼、どうする?私が介入しようか?」

龍鬼「いや、下手を打てば中にいる二人が死ぬ。ここはあの二人に任せるべきか、俺自身、決めあぐねている。」

創造神「.....」

覇王の返答に、創造神は何も言わない。それもそうだろう。元来冠位とは人とは一線を画す上位存在。もしそれが、なんの制約も無しに力を振るえば、待つのは終末。故に、冠位である二柱はその場から動かない、いや、動けなかった。

香織「覇王様!!」

龍鬼「君は、美月和香織。どうしたんだ?」

香織「さっきから見てましたけど、あの人の魔法おかしくありませんか?なんか、言葉にするのは難しいんですけど、あの人が言った通りに事が進んでいるような....」

創造神「それは彼女の能力による物だ。彼女、フェレドール・アテナの能力は欺瞞。口にした嘘を現実へと昇華する、タチの悪いものだ。」

香織「嘘を現実に...!?」

創造神「彼女は欺瞞、嘘で塗り固められた存在だ。まさしく矛盾の中で生きている、そんな存在なんだ。だから、我らが下手に行動を起こせば、何が起こるか、想像が出来ないんだ。」

香織「そんな、じゃあ蓮斗に天羽君はどうなるんですか!?」

香織はそう言いながら覇王に駆け寄り服の裾を掴む。覇王は依然として何かを考えている。そして数秒経ってから重い口を開き、こう呟いた。

龍鬼「あまり、やり過ぎるなよ、愚弟...」

その言葉の意味を香織は理解していなかった。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

殺戮神「..........」

ただ暗く、深淵を思わせるその場所で、死の化身が目を覚ます。その目には、欺瞞の神だけが映し出されていた。

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